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クラリオンの息吹  作者: 蒼原悠
終楽章 音楽の冗談は別れの前に
230/231

あとがき





 まずはご挨拶を。

 本作『クラリオンの息吹』をお手に取っていただき、ありがとうございました。

 延べ110万文字に達する膨大な分量の本作を読み通し、このあとがきにまでたどり着いていただけたことを、とても嬉しく思います。

 そして作者自身、ここまで執筆が漕ぎつけたことに大きく安堵しております。110万文字というボリュームもさることながら、なんと実は作者には音楽に携わった経験がほとんどありません。よくもこれだけの分量の音楽小説を書き上げられたものだと、我ながら驚きを隠せずにいるところです……。




 本作は、作者・蒼原悠の小説家になろう投稿100作目として、また作者最後の大作として、費やせる限りの時間を費やして書き上げた作品です。作者最後……と標榜しているのは、現在の作者が社会人デビューを翌年に控えた22歳の大学生であり、来年以降は今までと同じ活動を続けるのが難しいと考えているからでもあります。社会人一年目は新天地で過ごすことになりそうですので、それこそ主人公・高松里緒のように心機一転、様々なことに取り組んでみたい気持ちもあります。

 関心のあることは多くあるのです。我が家の場合、父が吹奏楽部経験者で母は大学時代にバンドを組んでおり、弟もギターに手を出している半音楽一家なので、自分も何か楽器を演奏できるようになりたいな……だとか。大学に入学した際にも同じことを思っていましたが、結局、大学では演劇の道に進みました。なので次は是非とも楽器がいいなと思います。こんなことを書いていると結局、手を付けずに終わってしまいそうで怖いですが。

 けれどもこの楽器や音楽に対する憧れの強さが、本作を生み出す上では頼り甲斐のある原動力になりました。


 本作『クラリオンの息吹』は、登場人物の6割が何らかの楽器を演奏している音楽小説であり、主人公・高松里緒の属する管弦楽部の活躍や葛藤を描いた部活小説でもあり、はたまた里緒を取り巻くあまたの登場人物たちの生き様を描いた青春小説でもあります。恋愛を含め、あらゆる形態の“愛”が描かれる小説でもあり、いじめや自殺といった社会問題と正面から向き合う小説でもあります。読み手の皆様が特に強く嗅ぎ取ってくださったのは、一体どの要素なのでしょうか。

 しかし作者の見地としては、上の3つはどれも本作の本旨ではありません。

 ここまで描写や設定に凝っておきながらこんなことを言っては信じられないかもしれませんが、作者にとって音楽要素や部活要素、社会問題要素はすべておまけに過ぎないのです。物語としての完成度を高めるアクセントであり、本当に描きたかった本質に触れるための手段にすぎません。

『クラリオンの息吹』は、高松里緒という少女が心身を締め付ける過去の鎧を脱ぎ捨て、前を向いて歩き出すまでの過程を、7つの視点と80万もの文字を費やして描いた作品です。ただ、ひとりの女の子の半年間の奮闘を、読み手の皆さんにお見せするだけの作品。その意味で、本作はまさに字義通りの“ヒューマンドラマ”であるとも言えるかと思います。

 作者自身、主人公を含む登場人物たちに対する思い入れの深さは、ここに書き出し始めたら優に1万文字を越えてしまうほどです。けれどもそれを読み手の方に訴えかけたかったのかと言われれば、明確に「否」と答えることができます。本作には何らかの主義主張を提示する意図は一切ありません。この作品を通じて読み手の方が何を感じてくださるのも自由ですし、何も得るものがなかったとしても作者としては構わないのです。「こんな子も世界のどこかにいたんだな」程度の捉え方をしていただける方が、むしろありがたいとさえ思います。


 ──そう。

 高松里緒は実在します。

 こんな子が世界のどこかにいるのです。


 ……こう書き出すと語弊がありますね。彼女は紛れもなく、作者の作り出した架空の存在です。けれども里緒には何人もの実在モデルがいます。そこには作者も含まれますし、作者と親しい何人もの友人や、人づてに聞いた友達の友達、果てはニュースで見聞きした程度の他人すら含まれます。高い能力やオンリーワンの魅力を持ち合わせていながら、過去の苦い記憶に縛られて自信を持てず、うつむき泣き暮らしている里緒のような人は、この広い空の下に何人、何十人、いや何千人もいると思うのです。

 この物語は、そんな生きづらい人々に一筋の希望を示す作品であってほしい。

「里緒のように前を向きたい」「里緒にできたんだから私にだってできる」と、どこかの誰かが奮起するきっかけになる作品であってほしい。

 作者の込めた願いはそれだけでした。そして今も、変わりはしません。




 少し話を変えると、本作は作者最後の長編小説であると同時に、様々なチャレンジを行った意欲作でもありました。

 素人の小説は売り込まねば読んでもらえません。特に本作の場合、文体の固い現代小説で、小説家になろうの流行からは完全に外れています。売れる要素が一つもありません。そこで今回は思い切って、思いついた工夫や挑戦を色々と実行に移してみました。

 一つは、小説本編とは別に、キャラクターコンテンツとして売り出すこと。

 特に主人公の里緒に関しては、Twitterなどでさんざん「可愛い」と連呼したり大量の自作絵を投下するなどして、読み手の皆さんを巻き込む形でキャラクター単体への好感度を高める努力をしました。結果的にこれが成功したことは、頂き物イラスト紹介のページをご覧いただければ分かるかと思います。もちろん、作者としてはただ単に里緒のことが好きで、それを野放図にTwitterで喚き散らかしていただけでもあるのですが……。

 このキャラクターコンテンツ化にあたっては、早期に依頼して描いていただいたイメージイラストやキャラクターデザインの効果も大きなものでした。ビジュアルイメージがあることは、取っつきやすさに大きく影響します。作者の無価値な叫びはともかく、そこに可愛らしい絵の一枚でも添えられていれば、「ほんとだ! 可愛い!」と感じてもらえる公算はあるわけです。この戦略が成功したのも本作が初めてでした。

 それから、Twitterでの宣伝用に大量の画像を用意したのも、本作ならではの工夫だったと思います。

 上記のようにビジュアルイメージは重要なので、それならば宣伝時にも視覚に訴えられるような画像を用意しよう……と思い立ったのがきっかけでした。新たな画像を公開するたびに一定の反応を得られたりもしたので、この戦略はあながち間違ってもいなかったのではないかと思います。作者個人の満足度も高かったです。個人的にですが。

 今後、作者の手で本作が展開してゆくことはありませんが、本作では2次創作も全面的に許可しています。これからは読み手の皆さんの方で、少しでも『クラリオンの息吹』が広まってゆけばいいな、などとわずかな期待に胸を膨らませているところです。




「音楽小説が読みたい!」

「管弦楽部って何?」

「里緒ちゃんゲロ可愛いんですけど」

「作者面白そうなやつだな、ちょっと読むか」

「タイトルロゴに惹かれました」

「近所が舞台になってるみたいなので」

「最後っていうから読みに来ようと……」

「2次創作OKと聞いて!」


 ──作者には知るべくもありませんが、皆様が本作を手に取ってくださった理由は様々であると思います。そして、最後まで読み通し、ここまでたどり着いてくださったからには、この物語で作者の描こうとした何かが少しでも伝わっているのではないかと期待してしまいます。

 そんな素敵な皆様には、ここまで作者の世界に付き合っていただいたせめてものお礼として、ここで見知った世界を広げられる場所を紹介させてください。

『クラリオンの息吹』制作にあたっては、作者恒例の綿密なロケーションハンティングを行いました。ロケ地は東京都の立川市、国立市、国分寺市、武蔵野市、港区、豊島区、八王子市、江東区、宮城県仙台市、それから岡山県岡山市などに点在しています。ロケ地の場所や様子はTwitter等で告知するかもしれませんし、ご要望があればメッセージで場所をお教えすることもできます。お時間があれば是非とも訪れて、高松里緒たちの生きる世界を実感してもらえたら嬉しいです。

「もっと手軽に!」という方には、作中に登場した音楽の視聴をお勧めします。大半の曲はYouTube等の動画投稿サイトで視聴できますし、今はストリーミングで簡単に落としてくることもできる時代です。もしくは本作中に山ほどの影響をもたらしたボーカルユニット・ClariSの曲もいかがでしょうか。近年に入っても有名曲がたくさんあります。ファンクラブ会員は年額約4000円です、どなたでも簡単に入っていただけます! ファンとして推しの歌手をアピールする努力は怠りません(真顔)

「もっと文字を!」という方には、関連作品紹介のページで書いた小説や漫画、アニメに触れることもお勧めできます。ネット連載の話題作から本屋大賞受賞作まで幅広く取り揃えています。特にアニメ版の『響け!ユーフォニアム』を応援することは、数か月前の火災で損害を被った京都アニメーションに対する支援にもなるはずです。吹奏楽や管弦楽は古典的コンテンツですので、名作や話題作の豊富に集まる素晴らしい漁場でもあります。その漁場に、もう少しばかり触れてみませんか? むろん「もっとお前を見せろ」という方には、累計101作に及ぶ作者・蒼原悠の作品群を紹介することもできます。

 100万文字を読むには約2000分、33時間を要するのだそうです。読み手のあなたが費やしてくださった膨大な時間の資源を、作者は決して無駄にはしません。したくないのです。

 読者の方々にはそれほど感謝しています。




 本作執筆にあたり、多くの方々にご協力をいただきました。


 桐生桜嘉さんと音虫さんには、吹奏楽部や管弦楽部での体験談をお聞きしました。高校の音楽部にいた友人Yくんには部活運営や諸行事のことを、Mくんにはクラリネットの吹き方やパートの特性を教えてもらったほか、Sくんには楽曲方面の相談に幅広く対応してもらいました。〈クラリネット協奏曲〉にピアノパートをねじ込む決断ができたのは彼のおかげです。

 一部の現地取材では風雷寺悠真さんに同行してもらったほか、主要舞台となる弦巻学園国分寺高校のロケ地・W高校の文化祭には作者の母に行ってきてもらい、多くの写真や学校資料を提供してもらいました。W高校の卒業生であるKさんにも取材をさせていただき、内部の描写に役立てています。高校の友人Hくんには、使わなくなった中古のクラリネットを貸してもらい、作中での描写に役立たせていただきました。

 時野みのるさんと黒崎加奈さん、たにどおりさんには、執筆途中の本作の一部を抜粋して試読をお願いしました。ここで得られた多数のご指摘は、その後の制作に大きく寄与しています。

 髪型や服装の設定には、前述の桐生桜嘉さんに多数のご協力をいただきました。いまじんさんにはイメージイラストを、亜鉛ちゃん(由倉ゆい)さんにはキャラクターデザインを、ばなーなさんにはカバーイラストを担当していただきました。喜利彦山人さん、トミーさん、こふるさん、中川あきさん、ろろさん、春風月葉さん、華月蒼.さんには、本作に素敵なファンアートをお寄せいただきました。


 皆様の力添えがなければ、『クラリオンの息吹』は決して完成しませんでした。

 ここに改めて、深く感謝を記したいと思います。

 ありがとうございました。







 高松里緒は今、明るい未来を夢見て精一杯に息をしています。

 ここまでお付き合いくださった皆様の未来も、どうか明るく、華やかで、希望に満ち溢れていますように。

 そんな作者の切なる願いをもって、このあとがきの締めとさせていただきます。





 2019年9月30日

 蒼原悠








感想・レビュー・ポイント評価等、いつでも受け付けております! 作者の大いなる励みになりますので、どうか、ほんの軽い気持ちでも残していっていただけると嬉しいですヾ(*´∀`*)ノ




▶▶▶次回 『Postlude ──〈To Be Continued〉』

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