登場人物紹介【Ⅱ】 弦国管弦楽部
第2回は弦国管弦楽部。
3年生部員(はじめ・洸・香織・実森・詩・徳利・逸花・志緒・明日汰・美月)、2年生部員(菊乃・美琴・佐和・丈・佳子・郁斗・智秋・直央・恵・宗輔)、1年生部員(緋菜・舞香・光貴・忍・真綾・唐也・小萌・元晴)、引退した元3年生・飯塚茜の合計29人を一挙に紹介します。
以下は部員たちの早見表です!
■弦国管弦楽部
大津はじめ〈おおつはじめ〉
17歳・女子 【木管セクション】
管弦楽部の部長を務める女子。一人称は「私」。
弦巻学園国分寺高等学校女子部3年。テナーサックスパートに所属し、部長として活躍しながら新富忍の指導を担当。卒業後は弦巻大学の文化構想学部に進学した。
ショートカットの髪がトレードマーク。笑顔を浮かべることが少なく、部長らしく厳しい声をかけることが多いのも相まって部員からは秘かに恐れられている。テナーサックスを始めたのは高校からで、部内では珍しく指揮の勉強もしており、学指揮として指揮棒を握ることも多い。
高いリーダーシップを発揮する三年生のまとめ役である。【音“楽”なんだから楽しくやろう】という部是を重視し、秩序の維持を優先するタイプ。賢い観察眼と分析力であらゆる物事を見極め、時には冷徹に判断を下すこともある。滝川菊乃をはじめとする急進的な部員たちがコンクールへの参戦を提言した時も素直に首を縦に振らないなど、慎重な判断を見せる場面が多い。逆に、高松里緒の騒動を受けて急遽合宿を実現させたときは、その対応の速さで後輩たちを驚かせた。また、常に冷徹なオーラをまとっているわけではなく、落ち込み気味な里緒の前ではたびたび励ましの優しさを見せるほか、へまをした部員のさりげないサポートも忘れない。それゆえ厳しい部長でありながら、アルトサックスの佐和をはじめとした多くの部員からの支持や信頼を得ている。副部長を務めた上福岡洸との相性はよく、毎日の部活終わりに一緒に帰宅しながらミーティングを開くのが日課となっていた。
クールな仮面を装って部を運営しているが、焦ることもあれば悔しさをにじませることもある。ただし、後輩の前ではそうした弱さを見せることは滅多にない。管弦楽部が他校の生徒たちから不当に貶められていることは以前から知っているが、その貶めに対抗できるだけの実力が管弦楽部にないことも同時に知っており、半ば諦めるような形で罵倒を受け入れてきた。
なお、最近は八代智秋に教えてもらったスマホのリズムゲームにハマり気味。ゴジラのお面をかぶって祭を練り歩くなどのセンスも垣間見せる。
上福岡洸〈かみふくおかひかる〉
17歳・男子 【弦楽セクション】
管弦楽部の副部長を務める男子。一人称は「僕」。
弦巻学園国分寺高等学校男子部3年。ヴァイオリンパートに所属し、副部長として活躍。指導担当はなし。卒業後は芸文大学の音楽学部器楽科ヴァイオリン専攻に進学した。コンクール組での担当は第一ヴァイオリンパート。
すらっと爽やかなイケメン。幼少期からヴァイオリンをたしなんでおり、部内での実力は圧倒的。その指導力を活かして、松戸佐和のような初心者同然の部員の指導にもあたっている。野球部の応援演奏時には楽器を手放し、奏者たちのフォローに回った。
部長の大津はじめが冷徹な判断力で厳しく部を統制するのに対し、その動きをサポートしながら部員たちのフォローもして回るという、“優しい副部長”の役割を演じてきた。はじめが普段から前に立っている分、ミーティングでの説明の場などでは洸が積極的に矢面に立ち、資料作りの多くも引き受けるなどの分業体制を採っている。「紙に残しておくってのは大事なことだろ」と発言するなど、記録を残すことに対するこだわりも見える。また、原則として“優しい副部長”ではあるが厳しい言葉をかけないわけではなく、時としてはじめを援護する形で下級生を諫めることもある。
言葉遣いも振る舞いも爽やかで優しく、さらに上述の通り容貌も優れているので、特に同じ弦楽セクションに属する池田直央や春日恵からの熱烈な支持がある。ただし最近は洸向けのいたずらグッズを買う動きがあるなど、後輩に好き勝手に玩ばれる姿も見せつつある。高松里緒の騒動も含め、様々な出来事に振り回されながら奮闘する管弦楽部を洸自身は「生き生きしてる」と捉えており、洸なりに楽しく副部長の職を全うしていることが窺える。
音大受験にともなう実技試験対策も兼ね、一般受験組でありながら3年生でも管弦楽部に残留していたが、同じく管弦楽部に残る内部進学組の動向にはいまいち疎かった。副部長の引退後も、後輩指導や自身の練習のために部へ顔を出している。
長浜香織〈ながはまかおり〉
17歳・女子 【木管セクション】
管弦楽部の女子部員。一人称は「私」。
弦巻学園国分寺高等学校女子部3年。フルートパートに所属し、美化係のリーダーとして活躍。滝川菊乃とともに白石舞香の指導担当を務めるほか、美化係では舞香と高松里緒の直属の先輩に当たる。卒業後は弦巻大学の文学部に進学した。コンクール組での担当はフルートパート。
人見知りの里緒をして「取っつきやすそう」と思わせるほど、おっとりして人当たりのいい人物。高校からフルートを吹き始めた元初心者であり、フルートの演奏力では2年生の菊乃にまったく敵わない。しかしながら音を失った里緒の練習に付き合い、一からブレストレーニングを施して基礎を積み上げ、音の復活に貢献するなど、その指導力には侮れないものがある。口の悪い舞香や臆病な里緒をいっぺんにまとめ上げる統率力、包容力も兼ね備えており、新入生2名を率いる美化係のリーダーに任命されたのもそうした能力が買われたため。しかしながら香織自身は自分のポテンシャルを認識しておらず、「きっと慕ってもらえない」とひそかに悲観していた。それゆえ、予想に反して一年間も自分を慕ってくれた里緒や舞香に対する思い入れは非常に深い。
菊乃という上級者の後輩を持つため、あまり表に出ることはないが自己評価が低い。毎度のように教室を散らかす部員たちにため息を隠さないなど、何かと気苦労の絶えない人物でもある。また、勉強会を開いた際には「高1向けの宿題も解けなかったら高3として恥ずかしい」といって里緒たちの苦手な科目の宿題を引き受けるなど、大事な後輩の前では意地を張ってしまう一面もある。
作中では美化係のリーダーとして、個人指導の担当として、またコンクール組の一員として、さまざまな形で里緒や舞香と関わり続けた。二人からの信頼は極めて篤く、また香織の側も里緒と舞香に計り知れない愛情を注いでいる。終盤では別れ際、思いの丈を込めた手紙を二人に手渡した。
生駒実森〈いこまみもり〉
17歳・女子 【金管セクション】
管弦楽部の女子部員。一人称は「私」。
弦巻学園国分寺高等学校女子部3年。ホルンパートに所属し、会計として活躍しながら三原郁斗とともに瀬戸唐也の指導を担当。卒業後は弦巻大学の政治経済学部経済学科に進学した。コンクール組での担当はホルンパート。
管弦楽部の財布のひもを握る会計役職であるため、部員たちの根回しの対象にされやすい。部内の動きを俯瞰視点で面白がっている節があり、滝川菊乃たちの打ち立てたコンクール参戦計画にも特に反対の様子を見せなかったほか、藤枝緋菜の立案した「浪江真綾の告白を成功させる大作戦(告白大作戦)」にも気前よく参加している。そのため人望もあり、作中後半では郁斗に熱心に請われたことでコンクール組にも加入した。
常に部の会計を確認できるようにすべく、貴重品入れに通帳を入れて持ち歩いている。レンタル契約の管理等も行うなど、金銭の絡む仕事はことごとく実森が引き受けている模様。
本庄詩〈ほんじょううた〉
17歳・女子 【低音セクション】
管弦楽部の女子部員。一人称は「私」。
弦巻学園国分寺高等学校女子部3年。チューバパートに所属し、楽器管理係として活躍。指導担当はなし。卒業後は弦巻大学の創造理工学部建築学科に進学した。
中学からの経験者で、「金管ならば何でも吹ける」と豪語するほど金管楽器に精通している。里緒のクラリネットに見当たった小さな傷や故障も見抜くなど、木管楽器も含めた幅広い楽器の知識を持ち合わせており、その機械好きが高じて理工学部を進学先に選んだ。
あっけらかんとした大らかな性格の持ち主で、備品の楽器を壊してしまった高松里緒のことも咎めなしに笑って済ませていた。低音セクションではたびたび八代智秋の悪ふざけの被害に遭っているが、それが本物の悪意でないのを分かった上で智秋に土下座謝罪を要求するなど、ややSっ気のようなものも垣間見える。ただし基本的にはいたって常識人であり、滝川菊乃の立てたコンクール参戦計画には当初かなり困惑していた。同じく智秋のいたずらの被害に遭う藤枝緋菜からは、「変な空気になっても仕切り役になってくれる」といって頼りにされている。
目下、ぷちどろいどの“KUMAちゃん”を溺愛中。智秋がKUMAちゃんのストラップを破壊した際にはいたくショックを受けていた。
芽室徳利〈めむろのりとし〉
17歳・男子 【打楽セクション】
管弦楽部の男子部員。一人称は「俺」。
弦巻学園国分寺高等学校男子部3年。パーカッションパートに所属し、楽器運搬係のリーダーとして活躍しながら川西元晴の指導を担当。青柳花音や元晴など、楽器運搬係を担う大半の一年部員にとって直属の先輩にあたる。卒業後は弦巻大学の国際教養学部に進学した。
がたいのいい大柄の男子で、管弦楽部随一のパワー要員。中学では水泳部に属しており、楽器を始めたのは高校から。大柄だが足が速く、体力作りのランニングでは小柄な花音と高速で競り合う光景が見られる。また、野球部の応援演奏ではペットボトルによるパーカッションを引き受け、炎天下での演奏を繰り広げた。合宿3日目の深夜に里緒がグラウンドでクラリネットを演奏しているのを聴きつけ、「(従来の)高松の音色じゃない」と指摘するなど、パーカッションで鍛えた耳の精度は伊達ではない。
後輩想いの明朗快活な人物。いい意味で空気を読まない、3年生部員で唯一のムードメーカーである。告白大作戦の折にはターゲットである丈の動向を愉快げに観察するなど、その場のノリを非常に面白がる人物でもある。同じ水泳部出身の元晴とは入部時から意気投合して師弟関係になり、パーカッションパートに引き込んだ。演奏会の準備や後片付け、ミーティングの際の座席配置、コンクール時の楽器輸送など、イベントごとで大きな移動のある場合には徳利が事実上のトップとして全部員を動かすため、2年生を含めた下級生部員の大半にとっては兄や父親のような存在であり、「徳利さん」の愛称で親しまれている。
何かと豪快な振る舞いが目立つ反面、射的をやっても弾を外しまくるなど、細かい所作はあまり得意ではない様子。最近は麻雀を愛好中である。
岩倉逸花〈いわくらいつか〉
17歳・女子 【木管セクション】
管弦楽部の女子部員。一人称は「私」。
弦巻学園国分寺高等学校女子部3年。クラリネットパートに所属していた。指導担当はなし。大学受験のため、1年生の入部と同時に一足早く管弦楽部を引退し、卒業後は慶興大学の医学部に進学した。
管弦楽部を引退済みではあるものの、野球部の応援演奏の際に荷物版を担当するなど、部との縁は完全には切れていない。見学に来ていた高松里緒のクラリネットの演奏を聴いており、卒業時に「一般受験なんかしないで部活に残ってればよかった」と発言するほど音色を気に入っていた。基本的に人が良く、後輩相手に冗談を飛ばす程度の明るさもある。
今治志緒〈いまばりしお〉
17歳・女子 【金管セクション】
管弦楽部の女子部員。
弦巻学園国分寺高等学校女子部3年。トランペットパートに所属していた。指導担当はなし。大学受験のため、1年生の入部と同時に一足早く管弦楽部を引退し、卒業後は神田橋大学の社会学部に進学した。
管弦楽部を引退済みではあるものの、野球部の応援演奏の際に荷物版を担当するなど、部との縁は完全には切れていない。元初心者の福山丈を置き去りに部を引退したため、金管楽器の層の薄さに貢献してしまっている。
川棚明日汰〈かわたなあすた〉
17歳・男子 【金管セクション】
管弦楽部の男子部員。
弦巻学園国分寺高等学校男子部3年。トロンボーンパートに所属していた。指導担当はなし。大学受験のため、1年生の入部と同時に一足早く管弦楽部を引退し、卒業後は多摩工業大学理学院の物理学系に進学した。
管弦楽部を引退済みではあるものの、野球部の応援演奏の際に荷物版を担当するなど、部との縁は完全には切れていない。元初心者の下関佳子を置き去りに部を引退したため、金管楽器の層の薄さに貢献してしまっている。
大東美月〈だいとうみづき〉
17歳・女子【低音セクション】
管弦楽部の女子部員。
弦巻学園国分寺高等学校女子部3年。ユーフォニアムパートに所属していた。指導担当はなし。大学受験のため、1年生の入部と同時に一足早く管弦楽部を引退し、卒業後は鈴懸学院大学の文学部に進学した。
管弦楽部を引退済みではあるものの、野球部の応援演奏の際に荷物版を担当するなど、部との縁は完全には切れていない。ユーフォニアムは本来、管弦楽に参加しない楽器であり、活躍の場を広げるためチューバも吹奏していた。
滝川菊乃〈たきがわきくの〉
16歳・女子 【木管セクション】
管弦楽部の女子部員。一人称は「あたし」。
弦巻学園国分寺高等学校女子部2年。フルートパートに所属し、2年生の学年代表と楽譜管理係を兼任しながら白石舞香の指導を担当。高校3年からは部長を務める。コンクール組での担当はフルートパート兼コンサートミストレス。
黒髪ポニーテールの「格好よくて可愛い」先輩。前髪はピンで留めている。その強気で明るい外見に違わず、大津はじめ以上の強力なリーダーシップで仲間を引っ張る2年生の姉御的存在であり、ムードメーカーである。前例のない『全国学校合奏コンクール』への参戦計画を立案し、コンクール組のリーダーを務めた。
中学でも吹奏楽部に所属し、フルートを吹いていた。フルートに関してはかなりの実力者で、紅良からは「速いパッセージを全部きちんと吹きこなしている」「音もしっかり出ている」「雑音が入ってこない」との好意的な評価を受けており、高校から楽器を始めた一学年上の長浜香織よりも実力は上である。楽譜管理係として職務に当たりながら独自に編曲の勉強も重ねており、演奏会で用いる楽譜を自力で編曲することもある。〈クラリネット協奏曲〉の編曲では、本来ならば存在しないはずのピアノパートを自然と曲の中に馴染ませる見事な編曲技術を見せつけた。さらには合奏指導も担っており、『立川音楽まつり』のような2年生以下の部員が中心となる演奏に関しては、実質的に菊乃が指導のトップになる。合奏のみならずパート練習やセクション練習の場でも、頻繁に楽器を放り出しては各セクションを見て回るといった熱心な指導の姿を見せる。こうした能力面や努力面の裏付けもあって、平素の3年生や同期たちからの信頼は篤い。一方で指導対象である1年生からの評価はまちまちで、「普段は好きだけど練習中は苦手」という子が多い。
年齢の上下を問わず溺愛する人当たりの良さでウケがいいが、その内実は見かけを裏切らない野心家な少女である。自らの掲げる理想を信じて疑わず、説得力のある言葉で周囲を束ねながらぐいぐいと前に突き進んでゆくタイプ。その姿勢は合奏指導において顕著であり、強権的な物言いで厳しい指摘を次々と下す様は1年生に「滝川節」「オニ」「悪魔」とまで称される。その猪突猛進な性格が災いして、巻き込んだ周囲の子たちをフォローすることになかなか意識が向いていなかったが、作中中盤、コンクールの独奏を担わされた高松里緒が精神を壊して演奏できなくなる事態に発展したことで、自分の無茶な振り回しが周囲に与えていた影響を初めて直視。いたく反省を深め、以降は周りの部員たちをきちんと慮ることのできる真のリーダー気質に成長してゆく。
上記のごとく強気な少女だが、強がることは決して得意ではなく、意外と打たれ弱い一面もある。演奏を見下されたり懸命の訴えを否定されたり、あるいは担っていた重責から解放されると、こらえていた感情が一気にあふれて泣いてしまうなど、年相応に感情表現は豊か。また、決め打ちで行動する癖があり、(里緒の音の喪失など)予想外の事態が発生すると混乱で動けなくなる。部長の拝命後は急に背負うものが重たくなり、菊乃らしからぬ切迫感で頭の中がいっぱいになっていた。
部長のはじめとはリーダーシップの性質が異なっており、活動の方針を巡ってたびたび対立を繰り返している。しかし作中終盤でははじめの信任を受け、部長に名指しで任命されたことが明らかになった。練習中は恐れられるものの、普段は1年生からも広く愛されており、特に花音や舞香のような性格の似た後輩からの好感度は高い。コンクール参戦計画が2年生の大半に(不参加も含めて)支持されるなど、同期の仲間たちからの信頼度も高いことが窺える。なお、部内で一番の仲良しは茨木美琴であり、何かと困ったときには美琴を頼りがちである。
茨木美琴〈いばらきみこと〉
16歳・女子 【木管セクション】
管弦楽部の女子部員。一人称は「私」。
弦巻学園国分寺高等学校女子部2年。クラリネットパートに所属し、楽器管理係として活躍しながら青柳花音の指導を担当。高校3年でも引き続き楽器管理係を務める。コンクールでの担当はピアノパート。
同じ2年生の滝川菊乃と違い、茶髪のポニーテールが特徴的。仏頂面もしくは無表情が標準で、しかも基本的に寡黙であるため、周囲からは何かと怖がられやすい。
得意な楽器はピアノとクラリネット。ピアノは幼少期から教室に通っており、努力の末に卓越した演奏技術を身につけたが、人間関係の問題から教室を辞めてしまったことで一時期は距離を置いていた。その後はクラリネットを吹き始め、中学の吹奏楽部でも経験を積んでいる。ピアノの腕前は極めて優秀である一方、クラリネットに関しても高校生奏者としては相当なハイレベルを誇っていた。実力は部内一とも言われたが、のちに高松里緒が入部してきたことで、その序列は崩される。なお、使っているクラリネットはマイ楽器のB♭管で、お値段は50万円。ピアノの指導は顧問の須磨京士郎が担っている。
非常に生真面目な少女。練習に当たっては徹底的に基礎を叩き込み、あらゆる場面で「完成された」演奏を行う。里緒と同じく努力で腕を磨く秀才型だが、自らの積み上げた努力と演奏に絶対の自信を持っていることが里緒との相違点である。音楽の部活動が実力主義社会であるのを弁えた上で「自分には大きな顔をする資格がある」と考え、激しい嫉妬のために里緒を追い詰めるような言動を取ってしまうなど、良くも悪くもプライドが高い。その反面、自らのプライドの傷付かない範疇であれば誰にでも優しくすることができ、指導担当の花音には慕われている。また、上記のようにプライドは実力の裏返しであるため、怪我などの事情で演奏ができなくなるとプライドも失われ、自虐的かつ投げやりになる一面もある。
作中では中盤から終盤にかけて、自分のせいで追い込まれてしまった里緒と向き合い、自らの振る舞いを見つめ直す。その結果、「人によって得意不得意がある」と割り切るなどしてわだかまりが失われ、互いに心を支え合える信頼関係が育まれた。里緒からは「損をしている」「優しい」「自分を魅せるのが下手」といった評価を受けているほか、腱鞘炎でピアノが弾けずに元気をなくしていた時にはさりげなく寄り添われ、コンクールの舞台上では涙ながらに感激の言葉を口にされるなど、順調に心を開かれつつある。また美琴自身、ナンバーワンよりもオンリーワンを志すようになる意識改革を遂げており、里緒との実力の序列が依然として変化していない今も、未来を比較的前向きに捉えながら生きている。
生来は生真面目であることから、暴走しがちな菊乃の隣で彼女を諫める冷静さも持ち合わせる。そのため菊乃からの信頼と愛情は深い。2年部員の仲間たちからは、主に学習面などで頼りにされることが多いほか、後輩同様に「無愛想」との評価も受けており、里緒が音を取り戻したことに嬉し涙を流した時は軽口も叩かれるなど、基本的に仲が良い。
松戸佐和〈まつどさわ〉
16歳・女子 【木管セクション】
管弦楽部の女子部員。一人称は「私」。
弦巻学園国分寺高等学校女子部2年。アルトサックスパートに所属し、写真係として活躍しながら大館光貴の指導を担当。高校3年からは副部長を務める。コンクールでの担当は第二ヴァイオリンパート。
得意な楽器はアルトサックスとヴァイオリン。先に始めたのはヴァイオリンの方だが、進学した中学には吹奏楽部しかなかったため校内に居場所が見つからず、やむなく中学3年時にアルトサックスに転向してしまった過去を持つ。そのため現在でもヴァイオリンを弾けないわけではなく、甲子園予選明けにはヴァイオリンを携えてコンクール組に合流し、本番にも出場した。なお、ヴァイオリンの指導は上福岡洸が担当している。
徹底して心配性である。滝川菊乃の打ち立てたコンクール参戦計画には「出場経験がなく練習のノウハウがない」「指導担当もいない」等の理由で反対し、独奏パートを宛がわれた里緒が疲弊してゆくのをいち早く見抜いた時も「このままだと潰れる」と懸念を示すなど、広い視野で部内を見ながら菊乃たちを諫める立場にある。慎重派の部長・大津はじめが同じサックス吹きであり近しいことから、はじめの影響も多分に受けていることが窺える。そうした後ろ向きがちな性格を買われ、代替わり時には新部長である菊乃のブレーキ役を果たすことを期待されて副部長に選出された。
腐ってヴァイオリンを手放したことが長らく心に引っかかっており、作中後半では似た境涯の美琴がピアノと向き合いながら懸命に努力していることに感銘を受け、ヴァイオリンに再挑戦する意思を固めた。美琴とはその後も「二足のわらじ仲間」として練習を続けており、終盤では二人でデュエットを組んで室内楽のコンクールにも挑んでいる。
同学年の仲間ともあまり口を利かない内向的な光貴が佐和の前では言葉を交わすなど、後輩受けは悪くはない様子。
福山丈〈ふくやまじょう〉
16歳・女子 【金管セクション】
管弦楽部の男子部員。一人称は「僕」。
弦巻学園国分寺高等学校男子部2年。トランペットパートに所属し、写真係として活躍しながら浪江真綾の指導を担当。高校3年からは大学受験のため、一足早く管弦楽部を引退した。
楽器を始めたのは高校からで、入部の時期も遅かったためひときわ経験が少ない。2年生になった現在は上級生として真綾の指導に当たっているが、真綾のミスに釣られて自らもミスを重ねることがあり、よく部長に指摘を食らっては二人仲良く首をすくめている。
2年生男子四人組の中でも圧倒的に優しく、物腰の柔らかな少年である。花形楽器のトランペットを担っているにもかかわらず実力が足りないという重圧から、滝川菊乃をはじめとした周囲の2年生たちには劣等感を抱いており、それゆえ身を引いてしまいがち。「足を引っ張るのが怖いから」という理由で、菊乃のコンクール参戦計画にも参加しない意向を示していた。そうした謙虚な姿勢もあいまってか、逆に2年の仲間からは大事にされている。特に八代智秋たち男子部員からの愛され方は抜群で、コンクール演奏後に(唯一演奏に参加していない)丈を呼び寄せて四人で円陣を組んだほど。
スマホのパスワードを「フクヤマ」の語呂合わせの数字に設定し、しかもそれを背後から三原郁斗に覗かれて見抜かれるなど、不用心でチョロい。常識人でもあり、休憩中にお菓子の袋を開けて後輩たちを誘うなどの気遣いもたびたび見せる。丸っこく女子らしい文字を書くほか、ペンの色も割と使い分けるタイプ。
指導対象の真綾も楽器初心者のため、入部後は早期に意気投合した。練習終わりに二人で夕食に行くなど真綾との親近感は抜群に高く、冬に差し掛かる頃には互いに恋愛感情を抱くまでになり、最終的にはクリスマスイブの夜に真綾から告白されて恋仲になった。
下関佳子〈しものせきよしこ〉
16歳・女子 【金管セクション】
管弦楽部の女子部員。一人称は「わたし」。
弦巻学園国分寺高等学校女子部2年。トロンボーンパートに所属し、楽譜管理係として活躍。指導担当はなし。高校3年からは大学受験のため、一足早く管弦楽部を引退した。
楽器を始めたのは高校から。管弦楽部とともに生徒会を兼部しており、生徒会の活動が忙しくなると管弦楽部への顔出しが少なくなる多忙な少女。文化祭の時は実行委員会の一員になり、物品使用申請書の不備を発見して管弦楽部を叱る立場となった。
忙しいなりに親切で仲間思いであり、高校1年の文化祭で管弦楽部が芸文附属の生徒たちに貶められた際には滝川菊乃たちと同様に大きなショックを受けていた。そのため、菊乃の打ち立てたコンクール参戦計画にはもともと反対していない(ただし自らは多忙のため参加できないと申し出ている)。野球部の応援演奏で管弦楽部が顔バレ防止のドミノマスクを着用し始めた際は、いち早く生徒会を経由して野球部や応援部にコンタクトを取り、応援団全員に同じマスクを着用させるなどの迅速な配慮も見せた。また、1000人超の生徒たちを束ねる生徒会の一員として正義感も強く、危険な場面では積極的に後輩の前に出て、彼女たちを守る行動に出ることもある。
「非科学的」「信じるほど起こりやすくなる」という理由で、都市伝説の類いは信じない主義。
三原郁斗〈みはらいくと〉
16歳・男子 【金管セクション】
管弦楽部の男子部員。一人称は「俺」。
弦巻学園国分寺高等学校男子部2年。ホルンパートに所属し、教室管理係として活躍しながら瀬戸唐也の指導を担当。高校3年からは会計を務める。コンクールでの担当はホルンパート。
ホルンは中学の頃から吹いており、吹奏楽部でのコンクール経験者。八代智秋とは同じ中学の出身で、部活も含めた智秋との付き合いは5年以上にのぼる。
元気で朗らかな2年生男子四人組の一人。クール系イケメン(を目指している)。上下の仲は非常によく、会計を務める生駒実森には心酔しており、コンクールのメンバーに誘い込んだうえ次期会計は自分で間違いないと自負していた。指導対象の唐也に対する後輩いじりも忘れておらず、彼が可愛いもの好きな残念イケメンであることも早々に見抜き、菊乃たちに本性をバラしている。他人のスマホを覗く癖がある模様。
中学時代、ファゴットの居場所がないことに悩んでいた智秋に声をかけ、孤独だった智秋を救ったことから、現在でも最も仲がいいのは智秋である。二人そろって教室管理係を担っているが、そろって仕事の出来が甘い節があり、教室使用申請書や物品使用申請書の不備をたびたび発見されては怒られている。
八代智秋〈やつしろともあき〉
16歳・男子 【低音セクション】
管弦楽部の男子部員。一人称は「おれ」。
弦巻学園国分寺高等学校男子部2年。ファゴットパートに所属し、教室管理係として活躍。指導担当はないが、同じパートの藤枝緋菜の面倒をよく見ている。高校3年でも引き続き教室管理係を務める。コンクールでの担当はファゴットパート。
中学からのファゴット経験者。高校生奏者としてはそれなりの域にあり、またファゴットそのものが経験者の少ない珍しめの楽器であることも相まって、中音の多摩北地区管弦楽団にも選抜されるなどの活躍を見せている。また、野球部の応援演奏では臨時でスーザフォンを引き受け、炎天下での演奏を繰り広げた。
三原郁斗と並ぶ、2年生男子四人組の盛り上げ担当。能天気で調子がいい。自らを「土下座芸人」と称しており、よく低音セクションの緋菜や本庄詩をからかっては怒らせ、あるいは困らせ、そのたびに土下座を決めて場を収めることを繰り返している。作中では同じ2年の茨木美琴や部長の大津はじめからも土下座を要求される場面がある。しかし土下座で済んでいるのは、智秋が日頃から信頼の回復に積極的に努めているうえ、やり過ぎのボーダーラインをきちんと認識しているからでもある。そのため、まったくの過失で詩の持ち物を壊してしまったときは、本気で嫌われるのではないかと畏怖していた。なお、女子ばかりの部活で土下座をすると良からぬものが色々と見えかねないので、土下座の時は決して本人の顔と地面以外に視線を向けないのが智秋流らしい。
中学ではファゴット奏者が他に誰もおらず、部内で孤立しかけたところを同じ部員の三原郁斗に救われた。以来、部内で一番の仲良しは郁斗である。二人そろって教室管理係を担っているが、そろって仕事の出来が甘い節があり、教室使用申請書や物品使用申請書の不備をたびたび発見されては怒られている。また、指導の場面では上記のようなふざけた姿勢を見せることはなく、緋菜の実力の限界をきちんと見極めながら適切な助言を与えている。
池田直央〈いけだなお〉
16歳・女子 【弦楽セクション】
管弦楽部の女子部員。一人称は「うち」。
弦巻学園国分寺高等学校女子部2年。ヴァイオリンパートに所属し、衣装係として活躍。指導担当はないが、3年生の引退後は松戸佐和のヴァイオリンを監修している。高校3年でも引き続き衣装係を務める。コンクールでの担当は第一ヴァイオリンパート。
ヴァイオリンを始めたのは中学以前で、足掛け5年以上のベテラン奏者である。しかし技量では1年上の上福岡洸にまったく敵わない。野球部の応援演奏時には楽器を手放し、奏者たちのフォローに回った。
2年生部員一のお洒落好きで、佐和と茨木美琴が室内楽コンクールに出場した際のドレスも監修するなどセンスが光っている。同じ弦楽セクションの春日恵とはよくつるんでおり、最近はそこに1年下の出水小萌のことも混ぜている様子。勉強はあまり好きではなく、宿題を見せろと美琴に泣きつく姿も見せる。ノリや気分だけで生きているように見えるが、実際には後輩の様子をよく見ており、『立川音楽まつり』で失敗を喫した高松里緒が部室に現れた際には率先して励ましの言葉をかけるなどの気遣いも怠らない。
吹奏楽のコンクールにヴァイオリンは参加できず辟易としてきたため、滝川菊乃の立てたコンクール参戦計画には真っ先に賛同を示した。直属の先輩である洸のことは、気軽に絡める存在として恵ともども仲良く接し、時にはからかいやぞんざいな扱いも見せる。が、コンクール本番の終了後には洸の胸で嬉し泣きするなど、高い実力を持つ親切な先輩に対して大きな信頼を持っている。
春日恵〈かすがめぐみ〉
16歳・女子 【弦楽セクション】
管弦楽部の女子部員。一人称は「わたし」。
弦巻学園国分寺高等学校女子部2年。ヴィオラパートに所属し、衣装係として活躍。指導担当はなし。高校3年では美化係のリーダーを務める。コンクールでの担当はヴィオラパート。
中学以前からの経験と高い演奏技術を持つ、管弦楽部唯一のヴィオラ奏者である。のんびり練習しているようでありながら、陰では中音の多摩北地区管弦楽団にも選抜されるなどの活躍を見せている。野球部の応援演奏時には楽器を手放し、奏者たちのフォローに回った。
吞気の一言に尽きる性格。なんとなく勉強して、なんとなく練習して、なんとなく駄弁って帰る気分屋のような生活習慣を繰り返しており、似たような生態を持つ弦楽セクション仲間の池田直央とはとびきり仲がいい。試験勉強に関しても気分屋のため、毎度のように直前になって徹夜勉強に陥っており、自らを「一夜漬けマスター」と称して寝不足な茨木美琴にアドバイスを施したこともある。食欲旺盛で、場所や時間も選ばず頻繁に「お腹すいた」と発言する上、2年生の仲間と帰宅する時には決まってコンビニのアイスを頬張り、さらには部内でたびたびお菓子パーティーを開いては教室をゴミで汚している。あまりにもゴミの散らかし方が目に余ったため、「現二年生の誰よりも教室を汚している主犯だから」との名目で美化係のリーダーに指名されたが、これは実際には後輩に対する人当たりの良さを買われた結果の人員配置だった。なお、空腹の状態で演奏すると音が弱くなるらしい。
指導対象の後輩がいない分、1年部員のことは広く大事に目をかけている。また、その吞気な言動がしばしば剣呑な空気を破壊することから、滝川菊乃とは違う意味で部内のムードメーカーでもある。吹奏楽にヴィオラは参加できず、それゆえ部活動でのコンクールへの出場経験を持たないため、滝川菊乃の立てたコンクール参戦計画には真っ先に賛同を示した。
実家が裕福で、家には大型の楽器をも搭載可能な乗用車がある。そのため、コンクールの大型楽器輸送には春日家の両親が協力している。
戸田宗輔〈とだそうすけ〉
16歳・男子 【弦楽セクション】
管弦楽部の男子部員。一人称は「俺」。
弦巻学園国分寺高等学校男子部2年。チェロパートに所属し、楽器運搬係として活躍。指導担当はなし。高校3年では楽器運搬係のリーダーを務める。コンクールでの担当はチェロパート。
管弦楽部唯一のチェロ奏者である。実力面で特にとびきり秀でているわけではないが、貴重な低音弦楽器要員として部内では重宝され、中音の多摩北地区管弦楽団にも選抜されるなどの活躍を見せている。また、野球部の応援演奏では臨時でトロンボーンを引き受け、慣れないながらも炎天下での演奏を繰り広げた。
茨木美琴と並ぶ2年生随一の無口。大型楽器のチェロを悠々と支える肩幅の持ち主で、口を開いて意思表示をすることも少なく愛想も悪い。そのため、高松里緒からは当初ひそかに警戒されていた。しかし実際には意思表示がないだけで、人並み以上に周囲の様子を観察し、必要とあらば助言や手助けに回っているほか、不器用ながら気遣う言動を見せることもある。「自分が加われば曲選択の幅が広がる」という理由から、滝川菊乃の立てたコンクール参戦計画にも賛同し、参加の意思を固めていた。
楽器運搬係の上司と部下という関係もあって、3年の芽室徳利とは特に親しく、祭りの際に二人で射的に挑む姿を1年生に目撃されている。またノートの貸し借りを頼まれるなど、同期男子の八代智秋たちとの仲も良い。
藤枝緋菜〈ふじえだひな〉
15歳・女子 【低音セクション】
管弦楽部の女子部員。一人称は「私」。
弦巻学園国分寺高等学校女子部1年A組。ファゴットパートに所属し、1年生の学年代表と楽器運搬係を兼任。高校2年では楽譜管理係を務める。コンクールでの担当はファゴットパート。
中学からのファゴット経験者である。ファゴットそのものが経験者の少ない珍しめの楽器であることから、中音の多摩北地区管弦楽団にも選抜されるなどの活躍を見せている。また、野球部の応援演奏では臨時でスーザフォンを引き受け、炎天下での演奏を繰り広げた。癖っけのあるボブカットの髪が外見上の特徴。
ちょっぴり弱気で周囲に流されがちな、困惑顔の似合う常識人。他の1年生たちからの圧倒的な推挙で学年代表に選ばれたが、実態は「押し付けられた」に過ぎないことを自他ともに認めている。しかし本人は文句も言わず、学年代表らしく1年生たちの間を漂う様々な問題に対応しようと奮闘中である。
周囲への押しが弱いことから、中学の吹奏楽部の楽器決めでは不人気のファゴットを押し付けられ、ひとりぼっちの境涯に苦しんだ過去がある。そのため、同様に孤独を味わっている仲間(ヴァイオリンの出水小萌など)に特にシンパシーを感じ、仲良くなろうと近づく傾向がある。同じ1年生たちの中では考え方が大人びている方で、高松里緒に対しても当初からあまり偏見を持たず、むしろ関心をもって接しようとしていた。誰ひとり里緒に声をかけない場でもあいさつの言葉を交わそうとし、自分たちとの関係に迷う里緒に「友達だよ」と語りかけるなど、一貫して親しげな態度を見せている。合宿中、花音を除く1年生たちの中で真っ先に里緒と打ち解けたことは、その後の里緒の孤独の解消に大きな効果をもたらした。
よくも悪くも素直であり、ポーカーフェイスなどがまったくの苦手。誰かとゲームをやって一番に勝てたことが人生で一度もない。真面目な子であるので宿題などは早々と終わらせるタイプであり、勉強会の場でも雑談にかまけることなく、苦手な個所を教え合いながら律儀に勉強に取り組んでいる。また、真面目っぷりが高じて変なことを口にし、周囲を驚かせることもある。同じパートの八代智秋からは真面目っぷりを特に面白がられ、セクハラぎりぎりの台詞でよくからかわれているが、迷惑に感じつつも嫌悪感を抱くには至っていない様子。
滝川菊乃たちの立てたコンクール参戦計画には当初かなり困惑していたものの、「智秋と小萌と里緒がいるなら大丈夫」として参加の意思を表明するなど、終盤ではコンクール組に大きな信頼をかけている。
白石舞香〈しろいしまいか〉
15歳・女子 【木管セクション】
管弦楽部の女子部員。一人称は「わたし」。
弦巻学園国分寺高等学校女子部1年C組。フルートパートに所属し、美化係として活躍。高校2年では衣装係を務める。コンクールでの担当はフルートパート。
フルートを始めたのは高校からで、それまでの楽器経験は小学校時代のキーボードのみ。中学では合唱部に属しており、肺活量に関しては楽器経験者並。同じ中学出身の友人・鴨方つばさがフルートを吹いており、彼女に憧れて管弦楽部に入部した。念願かなってフルートの担当になり、滝川菊乃と長浜香織の世話になりながら腕を磨いている。
合唱部の厳しい活動の中で高い協調性を培ってきた、社交的で好奇心旺盛な少女である。青柳花音や藤枝緋菜、浪江真綾など部内の幅広い1年生と交流しつつ、暗くて口数の少ない高松里緒に対しても当初は高い関心を持ち、自らの中学での経験を話して聞かせながら同時に里緒の話を聞きたがるなどして親交を図った。しかし、いくら話しかけても里緒が頑として応じず、心の壁を取り払う様子を見せなかったことから、作中中盤では心を開かせることを諦め、苛立ちを深めてしまう。ただし内心では花音の説得もあって、里緒との心の交流を完全に諦めきれていなかった。そのため、合宿中に里緒と対話を重ねてわだかまりを解し、傷つけたことを謙虚に謝罪し、それ以降は里緒と一気に親しくなってゆく。
里緒たちの奮闘を見ていたことからコンクールに関心を持ち、コンクール組への加入を申し出た。実力不足を自主練で補おうとするなど相応の気概があるが、夢中で練習しすぎて夏休みの宿題を忘れるなどのヘマもやらかす。合唱部時代にも早朝練を多く経験しているため、朝早くの練習には抵抗がない。緋菜と同様、素直な子であることからポーカーフェイスが苦手で、ババ抜き中にジョーカーが何度も舞香の手元に集まるなど、ゲームの運からは完全に見放されている。口が悪いのが玉に瑕だが、場の空気を乱してでも伝えたいことを伝えようとする勇敢さもある。
興味の向くままに物事に取り組んできたことを自覚しており、将来の自分の姿がまったく見えていないことを秘かに不安に思っている。豊かな好奇心を持って誰とでも仲良くなり、付き合い方の難しい里緒とも積極的に親しくなろうとした姿勢が3年生の目に留まったことから、2年では下級生の面倒を見ることのできる菊乃のような立ち回りを期待されている。
大館光貴〈おおだてみつき〉
15歳・男子 【木管セクション】
管弦楽部の男子部員。一人称は「俺」。
弦巻学園国分寺高等学校男子部1年A組。アルトサックスパートに所属し、楽器運搬係として活躍。高校2年では教室管理係を務める。
中学以前の楽器経験はない。入部に当たってはサックスを希望し、松戸佐和の指導の下でアルトサックスを手に取ることとなった。木管セクション10人の中では唯一の男子で、男性不信の高松里緒からはひそかに遠巻きにされている。作中終盤では順調に練習も積み、中学生たちに演奏を体験させたり自ら吹いて聴かせることができるほどに成長している。
1年生の中では新富忍と並ぶ無口。二人ともサックスパートであり、さらに上級生の大津はじめも口数の多い人間ではないため、サックスパートは全体的に物静かである。指導担当の佐和には心を開いており、気持ちとしても佐和に同調しやすい。
ソーシャルゲームの重課金勢で、祭りの場ですらガチャを引いて周囲に生温かい目を向けられている。ただし、三人しかいない1年生男子同士の仲は良好である。
新富忍〈しんとみしのぶ〉
15歳・女子 【木管セクション】
管弦楽部の女子部員。一人称は「私」。
弦巻学園国分寺高等学校女子部1年C組。テナーサックスパートに所属し、楽器運搬係として活躍。高校2年では写真係を務める。
中学以前の楽器経験はない。入部に当たっては管楽器を希望し、大津はじめの指導の下でテナーサックスを手に取ることとなった。
寡黙。1年生の仲間たちと行動を共にする場面は多く、誰かに話しけられれば普通に応答するが、自分の意見や感情を自発的に発信することはほとんどない。その実態は極めてマイペースなのんびり屋であり、言いたいことがあっても黙って様子見するタイプである。マイペースであまり他人に興味がない反面、誰か一人を差別することもなく、高松里緒に対しての態度も一貫して「なんとなくすごい」程度だった。そのため、作中では一度も白石舞香たちのアンチ里緒発言に便乗している様子がない。さばさばして見えるが、管弦楽部のことは居心地よく思っている。また、マイペースに気ままな距離感で周囲と付き合う姿は、里緒からはひそかに憧れられてもいる。
スマホのリズムゲームが好きで、練習の合間や合宿中の自由時間さえゲームに費やしている。勉強会を開いても一人だけ居眠りをしているなど学習意欲は高くないが、工夫に頭を使うのは得意な様子。得意技はポーカーフェイスで、1年生女子七人のババ抜きでは圧倒的な実力を見せつけた。人と話すのは元来あまり好きではない。
浪江真綾〈なみえまあや〉
15歳・女子 【金管セクション】
管弦楽部の女子部員。一人称は「私」。
弦巻学園国分寺高等学校女子部1年A組。トランペットパートに所属し、楽器運搬係として活躍。高校2年では楽器管理係を務める。
中学以前の楽器経験はない。入部に当たっては金管楽器を希望し、福山丈の指導の下でトランペットを手に取ることになった。ただし、指導担当の丈自身があまり上手な奏者ではないことから、よく二人そろって指摘や注意を受けている。
至って直情型の少女である。思ったことや感じたことを素直に口に出してしまうため、結果的にそれが悪口になって相手との関係を悪化させることもある。気の合う白石舞香や青柳花音たちとは仲を深める一方、臆病で心を開こうとしない高松里緒は真綾にとっては理解不能な存在であり、やがて親しい舞香が悪口を言い始めるのに従って里緒への心象も悪化していった。しかし勢いで悪口を言ってしまったことを内心では引きずり続けており、作中後半では舞香とともに里緒に謝り、関係の修繕を図っている。
経験者上がりの藤枝緋菜や里緒たちと比べ、実力面で明らかに劣っていることから、同じようなコンプレックスを抱える丈には早い段階からシンパシーを覚えていた。丈とは頻繁に夕食に行くほど仲が良く、作中後半では「丈がいなかったらすぐに練習に飽きる」とまで言わせるほど親近感が高まっていた。その後はついに恋心を抱くまでになり、終盤には管弦楽部の部員六人を巻き込んだお膳立ての末、クリスマスイブの夜に自ら丈に告白してカップルになっている。
瀬戸唐也〈せととうや〉
15歳・男子 【金管セクション】
管弦楽部の男子部員。一人称は「おれ」。
弦巻学園国分寺高等学校男子部1年E組。ホルンパートに所属し、楽器運搬係として活躍。高校2年では教室管理係を務める。
中学以前の楽器経験はない。中学時代は野球部に属しており、試合の応援に来た吹奏楽部に心を惹かれ、管弦楽部を選んだ。入部に当たっては金管楽器を希望し、三原郁斗や生駒実森の指導の下でホルンを手に取ることとなった。作中終盤では順調に練習も積み、中学生たちに演奏を体験させたり自ら吹いて聴かせることができるほどに成長している。
自他ともにルックスのよさを認めるイケメンである。しかしながら可愛いグッズに目がないなど趣味が子どもっぽく、さらにその趣味を周囲に盛んに開陳するため、部内ではもっぱら残念イケメンとして認識されている。かっこいい高校生として振る舞いたいが、特に後輩や異性の前では調子に乗って失敗しがちで、管弦楽部の女子勢からはたびたび白い目で見られている様子。
その他の場面では常識人として振る舞う姿が多い。
出水小萌〈いずみこもえ〉
15歳・女子 【弦楽セクション】
管弦楽部の女子部員。一人称は「わたし」。
弦巻学園国分寺高等学校女子部1年B組。ヴァイオリンパートに所属し、楽器運搬係として活躍。高校2年では写真係を務める。コンクールでの担当は第二ヴァイオリンパート。
中学以前からのヴァイオリン経験者である。同じパート内に上福岡洸のような上級者がいるため、実力としては大きく目立たないが、貴重な弦楽器として上級生たちからは可愛がられている。野球部の応援演奏時には楽器を手放し、奏者たちのフォローに回った。
考えていることのよく分からない不思議ちゃんで、指導熱心な滝川菊乃にすら「意欲の引き出し方が分かんない」と言わしめるほど。非常におっとりしたしゃべり方をする。ヴァイオリン奏者のため吹奏楽部に参加できず、中学で居場所に乏しかった経験を持ち合わせており、似たような経験を持つ藤枝緋菜と特に仲が良い。滝川菊乃たちの立案したコンクール参戦計画には強引な勧誘を受けてメンバーに加わったが、それまで学校単位でコンクールに出た経験がなかったことから、むしろ小萌自身は参加するのを楽しみにしている。
合宿初日の夜、緋菜と高松里緒の会話を布団の中で盗み聞きしており、里緒に対してもしっかり関心を持っていることが窺える。新富忍と同様、考えていることが表に出にくい性格をしているが、ババ抜きは忍の方が上手だった。ひとりで暇になると好き勝手にヴァイオリンを弾いて遊ぶ癖がある。
川西元晴〈かわにしもとはる〉
15歳・男子 【打楽セクション】
管弦楽部の男子部員。一人称は「俺」。
弦巻学園国分寺高等学校男子部1年C組。パーカッションパートに所属し、楽器運搬係として活躍。高校2年でも引き続き楽器運搬係を務める。
パーカッションを始めたのは高校からだが、小学校時代にドラムの演奏経験がある。中学では水泳部に属しており、肺活量や体力に関しては1年生の中で右に出る者はいない。決まりきったリズムを美しく打ち鳴らすパーカッションに憧れ、ドラムの演奏経験があることも相まって打楽器をやりたいと希望。芽室徳利の指導の下でスティックを握ることになった。作中終盤では順調に練習も積み、中学生たちに演奏を体験させたり自ら叩いて聴かせることができるほどに成長している。
陽気で平和的な少年。元運動部同士であることから青柳花音との仲が良く、体力作りのランニングでは毎度のようにデッドヒートを繰り広げている。高松里緒に対しても当初から特に偏見なく接している上、白石舞香たちが里緒に悪口を言い始めて1年生全体がアンチ里緒に傾きつつある中でも「原因も分からないのに音が出なくなったらパニクるに決まってる」と発言して里緒に理解を示すなど、徹底して中立姿勢を崩していない。花音や西元紅良以外では初めて、里緒のことを「友達」と呼んだ人物でもある。
指導担当の徳利も元水泳部員であり、師弟関係とすら呼べるほどに意気投合している。文化祭の体験演奏会では男子中学生たちの関心を一手に受けるなど、総じて男子受けは良好な様子。
飯塚茜〈いいづかあかね〉
18歳・女子
管弦楽部の元部員。
大津はじめの1つ上の代で、高校3年時には部長を務めた。
はじめや滝川菊乃のように力強いリーダーシップで部を牽引していくタイプではなく、部員たちに接する姿は優しくて大人しい。彼女のもとで活動していた昨年の10月、文化祭の演奏中に管弦楽部は芸文附属の生徒から侮辱を受け、この出来事が菊乃たち2年生にコンクールを目指させるきっかけとなった。
▶▶▶次回 登場人物紹介【Ⅲ】 弦国女子部1年D組・野球部・教師