文具ヤマアキ 2
「あれ?お嬢さん」
聞いた覚えのある声が店内に響く。
「瀬崎さん?」
「今帰りですか?」
「そうです」
「え?知り合いなんすか?」
店員がいつのまにか再び起動させたゲーム機を構えた状態のまま口を開いた。
その様子をみた瀬崎が溜息をついた。
「また君はゲームばかりして」
「へいへい、瀬崎さんはいつもうるさいっすねぇ」
ゲームを置いて立ち上がった店員の身長は瀬崎よりも低い。ひょろりとした線の細さが余計に小柄に見せる。
「瀬崎さん、身長高いですねぇ」
思わずしみじみと出た声は感嘆に近かった。
「あ、ありがとうございます」
「まて、おいまて、女子高生。今俺を見ていったすか?」
「あ、すみません」
照れたように笑う瀬崎に何センチあるんですか?と聞く。
「ずいぶんと図ってないけどたぶん173とかでしたかね?」
「縮めばいいんすよ」
ケッと吐き出すように言う店員は瀬崎に向かい合う。
「んで、今日は何を買いに来たんすか?蝋燭でもなくなったんすか?」
「君のところは文具なのか何でも屋なのかわかんないですねぇ」
親しげに話す2人は、付き合いの長さを感じる。
「お客さんのにーずとやらにこたえてるだけっすよ」
にやりと笑った店員はあ、とこちらを見た。
「だから女子高生ちゃん、いつでもなんでも注文していいっすよ」
「おや。秋山くんに気に入られたみたいですね」
「え?」
「秋山くん、ゲームばっかりしていてコミュニケーション能力が乏しいし気難しいから、常連というか注文させる人を決めてるんですよ」
わしゃわしゃと金髪の頭を無遠慮に瀬崎は撫でた。
「余計なことっすよ」
「まぁ君ががんばっているのは知っていますよ」
「うっせぇす」
ふてくされたような表情をした店員、秋山と視線があう。
「ありがとうございます」
そう口にするとふてくされた表情のまま手をひらひらとふった。
「気にしないでいいっすよー。この人が余計なことをいうから」
この人、と言って瀬崎を見る秋山をほほえましいものを見るように見ていた瀬崎が思い出した、というようにそうそう、と声をだした。
「今日は筆ペン買いに来たんだけども、ありますか?」
その毒気のないにこにことした笑顔に秋山はわかりやすく溜息をついて口を開いた。
「いつものっすかー?」
「そうそれです」
なれたようにレジの下あたりをごそごそとした店員は薄い色の筆ペンを出した。
「金額は……」
「あー。月末にまとめて払いにきますからよろしくお願いします」
「しかたないっすね」
ツケも気に入られ特権だよ、とにこにことわらって瀬崎は言った。
「女子高生ちゃんもツケしていいっすよ」
にやりと笑う店員はそういってふと思い出したようにそういえば、と口を開く。
「女子高生ちゃん、お名前は?」
「夏目、志乃ですけど」
「夏目?」
「はい、どうかしました?」
「んー。知り合いにナツメって人がいるんっすよ」
にっと笑った店員はその人に目が似てるっすね、と言って笑った。
「似てます?」
「んー。覚悟をした目をしているからっすね」
その人は、と口を開く前にブーブーとなるバイブ音に私も瀬崎も店員もきょろりと自身のを確認した。
「違いますね」
「あ。俺っす」
私がカバンから出して確認するよりも前に店員がそれをみつけていた。
切れた音に少しだけ顔をゆがめた店員はちょっと電話してくるっす、と席を外す。それを見計らってか瀬崎が口を開いた。
■秋山
店員。知り合いにナツメさんがいるらしい。
電話中。
■瀬崎
常連。173センチ
■志乃
いつお店をでたらいいんだろうか
やる気が激減しております。うまくいかないことばかりでしょげています。でも書く。面白いのでしょうか、これ。
次回が173センチの瀬崎のターン。




