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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
学校編
91/114

近づく秘密 4

 それ、と指さしたのは私がいじっていたパソコンであぁ、と声を発した。

 「取れた?」

 「まだ。何か入ってそうだけどね」

 困ったように言うと視界に入った時計の時刻を見てあわてて有生を見る。

 「ごめん、有生。もう11時だ!」

 「あぁ、いいよ」

 それが何?という風に軽くいく有生の頭をチョップする。

 「いいわけないでしょ!寝なさい!」

 「えー」

 「えー、じゃない」

 「でも」

 「でも、じゃない。あんたまだ中学生でしょうが!」

 「もうすぐ高校なるだろ」

 「は?もうすぐ?そういうのは受験終わってからいいなさい!」

 明らかに不服な顔をしている有生は口を開いた。

 「でもさ」

 「なに?」

 「姉ちゃん、いつも一人で無茶するじゃん」

 すねたような言葉に一瞬目を開いてそのあと緩んでしまう口元を必死にかくした。

 「ねぇ。私もさ、あの人のこととは別件で有生に考えてほしいことはあるし。あの人のことももちろんだからまた話に来るよ。約束する。この間までみたいに、何も話さない姉弟じゃないんだから。だからとりあえず、今は寝る。じゃないと大きくなんないよ」

 「わかったよ」

 すねたような声でそういう有生の頭をくしゃりとなでると手を振り払われる。有生は身長のことは姉ちゃんに言われたくないとぶつぶつといいながらも寝る用意をしている。

 私はそんな有生を横目で見ながらキーボードの取ったパソコンと有生の持っていた「蝋梅の花」という本をとって部屋に戻った。


       

 スマートフォンのピカリピカリと定期的に何かの通知を知らせる小さなライトが光っては消え光っては消えて、その存在を私に知らせていた。

 真くんからの連絡だ。しばらくこちらからも連絡をしていなかったから少しその連絡を見るのをためらう。

 「近いうちに会って話したい」

 その言葉に了解の意味の返事を送る。

 どこかじっとりした暑さを感じて冷房をつける。

 

 有生の部屋ではできなかったことをしようともう一度パソコンを開いた。ピンセットであっさりととれたキーボードの紙を慎重に開く。



 3回に折りたたまれたそれは広げても人差し指と中指くらいのサイズでしかない。ルーズリーフを入るサイズに合わせてはさみで切ったような紙だった。

 そこに書かれていたのは一言だけ。ずいぶんと長い間見ていなかったあの人の右上がりの癖のある細い字が書かれていた。

 「志乃と有生」

 志と生という字だけが何度かかいた跡があり、ほかの字と比べたら太くなっている。裏面には「L」その一文字のローマ字だけがある。

 とりあえずその紙の写真をスマートフォンにとってはその紙を元の位置に戻す。

 「わけがわからないわ」

 つぶやいたままにじっとキーボードを見る。先ほどいじっていたときから感じていたもやもやとした薄い違和感がへばりついて取れない。

 「何かを見落としている?でもそれはなに?」

 まだ全部の文字の下を確認もしていない。それでも離れない違和感を看過することはできなかった。そのキーボードの写真も撮ってからベッドに倒れこんだ。

 「考えろ。立ち止まるな。思考を止めるな」

 ぶつぶつとつぶやきながら頭の片隅に浮かんだのは先ほどの集中していた有生の姿で姉弟は似るのだと思うと少しだけおかしく感じた。

  

■有生

姉に身長のことをいわれるとむっとする。結構シスコン。


■志乃

父親のことがわけがわからなくてもやもや。


■真

最近出番から遠ざかっていた。


志乃と有生のキーボード考察かいでした。

相変わらずにやにやしながら書いてます。


次回のサブタイトルは「影が響く」(仮)

明後日の更新を予定しています。

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