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私の仕事を紹介します  作者: 明日乃夜空
3/3

夢の理由とその終わり

最初こそ少しずつ成果の出る日々に喜びを感じていた


でも同じ日々の繰り返し


もう入社して5ヶ月が過ぎた頃のいつものカフェでの美月との話し合い兼雑談の時間


「ねぇーつむぎんってどうしてディーラーになろうと思ったのー?同じ仕事のうちが言うのも変かもだけど若い女がなら普通美容師の方に魅力を感じると思うんだけどなー」


何気ない質問、何気ない雑談だっただろう


でも美月でなければ私はこの質問に答えたりはしなかったと思う


逆に言えばこの質問に答える程に私は美月に心を許している


「私は中学の時いじめにあってたの」


「え?ちょっと話の繋がりがわからないけど言いたくないことは無理しないで大丈夫だよ?」


そう。美月はこうやって踏み込んで欲しくないことには踏み込まない


これが私には心地良い


「美月になら平気だよ。別にいじめを今も引きずっている訳じゃないんだ。ただちょっと恥ずかしいだけだからさ。いじめられてた理由は学生らしく些細な事だったと思う。私当時アトピーですごく肌が荒れていたの」


「え?嘘?つむぎん今そんなに肌キレイなのに?」


「うん。それがコンプレックスで元々明るい方でもなかったからさ。多分いじめにあっていた理由はただそれだけ。私のアトピー結構ひどくて化粧品ももちろん、ボディーソープやシャンプー身体につけるものには全て気を使っていないといけなかった。いつも行く美容室がとてもそういう肌に優しい物にこだわってるお店だったの」


「そんなにアトピーひどかったんだ」


「まぁね。優しい物を使ってたから少しずつよくなってきてはいたんだけどね。やっぱり同級生みたいに良い香りのするものや髪がサラサラになるような物でなかったからんだ」


「あーそれは確かに若いときだと結構ハンデだよねー化粧品をこれに変えただとか女子同士の話題には出てくるもんねー」


「そう。そんな時いつもの美容室でカットしてもらってた時にスーツ着た若い男の人が来たんだ」


「あっ!わかった!そのお店のディーラーだ!」


嬉しそうに美月がいう


「そう。当時はディーラーとか知らなかったんだけど先生が私のアトピーを話して私に合うような物はないかとその人に言ってくれたの。その人はそのまま私と会話していくつか商品サンプルみたいな物をくれひとつひとつ丁寧に効果や成分、使い方を丁寧に説明して忘れないようメモまでして渡してくれたの」


「へー細かい人だねーまぁそれが普通なのか細かいのかすら今の私達には判断できないけどさー」


美月も今の繰り返しは飽きてきていることがはっきりとわかるような言い方だった


「いきなり顔には使わないようにね。腕で試して大丈夫なようならちゃんと使うようにしてね。せっかく可愛い顔してるのに俺が渡したサンプルで荒れちゃったら悲しいからさなんてとか言ってくれてさ。可愛いなんて言われたのは生まれて初めてだったからお世辞でも嬉しかったのをはっきり覚えてる」


「あーつむぎんもしかしてその人に惚れた?だからディーラーになった的な?」


「んー惹かれてはいたと思う。でもそれが理由ではないかなー。その人の用意してくれた物はとても肌に合うものばかりだった。その上安静性の高いエッセンスも用意してくれたから香りもとても良いものになったの。すごく嬉しかった。私には魔法使いのように見えた」


「魔法使い?」


「うん。少しずつ肌も良くなって髪もサラサラになっていくし、エッセンスの香りがほのかに香る。私自身、美容に興味を持つようになって服とかも買うようになった。そうして自分が少しずつ変わったら周りの子もたまに話掛けてきてくれた」


紬さんの使ってるシャンプー何?いつも良い香りだから気になってたんだー


とか


紬さんすごい髪サラサラー羨ましい


「なんて声掛けてもらえたりしてすごく仲良くってのは私の性格的にうまくはやれなかったけど少なくともいじめと感じるものは私の周りからは消えたの。本当に魔法だと思ったんだ。」



「んーそれは確かに魔法だねーすごいね」


「しばらくして美容室に行った時またそのディーラーさんに会った時があったの」


「うんうん!それでそれで?彼とはどーなったの?」


美月はもう恋愛話を聞いてるかのようにワクワクとしながら聞いてくる


「緊張したけど勇気を出してお礼を言ったの。覚えてなんかないと思ったんだけどちゃんと覚えていてくれたの




うわー元々可愛い子だと思っていたけど更に可愛くなったねー

喜んでもらえて良かった。でもお礼なんかいいんだよ。僕らは美容ディーラーって言って美容室の先生を、美容室を通じてお客様を幸せにするのが僕らの仕事だからさ



その言葉はすごく胸に響いたんだ。私もこの人のようになりたいと本気で思ったんだ。」



「それが理由かぁーつむぎん全然恥ずかしい話なんかじゃないじゃん♪素敵な話だと思うよ」




「かな?まぁそれが私の初恋が振られてしまった瞬間で私に夢が出来た瞬間かな」



私は今それに近づいていけてるのだろうか?毎日繰り返し


後どれくらいこの繰り返しをやったら次に進めるのだろう?


「そかぁーでも今のままじゃその夢には難しいよね。」


美月もやっぱり今繰り返しの日常に不安があるんだろう


「新入社員としての1年の我慢か成果を認められる必要があるのかだよねー」


考えていた予想を口にする


「つむぎん、残念だけどそれは違うよ。変わらないよ。3課にいる限り、臥竜がこの課のトップでいる限りこの繰り返しは終わらないよ」


美月から申し訳なさそうに私の夢の終わりを告げらた


すぐに理解できず思わず言葉を失った


繰り返しが終わらない


ここしばらく繰り返す事に飽き飽きしていたはずなのにその言葉が頭の中でずっと繰り返されていた

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