心ない住人
大小様々な大きさの惑星を横目に、宇宙探査隊を乗せたロケットは、暗闇の空間を進んでいた。
地球を出発して早半年、代わり映えしない宇宙の光景に隊員達は辟易していた。そんな中、隊員達の期待に応えるかの如く、船内に朗報がもたらされた。
「前方に知的生物が存在する惑星を発見しました!!」
隊員達は歓喜し、報告した隊員に隊長が尋ねた。
「でかした! それで、惑星の文化レベルはどれ程のものなのだ?」
隊員は惑星探査レーダーが表示する計器類等を見ながら答えた。
「はい、惑星環境は地球とほぼ同じ、いや、地球よりも良いと言えましょう。生物の進化レベルは地球と同等のようです」
報告を聞いた隊長は即座に命令を下した。
「よし、前方の惑星へ着陸する。隊員は直ちに探査準備に取り掛かるのだ」
隊員達は命令に従い探索準備を整えると、ロケットは惑星を何度か周回して、危険のない適当な場所に着陸した。
ロケットが着陸して間もなく、何事と現れた、地球人と瓜二つの惑星の住人達はロケットを囲み、船体を手で叩いたり、中にはロケットによじ登り始めた者もいた。
その様子に、一人の隊員が驚きながら言った。
「こいつら、警戒心といったものがないのでしょうか!?」
「ひょっとすると、羞恥心もないのかもしれない」
と、隊長は探査ロケットの窓から、小高い丘で性行為に興じている男女の惑星住人を指差した。見れば老若男女、どの住人も服らしき物を身につけていなかった。
隊長は、再び隊員達に命じた。
「これから住人とコンタクトをとる。念のため光線銃を忘れるな。数名はロケットに残れ」
探査ロケットのハッチが開き、隊長を先頭に隊員達は外に出ると、さっそく宇宙人用の翻訳機を使って住人の一人に声を掛けた。
「どうもはじめまして。我々は地球という星からやって来ました。仲良くしましょう」
声を掛けられた全裸姿の老人は、特に驚きもせず答えた。
「それはそれは、ようこそいらっしゃいました。せっかくです。この星の王に是非ともお会いください」
どうやら敵意のない住人に促されるまま、隊員達は用意された、星の住人がエアバーと呼ぶ、タイヤのない宙を走る車のような乗り物に乗り、王の待つ城へと向かった。
車中、隊員が安堵した様子で隊長に言った。
「一時はどうなる事かと思いましたが、住人達も好意的で良かったですね」
「…ああ、そうだな」
路面から数十センチ程浮いた状態でエアバーは城に向かい進んでいる。しばらくして、隊員の一人が異変に気づいた。
「隊長、この乗り物、エアバーでしたっけ? なんだか速度が出過ぎじゃありませんかね?」
「お前もそう思うか。実は私も感じていたのだ」
エアバーは徐々に加速していく。辺りを見ると、あちらこちらに大破した残骸のエアバーが見受けられた。その光景に、何かに気づいた隊長は重い口調で言った。
「…もっと早くに気づくべきだった。警戒心がないという事は…」
そこまでを話すと、隊員達を乗せたエアバーは速度を出し過ぎ、緩やかなカーブを曲がりきる事が出来ず、建物に衝突して爆発炎上した。
住人には恐怖心もないのだった。