第2話
アンデット化して2ヶ月。住処として整備した洞窟、と言うよりは洞穴であろうか、そこでいつものようにシャータに基礎知識や計算、初級魔法について教えてもらっていた。
「坊は飲み込みが早いので助かります、5歳で初級魔法を習得できるとはさすが勇者の卵です」
「ははっ、ゴーストになったんだからもう勇者も関係ないよ。僕はただ単に生きるために学ぶだけだよ」
シャータは剣の師匠だったが、魔法もある程度は使えたので初級魔法まではシャータと2人で勉強出来たが、それ以上学ぼうと思うと、魔法入門の本がないと無理らしい。
なので明日から魔法の勉強は出来ないのだが、俺的には剣も魔法も両方使えるようになりたいのだ。そこでおれは無理を承知でシャータに頼んでみることにした。
「シャータ、初級魔法を使えるようになったのは嬉しいんだけど、もっと魔法上達したいんだ!」
「坊、前にも言いましたが私は初級魔法までしか使えないので教えることはできません」
「でも本があれば大丈夫なんでしょ?探しに行こうよ」
「坊は死にたいのですか…この姿で人里に行けるわけがありません」
確かに俺達は死んだ時の格好でパッと見は人間だろうが、直ぐに肌の青白さと気配でゴーストだと気づかれるだろう。忍び足という能力があるが、残念ながら街にある感知魔法の魔道具にはバレてしまうので街への侵入は不可能であった。
「じゃあ忍び足の能力を進化させればいいんじゃないか?」
「それが出来るなら苦労はしませんよ、能力の進化は個体として進化しないと無理ですよ。私はまだしも坊はレベルがまだまだ低いのです、もっとレベルを上げれば話は別ですが」
ここ2ヶ月でレベル24まで上がったがそれでも最大レベルの4分の1しか達していない、むしろもっと時間がかかると考えると嫌気がさす。しょうがない、待つしかないな。
「それに忍び足の上位能力でも街の感知魔法は避けられませんよ。数段上の上位能力なら可能性はありますが、それでも危険なので魔法は諦めてください」
しょうがない。しばらくは魔法は我慢だが、そこでじっとしていられる性格ではない。となると自分で能力を鍛えるという方法もあるだろうと考えたそっちを実践してみることにした。
結果は全く進歩なし。それから3ヶ月ほど続けたが全くもって効果は現れない。だがまだ諦めない。これでも前世では根っからの努力家だったのだ、めちゃくちゃ勉強して偏差値15上げて合格勝ち取った経験もある。
時は流れアンデット化して1年が経とうとしていた。
レベルは88となり、シャータはほぼカンストまで来ていた。ちなみにステータスは…
カーティス(6歳)
種族 ゴーストナイト
属性 闇
Lv.88
攻撃力 895
体力 536
俊敏性 1002
魔力 2103
個体能力:物理攻撃無効 忍び足EX(気配遮断) 魔法攻撃耐性弱 闇魔法
能力:剣技 火魔法 水魔法 風魔法 地魔法
スキル:模倣 身体能力強化 努力家(時間をかけて訓練したものは能力が上がりやすくなる)
弱点:聖魔法
元々魔力が多いのもあるが、新しく努力家というスキルを獲得したおかげで毎日欠かさなかった魔力訓練の成果がでていて、魔力は大きく成長していた。
元が勇者の卵だったこともあるので、努力すればスキルが手に入るらしい。まあ勇者の卵のままだったらポンポン手に入ったみたいだけどな。
シャータ(19歳)
種族 ゴーストナイト
属性 闇
Lv.97
攻撃力 1056
体力 632
俊敏性 1465
魔力 312
個体能力:物理攻撃無効 忍び足 魔法攻撃耐性弱 闇魔法
能力:剣技 火魔法 水魔法 地魔法 風魔法
弱点:聖魔法
シャータは素早い剣技の持ち主であるので俊敏性が高めで、魔法は得意でないから魔力は低めである。
ちなみに闇魔法というのは魔力をそのまま魔力弾として攻撃に用いたり、魔力の動きを乱したりするものであって、聖魔法と対になるものでもなく、属性相性などもない。対して火魔法などは相性があり火←水←地←風←火となっているが原理はイマイチ分からない。
1年もあったのだからある程度は魔法も使えるのだろう?だって?いやいや、全て初級魔法しか使えません。闇魔法に至っては牽制程度の魔力弾しか撃てませんよ二人とも。
さて1年間の訓練のおかげで魔法も剣も初級レベルには達したのだが、魔法に関しては物足りない。しかしこの1年で得たものもある。
まず駆け出し冒険者の装備だ。この森はレオナルド辺境伯の収める都市リーデニヒに接しており、街を出た駆け出し冒険者の訓練場所でもあるので、よく調子に乗った奴らの遺骸があったりするのだ。アンデット化しないように火葬して、装備品は捨てていくのもあれなので貰っているのだ。
その事がリーデニヒで「神隠し」騒動となっているのだが。
その装備の中には安物のフード付きローブもある。最近はそのローブを纏っているので少しばかり人間に近づいてもバレないようになっていた。
ゴーストとなった今は食料も必要ないのだが、こういった衣服類は非常に貴重なのだ。これくらいは許して欲しい。
ある日、おれはシャータに提案をする。
「シャータ、リーデニヒにとは言わないが、近くの村なら感知魔法も強くないし、侵入出来るのじゃないか?」
「確かに村程度なら私は感知魔法に引っかかると思いますけど坊の忍び足なら侵入は可能だとは思います」
忍び足EXのおかげで、おれは約1年振りに人里に赴くことになったのだった。