1話
今回はVR要素はほとんどありませんね(笑)
私は悪くない。私は悪くない。そう心の中に暗示をかける。
ふと目を動かすと、二人の美しい少女が正座をしている。
片方の少女の瞳は海のように青く、髪は黄金に輝く金色で後ろで結びポニーテールにしている。
もう一人の少女の瞳は火のように赤く、髪は白く輝く銀色でさらさらとしたロングヘアーである。
どちらの少女も綺麗に顔も整っている。
このままファッションも良ければ完璧だろう。
しかし、金髪の少女は頑丈そうな鎧を着こなしている。正座のためにブーツは脱いでもらったが。
一方銀髪の少女は謎の魔法陣のようなものが描かれたローブを羽織っている。
そんな事はどうでもいい。とりあえず私はこれまでの経緯を振り返ってみた。
確か私は毎日楽しくプレイしている『Freedom on-line』の超大型アップデートがあったのだが、
それが異常なほど長いためタイマーをセットして仮眠をとっていた。
そんな時に彼女たちが突然現れ大騒ぎを始めたのだ。
当然私は眠れるわけがない。そこでこの二人を黙らせ、持ち物を没収し正座させた。
そして現在に至る。
ところで不思議なのは彼女たちの持ち物と騒ぎを起こしていた時に言っていた事だ。
金髪の少女が持っていたのは光輝く剣である。所々に金の装飾があり、持ち手と刃の間には赤い宝石が埋まっている。
銀髪の少女が持っていたのは禍々しい杖だ。これにも魔法陣のようなものが描かれていて、とても邪悪な雰囲気を持っている。
一方で彼女たちは「スキルが発動しない」というような主旨の事言っていた。
『スキル』とこの不思議な剣と杖から一瞬、異世界からやってきた少女たちと考えてしまったがライトノベルの読みすぎだろう。ただの中ニ病の可能性もある。まあ中ニ病のような私が言えた事ではないが。
とりあえずゆっくりと尋問をしていこう。警察?そんなものは知らん。
そうして私は口をゆっくりと開いた。
「えーと、あなたたちの名前は?」
まず金髪の少女が答える。
「わ、私は勇者です!勇者アンジュと申しまちゅ!」
すると銀髪の少女が、
「勇者よ、怖じ気付いたのか?舌を噛みおって。」
「なんだと!」
「ほらほら、とりあえず静かに!」
「「は、はい」」
てか、二人とも普通にビビっているじゃん。そんなに私は恐い顔をしているのだろうか。
それは一旦置いといて、銀髪の少女の名前を聞かなくては。
「では、そちらの名前は?」
「我が名は魔王ロザリーじゃ。」
「ねぇ、すっごいガクガク震えてるけどどうしたの?もしかして怖じ気付いちゃった?魔王なのに?」
「な、こ、、これはただの武者震いだ!」
「静かに!」
「「は、はい」」
何回やるんだこのくだり。まあ金髪の方がアンジュで銀髪の方がロザリーね。
どんどん質問していかないと。
「ではあなたたちの出身地は?」
「我は魔族領北端のゼルクじゃ。」
「私は人族領南東にあるディバインです。」
聞いたことのない地名が出てきたが、聞いたところで意味がなさそうなので次の質問に移る。
「この剣と杖は何?」
「えっと、この剣は光の女神から託されたこの世の全てを切り裂く事ができると言われている剣で、『アナザーソード』と呼ばれています。」
「我のこの杖は魔王家に代々受け継がれている物で『魔王杖テレポート』と呼ばれていて、自分の好きな場所に転移する事ができるのだ。」
また謎の単語が出てきた。もういい。そこは突っ込まないようにしよう。
その後も質問を続けていったところ、様々な事が分かった。
彼女たちが暮らしていたのは『マギアクシズ』と呼ばれている世界。
そこでは長年人間と魔族が戦争をしているらしい。
また今日も戦いを行なっていたようで、
ついに人間が魔族を追い詰めアンジュはロザリーと一騎打ちをすることになった。
お互いに互角の戦闘をし、その後二人同時に大技を放ちぶつかり合う。
その瞬間、目を開けていられないほど激しい光が彼女たちを襲った。
そして気がついたらここにいたらしい。
ちなみに『スキル』というのは『神』から与えられた特殊な力らしく、
マギアクシズで暮らしている人はみんな使えるようだ。
『スキル』は条件を満たせば手に入れる事ができる他、
『スキルポイント』というものを消費すれば覚えられるそう。
『スキルポイント』は『レベルアップ』によってもらえるらしい。
『レベルアップ』は『経験値』が溜まると起こるようで、
『経験値』は特定の行動で溜まるそう。
特定の行動とは、モンスターを討伐したり新たに物を作成したりすることらしい。
しかし、ここにいた時にはスキルが一切使えなくなってしまったみたいだ。
『マギアクシズ』はまるでゲームのような世界。
謎が謎を呼ぶ。
アンジュとロザリーは本当に異世界からやって来たのではないかと考えてしまう。
なぜなら家には鍵がかかっているし、窓から侵入してきたとしてもここは二階だから何かしら通報やらあるだろう。それに、窃盗犯ならこんな格好や騒ぎを起こさないだろうし。
さらには、彼女たちは嘘をついているように思えないからだ。
単なる中二病なら設定が甘いため、簡単にボロが出るはずなのに出ない。
という事は本当に──
「あ、あの足が痺れて、」
やば、二人をずっと正座させたままだった。
「ど、どうぞ楽な座り方で。」
「それと、あなたのお名前は?」
するとそれに便乗するようにロザリーも、
「そうじゃ!我にだけ名乗らせて置いてお主だけ名乗らないとは!」
そういえば私、名前言ってないじゃん。
「私の名前は金崎 鈴よ。」
「少し変わった名前じゃなぁ」
「変わった名前ね」
反応薄っ!