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ヤンデレ妹に死ぬほど愛されて閉じ込められちゃうCD

作者: まとりーる

思ってたのとは違う話になると思います


 ねえ、お兄ちゃん


 あの女の人、誰なの? まさか彼女じゃないよね?


 ……ふーん


 お兄ちゃん、嘘ついたんだ


 約束してくれたよね? 「ずっと一緒にいる」って。「死ぬまで一緒だ」って


 私はお兄ちゃんのこと愛してたのに! 私にはお兄ちゃんしかいないのに! お兄ちゃんは私を裏切るの!?


 違わない。お兄ちゃんは私を裏切ったんだよ。嘘つき。嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき!


 ……でも、しょうがないよね。お兄ちゃんも人間だもん。間違えちゃうことだってあるよね


 だから今回は許してあげる。その代わり、もう私のそばを離れないようにお兄ちゃんを繋ぎ止めておかなくちゃ


 え? だって当たり前じゃない。お兄ちゃんと私は結ばれる運命なんだから


 ……ねえ、なんで嫌がるの? やっぱり私のことが嫌いなの? 私じゃなくてあの女を選ぶの!?


 ……もういいよ


 お兄ちゃんはすっかり毒されちゃってるんだね。気付いてあげられなくて、ごめん


 もう、こうするしかないんだね


 大丈夫だよお兄ちゃん。殺したりはしないから

 

 これはお兄ちゃんのためなの。お兄ちゃんは私だけ見ていれば、それで幸せなんだから……!



 バックステップで大きく下がる。俺がさっきまでいた場所には包丁が振り下ろされていた。


 「避けないでよ!」


 初撃は何とかやり過ごしたが、寝室の出口は妹がふさいでいる。よって窓から逃げるしかない!


 「……無駄だよ」


 飛び蹴りでガラスを割ると、ちょうど落下地点付近に妹がいた。

 これが妹の『Espcial Ability(通称EA)』、No.135『複製リプロデューション』だ。妹は、知能、運動能力、その他もろもろが本人とまったく同じ分身を作りだすことができる。

 

 落下した俺を受け止めきれず、妹Bは俺の下敷きになる。

 妹Aが割れた窓から飛び降りてくるが、玄関前にある自転車に俺が乗る方が早い!


 「ぐわぁっ!!??」 


 そのまま全速力で駆け出して家の前の道路に飛び出した瞬間、俺の左腕に激痛が走る。

 自転車ごと倒れる俺の視界には妹の姿。そして俺の腕には包丁が突き刺さっている。これを投げられたのか!


 いや、問題はそこじゃない。


 「三人目、だと……」


 俺の目に狂いはなかった。痛みをこらえて立ち上がると、確かに三人の妹が同時に存在している。


 「まさか、『第二段階セカンドステージ』!?」


 「逃げないで、お兄ちゃん」


 「大丈夫、さびしくないよ」


 「だって私が、私たちがいるから」


 「「「今までの3倍、愛してあげる」」」

 

 まさか、ここまで成長が早いとは……!


 「流石は俺の妹だ! お兄ちゃんは嬉しいぞ!」


 だが甘く見るなよ。『学園4位』の力、見せてやる。


 「そう、それでいいの」


 「こっちに来て、お兄ちゃん」


 「私のそばにいて」

 

 「まずはお前からだ!」


 一番前にいた、妹Cの右腕を掴む。


 「消えた!?」


 「そんな、だって、お兄ちゃんの『EA』は……」


 これが俺の『EA』、No.099『逆行リトログレイド』。触れた物を「1時間前」の状態に戻すことができる。


 「『第二段階セカンドステージ』に辿り着いたのがお前だけだと思うなよ!」


 そして次のステージに進んだことで、効果の対象が拡張された。今まで「無生物」にしか使えなかったこの『EA』は、「生物」に対しても使えるようになったのだ。

 同じものに対して使う場合は3時間のインターバルが必要になるが、妹の『複製』については問題ない。『EA』で作り出されたもの一つ一つが「別の物」として判断されるためだ。

 妹Cが消えたのもそういう理屈だ。1時間前、妹は『EA』を使っていなかったのだから。


 「次はお前だ!」


 今度はさっき転んだせいで服が汚れている方、つまり妹Bを1時間『逆行』させる。

 これで、妹は残り1人だ。



 どうして? どうしてこうなるの?


 私は、お兄ちゃんを幸せにしてあげたかっただけなのに……!



 ……ああ、もういい。もういいよ


 こんな世界、いらない


 次はもっといい世界にする。私が、私の手で


 『複製リプロデューション』、『第三段階サードステージ


 お兄ちゃんも、次は間違えないでね?



 突然の眩い光に思わず目を瞑る。

 ようやく視界が戻ってくると、俺は自分が家の中にいることに気付いた。


 「一体、何が……?」


 見慣れた寝室。さっき俺が割ったはずの窓も傷ひとつ見当たらない。


 「お兄ちゃん、ちょっといい?」


 考えていると妹の声が聞こえた。そして妹は返事も待たずに部屋に入ってくる。


 「ねえ、お兄ちゃん」



 「あの女の人、誰なの? まさか彼女じゃないよね?」


 全身に鳥肌が立つ。俺は今、自分の身に何が起きたのか、妹が何をしたのかを完全に理解した。

 

 こいつは世界を、世界そのものを『複製』したのだ。『第三段階サードステージ』に足を踏み入れた妹は、そんな神に等しき力を手に入れたのだ。


 …………面白いじゃねえか。

 いいとも、やってやる。

 妹よ、お前の愛は間違っている。それは肉親に抱いていい感情じゃない。俺がそれを教えてやる。


 神であろうと何であろうと、俺は逆らう。逆らい続けてみせる。

 



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