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正義の剣を振りかざし



 やばい。もう手に力が入らない。


 周囲に広がる夥しい程の肉塊と赤黒い液体は、草木の緑すらも覆い隠し…

『ーーーーッ!!ーーーーーーーーッ!!』


 ちくしょう。なんつってんのかわかんねーんだよ。


 粘性を持った液体を踏みしだく音が聞こえる。

 死が、やってくる。

 国を守ると。家族を守ると。…その為には死しても良いと。

 そんなケツイはとうの昔に掻き消えて、俺のココロは浅ましくも生を求めていた。


 そんな俺を知ってかしらでか、身体は四肢の先から急速に寒くなりはじめ、それに反して頭は煮えたぎるように熱くなってくる。


「し…にタぅなぃ…」


『こいつ生きてやがる!!クソが!!死ね!!』


 俺は何の為ーーーーーー...。


 全てが暗転し。なにもわからなくなった。





 かくして1人の名もなき若者が命を落とした訳だが、なんのことはない。別段珍しいことではないのだ。

 かの国が我らの国に攻勢を掛け始めてはや5日。


 ここは、地獄だ。






 所変わって指揮所の中、各部隊から悲鳴にもにた伝令が舞い踊っていた。


「伝令!!303地点にてディバイン伯戦死!!付近の各中隊が崩壊寸前でございます!!」

「3号待機部隊を出して穴を塞いでください」


「伝令!!58地点よりリン伯が少数の重蒸気戦隊のみで吶喊を敢行!500番台地点が持ち直しましたが兵数が足りません!!」

「本隊の手勢より10単位分の戦力と指揮官を早急に捻出して送りなさい」


「伝令!!600番台地点のカルロス伯より戦闘単位の損耗が危険域を超えたそうです!」

「現状戦線が伸び切っている600番台地点に送れる予備戦力はありません。部分的に戦線を整理します。目標は60番台に防衛線を新たに構築。副官、任せます。」

「了解!!」


「伝令!!100〜900番台地点の制空権が均衡状態と判断!!」

「本国の航空戦隊が届いたうえでも均衡止まりですか…緊急時特別法に基づき航空戦隊の指揮権をこちらの指揮所に移譲し戦術に組み込みます。空軍指揮所の文句は黙殺してください」


「伝令!!」ーー「伝令!!」ーーー。



 刻一刻と状況は悪くなる。5日でこれだ。堅守の北方軍が聞いて呆れる。

 我々が、かの国でも突破は不可能と高をくくっていた肝いりの防衛戦略は圧倒的物量の前には全くとは言わずとも無力だったようで、局所的な勝利はあれど面で押されるというジリ貧の戦いが続いていた。


「本国では各方面の部隊から戦力を抽出し、再編作業を行っていると共に緊急の徴兵も行っているようですが…」

「遅すぎます。戦力の大規模な補充がない限り持ってあと2週間ですね。」

「そんな…」


 北方の防衛戦略とは、言うなれば用兵の指南書だ。最適化された兵の扱い方は前時代の個を重視する戦争の様式を一変させる。新兵すらも立派な駒として扱えるようになる。なるほど確かに有用なものなのであろう。…用いるべき兵がいるならば。


 現在の北方軍にとって、兵力不足はかなり深刻な問題であった。


 この状況に至るまで様々な誤算があった。


 現在の時節は秋。穀物を収穫し、冬に備えなければならない時期。特に北方に住まう人々にとってはとてもとても大切な時期。

  職業軍人も一時家元に帰り農耕に励む。年間を通して確かに今の時期は兵力が少なくなっている時期ではある。


 だがそれでも勿論、常備軍は一定数北方軍に存在する…はずだった。しかし戦端の即応に失敗する。

 軍の定期編成の時期が被っていたのが原因だった。部隊の管轄、人事、兵器の点検etc...。突如の攻勢に対して対応すべき部隊の指揮権の掌握から手間取り、結果として遊兵をかなりの数出してしまい、そして狩られた。

 定期編成は最高機密であるはずだったのに、だ。


 そして1番の誤算は、かの国の雲霞の如き兵力だ。つまり全くの戦術的奇襲であった。この時期はかの国にとっても軍事行動を起こしにくいはずだった。資源は豊富にあっても土地は痩せており冬も厳しい、我々の国とは正反対のような国。だからこそ我々の国の北方の穀倉地帯は喉から手が出るほど欲しい土地であったことは間違いない。実際小競り合いはよく起こっており緊張が高まっていたことは事実だ。だがしかし、だがしかしである。まさかこのタイミングでここまでの規模で…。


  完全に虚をつかれたにしろ、この規模の軍事行動を掴めなかった諜報部はさぞや本国で叩かれていることだろう。

 また、かの国の戦争に特化した在り方、それは練度やドクトリン、諜報力しかり、本当に恐ろしい。北が落ちればこの国は滅ぶ。だがこのままでは確実に敗れる。


「もはや規定通りに1~9地点を絶対防衛線として遅滞戦を仕掛ける以外にありません。数でみればかの国の損害の方が大きい。徹底的に出血を強いましょう。」


 こんな場当たり的な作戦しか立てられないのが堪らなく悔しい。

 何はともあれ兵力が足りない。絶対の信頼を寄せていた防衛戦術が、麻痺寸前もいい所だ。


 なにか奇策を打とうにも、兵力や現場の指揮官すら足りない。指揮所に詰めていた軍師すら現場に駆り出される始末だ。指揮所の人間は開戦時より半数にまで数を減らしていた。


 また今まで目を背けていたが、本国からの増援は到底間に合わないことは明らかだ。何か…なにか起死回生の一手は…


 …ふとこの防衛戦術の理念を思い出す。


ーー最適化された兵の扱い


ーーー個を重視する戦争の様式を一変




  …発想を転換するならば。


「…あるいは、圧倒的なまでの“ 個 ”」


 …。

 自分で考えておきながら、乾いた笑いがでた。もはやそれは神頼みに等しい。神は、人を助けない。

 …だが人の成すことならば?脳裏にとある好々爺の顔が浮かぶ。あの人ならば…なにか……。

 …全く私は何を考えているんだ。()()()()()()だと言うのに。

 私はここまで追い込まれていたのか。だが休む暇などない。1度思考を切り替えよう。今この瞬間も、前線では我が国の兵士達が斃れ続けている。


「伝令!!ーーーー」


 …また…伝令か、今度はどんな凶報か。

 目をやると、今まで死んだ魚の目をしているものの気丈に振舞っていた伝令役の相貌が遂に崩れかかっている。これは余程の凶報か。


「ーーーーー本国から至急との事!!30秒後に敵陣後方が吹っ飛ぶので注意されたし!!」


「…はぁ??」


 思わず間抜けな声が漏れた。直後…


『北方軍の皆さんこんにちは!!蒸気駆動飛行スーツ及び携行型新兵器の試験運用を兼ねて参りました!!なお指揮権は技術局にありますので緊急特例法に基づく指揮権委譲は出来ません!!では!!』


  快活な少女の声が空より響き渡る。慌てて指揮所から出て空を見上げると、そこには一条の虹が浮かんでおり、その先に奇妙な筒を抱えた人影が空を舞っていた。



『拡声術式カット。エンライト鉱よりエネルギー充填…。…ん?…暑っついてか熱っつい!!くそじじいパイロットのこと考えてなかったな!?てか蒸れる!!熱い!!

…あああもういい!!目標敵陣後方!!…チャージ70%…発射ッ!!』



ーーーーーそして空中で静止したかと思うと、その人影は不意に何条もの虹を噴き出し始めた。それは、とても幻想的な光景で。そして次の瞬間、



 戦場に光が溢れた。








  これから先、軍事史だけでなく世界の重要な歴史として語り継がれるであろう事件。技術的特異点が現れた瞬間。一瞬にして当時最強の名を欲しいままにしていたヤーベン帝国軍を文字通り蒸発させた一条の光。

  自国からは「救国の女神」とよばれ、他国からは「虹の悪魔」と呼ばれることとなる少女の数奇な運命は、この瞬間をもって大きく動き始めた。






『よっしゃチャージ70%でも戦果は十分じゃない!さて実験は成功ってことで帰還しますか〜……あれ…動力源接続不良(スチームゲインロスト)??えっつまり??

ぉぉぉお落ちる落ちるぅぅぅぅぅぅうう!!』



 数奇(笑)な運命が動き始める。

ノリと深夜テンションと明日への希望を抱いて書きました。もう日が明けてますね。おはようございます。因みに今日はバイトです。アハハ。

…蒸れて…体に服が張り付いてラインがくっきりと…んで少し透けてたりして…

そんなおんにゃのこを書きたかったのに何がどうしてこうなった(ノシ 'ω')ノシ バンバン

スチームパンクのジャンルをこんな下賎な動機で使ってしまいすいません。全ては蒸れたおんにゃのこの為でした。書けてないけど。

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