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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
学校編
94/114

壊れた約束 3

 「なぁ志乃」

 「なに?」

 「やっぱり、お前も時間が戻っているだろ」


 とたんに今までのイラつきを隠していう真くんに目を見開いた。気づかれないように数度息を吐き出してにっこりと笑みを浮かべる。


 「なぁに?それ。違うよ」

  

 それに対して鋭い目を向ける真くんにごまかすように口を開いた。すっかり冷めたコーヒーを飲みきる。シェイクの透明なカップの横にコーヒーの紙コップを並べた。

 「どうして」

 「どうして?って聞くのか?」


優しげな目は強い目に変わり、柔らかい口調は少しだけ荒くなる。その変化に瞠目するとはぁ、と落ち着かせるように息をはいた真くんが自身の頭をガシガシと掻いた。

     

   

 「確信はずいぶんと前からあった」

 そういうとはぁと深く息を吐き出した。

  

 「俺だって従兄弟だし、お前とは長く付き合ってきた。だからこの間まではその違和感なんてものはなかった。前……これを言っても仕方ないが、お前はいつの間にか変わっていた。すぐにわかった変化は足音だった。いつの間にか足音はならなくなって、いつの間にか存在感を消していたのを覚えている。今日だけじゃないな。姉貴のプレゼントを買いに行ったときから会うたびにずっと、感じてる違和感はなんだ?なぁ、なんで?俺の知っている夏目志乃はそんなことはできないはずだ。じゃあ、お前は誰だ?俺と同じように知らないときを過ごした夏目志乃だと考えてしかるべきじゃないのか?」

   

 いらついたような表情を隠そうと思いもしないようにいう真くんに息をのむ。誰だと問われて私は夏目志乃だと言いきれる自身がなかった。

  

 「なぁ……これでもどうしてって聞くのか?」


 真くんの声に、言葉に、思わずうつむいてしまう。

 以前おかしなことを言う、とまで自分で言いながら話した真くんと比べると私はひどく愚かしく感じてしまった。隠すことやごまかすことばかりを考えている。今も、こういう風に向き合ってくれているというのにいまだにどう言い逃れができるだろうかと考えている。

 そんな私が真くんの目を、見れるわけがなかった。

      

    

 「志乃」


 呆れたのか、見限ったのか、さっきまでとは違いえらく落ち着いた優しい口調で言われて返事をしない訳にはいかなかった。


 「うん」


     

    

   

 「は……」

     

 真くんの言葉を待っていたのに真くんの息をのんだ音がして顔を上げる。

 お店のガラス越しに見えたのは赤い車だ。

 運転席から鈴ちゃんの元彼氏、高橋が降りる。助手席に回った高橋は恭しく助手席のドアを開けた。エスコートされてそこから降りてきた人を私は知っていた。

         

     

   

 「あれが、姉貴を振った男のすることかよ」

 「まって真くん!」


 駐車場にかけていく真くんは座っていった椅子を倒した。

 椅子を起こしたところでガラス越しにこちらに気が付いたその人はひらりと手を振った。

         

         




 ヒールを履いているのだろうか。普段よりも背が高く見えた。

 幸せそうに笑うその姿に私は動くことができないでその場で名前をよんだ。


             

               

           

          

        


 「・・・・・・瀬崎さん」





      

■真

高橋を見つけて気持ちが落ち着かない。

■高橋

赤い車の人。エスコート中。

■瀬崎

エスコートされている。

■志乃

高橋と瀬崎を見て何とも言えない感情に包まれている。



瀬崎が男だといつ言った、という気持ちで書いてました。瀬崎さん女でしたー。赤い車の助手席に乗せてみたりしたんですが。うまく伏線をはれていなかったなぁと反省。

これサブタイトル「壊れた約束」はあっていない気がするなぁ。


次回はお察しの通り瀬崎と真くんのターン。




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