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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
学校編
75/114

文具ヤマアキ 3

 「愛さんを最近見かけないのだけども」

 どうしているかわかりますか?というその言葉はすごく心配をしているようだった。

 「わたしも、もう夏休みなので」

 「そっか夏休みですか」

 そういった瀬崎は困ったような顔を向けた。もう夏ですね。しみじみと言われた言葉が耳に残る。

 「志乃さんは、あぁ、ごめんね。志乃さんって呼ばせてくださいね」

 「別にいいですよ」

 同意をすると穏やかに笑う。

 「志乃さんは愛さんと何か約束とかしてないんですか?」

 「約束、あぁ……」

 思わず口ごもる。それにどこか期待をしたような瀬崎に少しの罪悪感が生じた。

 「約束、今年の夏は誰ともしてなくて」

 「それは、どうしてですか?」

 「つい。忘れてました」

 困ったように言うと瀬崎は少し表情を緩ませた。その様子に首をかしげると瀬崎はゆっくりと口を開いた。

 「実は、最近まで、高校生が嫌いになりそうだったんです」

 ぽつりと吐露するように言う瀬崎に首をかしげた。

 「嫌がらせなんて、するのかと。もういい年齢なのに、そんなことをするのかと。そして、愛さんを思い浮かべては、あの子が苦しんでいるのにもかかわらず、平気な顔をして笑っているのかと思ったら、こういう表現はどうかとおもうのですが、憎くて憎くて仕方がなかったんです」

 吐き出された内容は人好きの瀬崎にしては珍しいものだと感じた。しかし、それだけ愛のことをかわいがっているのだと分かる。

 「たとえば今目の前にいじめている人がいたら一人残らず口に出すのも嫌なことをしてやりたいと思いました。彼女が泣いている苦しんでいるときにその人たちはその姿を見て笑っているのだと考えたら憎くて憎くて。同じ人間としても、大人としても、理解ができなかったんです。これからの世界に対する不安もありました。そういうことをする若者がこれからを引っ張っていくのかと思うと絶望的でした。だから、志乃さんが親しくしてくれていると聞いた時に、まだ捨てたもんじゃないなと思えたんです」

 それになんと反応をしようと迷っていると店員が返ってきた。



 「あ、2人して店番してくれてたんすか、あざす」

 「感謝してくださいね」

 「ははは、感謝してます、してます」

 瀬崎と店員のテンポのいい会話は瀬崎のさきほどの話に対する思考でかき消されていく。

 「あぁ。引き留めてすいませんっすね」

 ぼんやりとみていたことに気が付いたのだろう、店員はにこやかに笑うとそういった。いいえ、とつぶやいて首を振ると瀬崎も帰る様子を見せた。

 「家までおくりましょうか?」

 「いえ、大丈夫です」

 「そうですか」

 残念ですね。と告げられた言葉にあいまいな笑みをこぼした。

 瀬崎が出した車のキーを見て思うのは、瀬崎に車はあまり似合わないなぁといったことだった。チャリンとなった瀬崎の車のキーには鈴が付いていた。



■瀬崎

愛をかわいがっている

■愛

瀬崎になつく。

■秋山

電話をしてくる。

■志乃

お店からやっとでる。


次回は家族ほのぼののターン。

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