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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
学校編
92/114

壊れた約束 1

 「志乃?いい加減起きなさい」

 目はとっくに覚めているというのに聞こえる声に苦笑がもれた。

 「今、行くよ」

 リビングに入ると母親が少しばかり怒った様子を見せる。

 「夏休みの最初から寝て過ごすなんてまったくもう」

 怒ったような母親の声にはははと笑う。

 「ってあら、着替えてたのね」

 「うん、まぁね」

 「有生は?」

 「有生は受験勉強するって」

 うそだろうなぁと思いつつふぅん、と頷く。学校には2学期から行くらしいと母親が嬉しそうに言う。そっかと言いながらその嬉しそうな顔に私もほころぶ。

 「志乃は?この夏休み何かすることあるの?」

 「そうだなぁ」

 そういうと母親が目を輝かしているのがわかる。そんな顔に苦笑しながら笑った。

 「ちょっと、進路について考えるよ」

    

    


 家からいつものように特にこだわりのない格好をして外に出る。

 タンタンッと音が鳴る。履きなれたはずの靴はその鮮やかな色をなじませていた。

 慣れたように歩き出した目的地は決まっていて、真くんの家にほど近いファーストフード店の中に入った。

 きょろりと店内を見渡してもその姿が確認できない。先にきたのかと思いながらとりあえず注文をしようとレジに並んだ。

   

 今日はブラックの気分じゃないな、甘いの飲みたいと思いながら店員さんにその系列特有のシェイクを注文した。人口甘味の入ったどろりとした甘さが口の中に広がる。冷房の風が直接当たらないところに座って真くんを待つ。

 趣味のように店内にいる人たちに視線を巡らせた。付き合いたてのような恋人。喧嘩をしているのか深刻そうな人。落ち込んでスマートフォンを見る人。レポートだろうか、パソコンを開いて何かを打ち込んでいる人。さして広くない店内の様子を見ながら待ち合わせ時間よりもはやく着てしまったことを少しばかり悔やんだ。

 もう少し遅く来てもよかったんじゃないかな。

   

 「志乃」


 聞きなれた声が聞こえて振り返る。


 「真くん」

 「久しぶり」

 「久しぶりだね」

 「なんか買えば?」

 「志乃は?」

   

 くいっとシェイクを見せると真くんは苦笑する。昨晩見た会いたいというメールに了承をするとすぐに今日会うことになった。すらりとした身長の真くんを目で追う。注文を受けた店員さんの笑顔が少し赤く見える。

 少しの軽食と飲み物をもってくるの姿を見た。飲み物のカップが2つ乗っている。


 「お待たせ」

 「いいよ」

 「ほら、ブラック」

 差し出されたそれをありがとう、といいながら受け取る。

 「また珍しいの飲んでるな」

 「たまに飲みたくなるんだ」

 「おいしい?」

 「甘い」

 話ながら真くんが対面に座るのを見てズーッとシェイクを飲む。顔色が少し悪そうに見えた。

 「寝てないの?」

 わずかに見える隈にあぁ、と頷いた。

 「寝れなくて」

 その言葉にそっかとだけ言って本題を切り出す。

 「鈴ちゃんは?どう?」

 一瞬身構えるように固まった真くんはあー、と言葉に悩んだように音だけをもらす。右腕を机につき、くしゃりと自身の髪を掻いた。

 「なんかさ、私もいろいろ聞いたんだけど」

 「いや、いい。言わなくて」

 「え?」

 手で制した真くんに聞き返す。その瞳は困惑がありありと浮かんでいた。

    

   

 「姉貴は昨日、話がだめになった」

   

   

     

■真

コーヒーをおごってくれた

■志乃

たまにシェイクが飲みたくなる。




更新遅くなってすみません。そしてサブタイトル「影が響く」はもうしばらくお待ちを。


久しぶりの真くんのターン。

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