対面する疑惑
遅くなってごめんなさい。本日より新章、更新再開します。
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はじめまして、と声をかけた瞬間にびくりと肩をゆらした。着なれないスーツが緊張を助長させる。静かな会議室にいた2人のうちの1人の釣り目の灰色の目に吸い込まれそうだと感じた。はじめて会ったときのその瞳は暗く吸い込まれてしまいそうなものだった。
「和泉くん、彼女は君の直属の後輩となる夏目くんだ。君もいろいろ忙しいだろうが、まぁよろしく頼むよ」
「はぁ」
課長が去ったのち和泉、と呼ばれた先輩はこちらを睨みつけた。
「女かよ……」
「はい、女です」
口を出すな、といったような目で見られ、グっと唇を引き締めた。
黒崎和泉。噂には聞いている天才だ。若手一の期待のホープと言われている。そのきれいな顔からは想像がつかないが誰も口を出せないほどの実績があると聞いた。操作に妥協なんてものはなく自身をおとりに使ってでも必要な操作をする男だと、うわさ好きの同期が言っていた。
「足をひっぱらせるつもりかよ」
つぶやくように言った言葉に何かを口にするよりもさきに黒崎さんはこちらをみた。
「いいか。俺は半年後から潜ることになっているから3か月だ。3か月しか面倒はみきれねぇ。残りは俺も準備があるからな」
「3か月」
「なんだ、文句でもあるか?」
「3か月で私は使い物になるのでしょうか」
「ならなかったらお前はここには必要ないな」
あっさりと言われたその言葉に、ぐっと唇をかみしめる。
「他に聞くことは」
あくまで事務的にそういったその言葉に首を振る。
「いえ」
「なら明日から本格的に訓練と指導にあたる。まず今日は―――」
自分がどこまでできるのかはわからないけれども、この人にくらいついて行こうと決めたのはもう進む以外の道が残されていなかったのかわからない。しかし、この人について行ったことに後悔をしたことはなかった。
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いつの間にか寝ていたのかと目を覚ますとべったりと汗で張り付いた服に顔をゆがめる。隣の部屋から聞こえる活動していそうな音に、有生はいつ寝ているのだと息を吐いた。
夜中の中途半端な時間に目を覚ました後悔からか、布団の中でもぞもぞとあがいては見るものの睡魔はやってはこない。
見ていたはずの夢の内容は忘れてしまっていた。
更新遅くなりました。
■黒崎和泉
志乃の先輩。志乃に多大な影響を与えた人。
■志乃
先輩と再会してどきどき
■有生
夜更かし中。




