登場人物紹介【Ⅲ】 弦国女子部1年D組・野球部・教師
第3回は弦国女子部1年D組・野球部・教師。
クラスメート(芹香・つばさ・翠・美怜・久美子・莉華)、野球部員9人、教師(京士郎・天童・富田林・対馬・小諸)の合計21人を紹介します。
■弦国女子部1年D組
北本芹香〈きたもとせりか〉
15歳・女子
1年D組の生徒。一人称は「私」。
出席番号は7番。クラス委員長を務めており、茶道同好会と生徒会にも所属している。生徒会の仕事が忙しいため、茶道同好会には顔を出すのがやっとらしい。
その職務上、多くのクラスメートと関わっていることから、誰よりもクラスメートの様子に詳しい。また、誰かや何かを知ることで未知の世界を狭めることに楽しみを見出しており、そのためクラスメートたちの情報収集や性格の吟味には余念がない。引っ込み思案で他者交流の乏しい高松里緒のことは、当初「付き合いにくいところがある」などといって敬遠気味だったが、のちに野球部の応援演奏で活躍する姿をテレビで見たことで評価を改める。いたって常識人であり、無茶や愚かな行動に走ろうとするクラスメートのことは困惑気味にたしなめている。
青柳花音とは隣の席で、花音にとってはクラスで最初にできた友達である。
鴨方つばさ〈かもがたつばさ〉
15歳・女子
1年D組の生徒。一人称は「うち」。
出席番号は6番。市民吹奏楽団『国立北多摩ウインドオーケストラ』に所属し、フルートパートを務めている。
楽器経験者で、中学では吹奏楽部に入っていた。白石舞香は中学時代からの友人で、舞香はつばさの影響を受けてフルート吹きに憧れ、管弦楽部に入部している。しかし当のつばさは管弦楽部への入部を選ばず、国立WOに入団した。演奏能力に関しては、紅良や国立WOの先輩団員からは「高校生としては中の上」と評価されており、中学の吹奏楽部での経験もあって本番慣れしている様子が伺える。
楽団仲間でありクラスメートでもある西元紅良・津久井翠と仲が良く、練習のある日は三人揃って弦国から練習会場まで向かっている。翠と比べると振る舞いは大人で、何か騒動が起きても静観しながら面白がることが多いが、こと翠をいじることに関しては手を抜かない。
舞香を通じて管弦楽部内での動きを把握していることから、紅良からは情報源として見られている節がある。紅良のことはクールな秀才だと思っており、紅良と深い親交のある高松里緒にも悪い印象は持っていない。
津久井翠〈つくいみどり〉
15歳・女子
1年D組の生徒。一人称は「あたし」。
出席番号は24番。市民吹奏楽団『国立北多摩ウインドオーケストラ』に所属し、ピッコロパートを務めている。
楽器経験者で、中学では吹奏楽部に入っていた。演奏能力に関しては、紅良や国立WOの先輩団員からはつばさ同様「高校生としては中の上」と評価されている。
楽団仲間でありクラスメートでもある西元紅良・鴨方つばさと仲が良く、物語後半では授業時間外にも三人でたむろして仲良くしている姿がある。一学期の初っ端に授業中の居眠りで怒られ、その際に青柳花音から「居眠りちゃん(さらに転じて「ねむりん」)」とあだ名されたことがある。
身長が低いのがコンプレックス。つばさからは繰り返し身長の低さをいじられ、そのたびに憤慨してピッコロで殴るなどの制裁を加えている。終盤では文化祭のクラスの出し物で演劇を行うことに決まった際、「小さくて可愛いお姫様」の役に宛がわれ、王子役を強要されて気の立っていた紅良にわざわざそのことを指摘されて半泣きになっていた。
一見すると能天気なのんびり屋だが、紅良と守山奏良を「そっくり」と評するなど鋭い人間観察力も垣間見える。また社交的であり、初対面の子の前でも臆することがない。本人は知らないが、紅良からは「素直で話しやすい」と好意的に思われている。
一戸美怜〈いちのへみれい〉
15歳・女子
1年D組の生徒。一人称は「あたし」。
出席番号は2番。陸上部に属している。中学からの経験者であり、部活の勧誘が始まったその日に入部を決めるほどの筋金入り陸上女子だが、短距離専門なので持久力がなく、体力テストの1000㍍持久走では800㍍手前で青柳花音に抜き去られてしまった。
悪口をそのままSNSに書き込んで炎上させてしまうなど、悪い意味で素直な少女。いじめられるのは陰キャの宿命だと思っている。高松里緒のことは従前から「感じ悪い」「いつも隅っこで独りでいじけてる」といった印象を持っており、仙台母子いじめ自殺事件の報道が流布して以降は里緒が被害者だと決めつけるような発言も連発、花音を激怒させる一因となった。しかし作中終盤では、野球部の応援演奏で奮闘する里緒の姿を目にしたことで悪印象を大きく払拭し、そのことを里緒自身にも伝えている。仲が良くなってからは里緒いじりが楽しくて仕方なさげに振る舞うなど、元来の素直さは里緒との間でプラスの方向にも作用している。
オカルト的な話題には関心が厚い。
城島久美子〈じょうしまくみこ〉
15歳・女子
1年D組の生徒。一人称は「わたし」。
出席番号は14番。野球部でマネージャーを務めている。甲子園予選の際はスタンドの最下段から曲名ボードを掲げ、応援演奏の手伝いを行った。
席が近いことから青柳花音とは仲が良く、二学期の始業式後にも夏休み中の花音の武勇伝を聞きながら笑っている場面がある。花音に声をかけられたことから『立川音楽まつり』やコンクールの演奏も聴きに来ており、応援演奏を担っている管弦楽部への好感度は高い。『立川音楽まつり』での失敗を引きずって落ち込んでいた高松里緒に率先して声をかけ、「自分に厳しく考えてると疲れる」といって励ましたのも久美子である。1か月以上後の甲子園西東京予選の場でも、里緒はこの時の久美子の台詞を思い返し、励みにしていた。
小倉莉華〈こくらりか〉
15歳・女子
1年D組の生徒。一人称は「うち」。
出席番号は14番。野球部でマネージャーを務めている。甲子園予選の際はスタンドの最下段から曲名ボードを掲げ、応援演奏の手伝いを行った。
城島久美子と同様、青柳花音と仲が良い。『立川音楽まつり』での管弦楽部の演奏をいたく気に入っており、管弦楽部の応援演奏に大きな期待をかけている。また、音楽に関する知見を持ち合わせてはいないものの、教室での演奏を聴いていることから、高松里緒のクラリネット演奏にも一目を置いている。管弦楽部との打ち合わせの際には「うちらが管弦楽部を甲子園まで連れてく」と強気の発言を見舞うなど、自らの属する野球部に絶対的な自信を持っているのが伺える。試合を支えてくれる応援部や管弦楽部、観客には深く感謝しており、準決勝での敗戦後も来年度以降の雪辱を誓っていた。
管弦楽部との打ち合わせには当日の指揮者として須磨京士郎が参加していたことから親近感があり、野球部の試合を京士郎が見に来たときはいたくテンションを上げていた。
■弦国野球部
宇都宮誠太郎〈うつのみやせいたろう〉
17歳・男子
弦国野球部の3年生部員。三番ファースト。
強豪校・弦国を率いるエースの選手である。前年および前々年の全国高校野球選手権では大量のホームランを放つチームの主砲として活躍し、都内の高校野球選手としては最も注目を集める存在にのし上がった。作中の西東京予選でもその能力を遺憾なく発揮し、第二試合でホームラン、第四試合でタイムリーヒット、第五試合でランニングホームランを放つなどの大活躍を見せる。
プロ球団に入団するか大学に進学するかを長いあいだ決めかねていたが、最終的に球団入りを決めた。作中終盤で卒業した後は札幌へ渡り、『北海道八王子製紙フライアーズ』に入団している。また、以上のような動向はメディアにも大きく注目されており、弦国へのメディア取材は宇都宮のおかげで大幅に増加したほか、弦国野球部の参戦する試合にも多数のテレビカメラが乗り込んできていた。
多治見修一〈たじみしゅういち〉
17歳・男子
弦国野球部の3年生部員。一番セカンド、背番号は7。
徳山日向〈とくやまひなた〉
16歳・男子
弦国野球部の2年生男子。二番ピッチャー。
2年生でありながら強豪校・弦国野球部の先発投手を務める実力派。立ち上がりにやや時間がかかりがちだが、本格的に切れ味が増してくると多くのバッターは手を出すこともできなくなるため、弦国の失点を大きく減らす立役者となっている。ただし年相応に緊張することもあり、第六試合では焦って緩慢な球を放ってしまう場面も見受けられた。
行田大機〈ぎょうだだいき〉
16歳・男子
弦国野球部の2年生男子。四番キャッチャー。
先発投手の徳山とのコンビネーションが自慢。さらに自身の打撃力もエース並で、第二試合と第三試合ではそれぞれ一本ずつホームランを打つなど、宇都宮誠太郎にも比肩する活躍でチームを勝利に導いた。
西尾曾太郎〈にしおそうたろう〉
17歳・男子
弦国野球部の3年生男子。五番センター。
第六試合で徳山の放ってしまった緩慢な球が打たれた際、カバーに入って大失点を回避している。
上越祐騎〈じょうえつゆうき〉
17歳・男子
弦国野球部の3年生男子。六番ライト。
第三試合の二回表ではフォアボールで出塁し、弦国の先制に貢献する。
富津眞〈ふっつじん〉
17歳・男子
弦国野球部の3年生男子。七番レフト。
第三試合の二回表ではセンター前ヒットを放って出塁し、弦国の先制に貢献する。
入間和哉〈いるまかずや〉
15歳・男子
弦国野球部の1年生男子。八番サード。
強豪校の弦国野球部に在籍していながら1年でサードとして先発メンバー入りするなど、実力のほどが伺える。その期待を裏切ることなく、第三試合の二回表では客席に迫る大きな打球を放ち、滑り込みでランニングホームランを達成する。このホームランで3人がホームインし、弦国は都立立国野球部から先制点をもぎ取った。
余呉晴臣〈よごはるおみ〉
16歳・男子
弦国野球部の2年生男子。九番セカンド。
第五試合でデッドボールを受け出塁している。
■弦国教師
須磨京士郎〈すまきょうしろう〉
29歳・男性
弦国に勤務する男性教師。一人称は「僕」。
芸文大学音楽学部器楽科ピアノ専攻卒、独身。全学年の音楽の授業を担当するほか、管弦楽部の顧問でもある。作中では女子部1年D組の担任も務め、上記のすべてで高松里緒や青柳花音と関わりを持っている。雇用形態は常勤講師だが、担当する授業が少ないために行事運営等の学務補佐も行っており、さらに他校との掛け持ち勤務も認められている。
初見に等しい楽譜を一発で正確に弾いてみせるなど、ピアノの実力は極めて高い。また、かつて管弦楽部で演奏指導を行っていた頃に指揮の勉強と経験も相当に積んでおり、野球部の応援では炎天下のスタンドで指揮を担い、部員たちを支えた。職員室の京士郎の机には指揮者の指南本が多く眠っている。
音楽に対する情熱は人一倍で、その熱量は管弦楽部の生徒たちをも凌駕する。そのため、音楽について語り出すと口を止められなくなり、目の前の状況を無視して話に没頭する悪癖がある。7年前の赴任当時、こうした莫大な情熱をもって管弦楽部の指導に当たった結果、ついて行けなくなった部員たちから「そんな部活は求めていない」「もっと自由にやりたい」等の反発を受けてしまった。それゆえ、管弦楽部に自分の居場所を見出すことができず、以降は顧問でありながら滅多に顔を見せないスタイルを貫いてきたという経緯がある。しかし女子部1年D組の担任となって里緒に出会い、里緒の引き起こした騒動に巻き込まれたことで、嫌でも里緒を含む管弦楽部の部員たちと向き合わざるを得なくなり、その結果として部に対するわだかまりを解消した。7年間の人間的な成長の結果か、現在は音楽に対する熱意を部員たちに押し付けるような真似は見られず、適切な距離を部員たちとの間に保つことができている。
背が高く、端正な顔立ちの持ち主。対面当初はクラスメートから感嘆の声を上げられ、里緒からは「黙っていれば格好いい」と評された。しかし言動に関しては目下のところ完全に変人扱いである。基本的に音楽バカで、野球のルールなど常識には疎い面も。
学生時代には芸文附属吹奏楽部第二顧問の矢巾千鶴にピアノの指導を受けており、管弦楽部が矢巾を弦国に招聘したことで再会を果たした。以来、管弦楽部の指導の場で何度も会い、コンクール直前には二人で飲みに行くなどして旧交を温めている。かつて管弦楽部の指導に熱を上げていたのも、同じく顧問を務める矢巾に影響を受けたことが大きな要因である。また、学生時代に同期だったクラリネット専攻の須坂令子は『国立北多摩ウインドオーケストラ』でコンサートミストレスを務めており、現在でも連絡を取り合っては互いの近況を報告している。西元紅良が国立WOに参加していることは須坂経由で判明した。
作中中盤で管弦楽部への関与が復活して以降は、滝川菊乃から「もっと早く頼っとけばよかった」と喜ばれるなど、矢巾を手本にした懇切丁寧な指導が部員たちに受けている。腱鞘炎から復帰した茨木美琴のピアノの監修も務め、室内楽コンクールの奨励賞を受賞するレベルにまで育て上げた。授業外では、副校長の天童俊也らと協力して里緒の問題への対処に当たり、父親の高松大祐から一定の信頼を得ている。
天童俊也〈てんどうとしや〉
50代・男性
弦国に勤務する男性教師。一人称は「私」。
社会科教諭で、現在は弦国の副校長を務める。制度上、弦国の校長はお飾り同然の存在なので、天童が事実上の弦国トップであり、職員会議の場でも司会進行を担っている。合唱部の顧問も兼任中。
天然パーマのかかった髪が特徴的。合唱部の生徒たちからは「もじゃもじゃ先生」と名付けられて人気である。一方で背が低く、須磨京士郎からは隣に立つことを憚られている。コーヒーが好みで、京士郎の席の背後にあるコーヒーメーカーを用いることが多い。
「仙台母子いじめ自殺事件」の当事者が高松里緒であるとネット上で特定され、校内が騒ぎになっても、事態の収束を図るとともに里緒の心のケアを養護教諭に指示するなど、生徒の保護に積極的な良識ある人物。生徒会をはじめとする生徒たちと教師側の板挟みになる場面も多く、応援部が吹奏楽部設立の要望書を出してきたときには対応に苦慮させられていた。管弦楽部の現状については不足が多いと感じているものの、新たに吹奏楽部を設立する必要性までは感じていない様子。京士郎にはより積極的な管弦楽部への参画を期待している。
式中の壇上での話は面白く、生徒からは好評である。
鹿角学〈かづのまなぶ〉
60代・男性
弦国に勤務する男性教師。
現在は弦国の校長を務める。係属校の弦巻大学から派遣されており、学校の運営にはほとんど寄与しない。職員会議の場でも主役を副校長の天童俊也に譲っている。
富田林健二〈とんだばやしけんじ〉
20代・男性
弦国に勤務する男性教師。
体育科教諭で、女子部1年の保健体育の授業を受け持っているほか、サッカー部の顧問も務めている。
学校からの電話に高松大祐が出ないことに「何のための緊急連絡先だ」と憤慨するなど。やや直情的な一面があり、歯に衣を着せない発言も見られる。体育科教諭だけあって保健の知識は十分に備えており、高松里緒が教室で倒れた際には過呼吸であることをいち早く見抜き、保健室に搬送した。
スピード採点が名物だが、作中では不正確な採点をして西元紅良に点数の修正を求められた。自ら率いるサッカー部が好戦果を残した際には大喜びし、その活躍を周囲に自慢して回る癖がある。
対馬桜子〈つしまさくらこ〉
30代・女性
弦国に勤務する女性教師。
養護教諭で保健室に勤務しており、校医が不在の日は生徒の健康管理を一任されている。
過呼吸で倒れて運ばれてきた高松里緒の体調をたびたび気遣うなど、その職務に相応しい温かな人物。何度も対馬の世話になっていることから、作中後半以降は里緒も対馬に慣れ、思ったままの素直な言葉もそれなりに口にできる関係を築いている。ただし、里緒と管弦楽部の関係にまでは疎いため、部の先輩たちが保健室を訪れた際には(内心で里緒が拒否を示していたにもかかわらず)里緒のベッドを案内してしまった。
里緒の心のケアを職員会議の場で進言したことから、二学期に入って以降は週に一度か二度、里緒を保健室に呼び出し、その日の出来事や心の状態を細かに尋ねるなどして心のカルテ作りを担っている。
養護教諭としての腕は確かで、野球観戦中に天童俊也の頭部に打球が命中した際は、的確な指示で周囲を動かしながら迅速に対処を行う姿を見せた。
小諸〈こもろ〉
弦国に勤務する医師。
校医を務めるが、作中では一度も登場していない。
(なお、『クラリオンの息吹』の登場人物全91名のうち、下の名前が設定されていないのは小諸のみである)
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