1学期のさいご 3
学校からの帰り途中の目的地は先日も行った文具「ヤマアキ」。
先日あそこに行ったのはボールペンもほしかったというのもある。購入したボールペンはしっかりとかばんの中にある。
それとは別に先日行った時に確認したいことができたのだ。できれば早くに確認したかった。
「らっしゃいませー」
やる気のなさそうな目をした金髪の小柄な店員がドアの開閉とともに声をあげた。レジの見える位置にある正方形の付箋を手にとる。薄いクリーム色でどこにでもあるタイプだ。そうしてちらりと視線を動かした。
そうして視線を動かして見つけたその姿を確認する。
レジの横にもたれかかるように立っている姿を見る。
黒髪を遊ばせている。つんつんとしたヘアスタイルは確かに、チャラそうだ。
細身の姿に変化はない。真くんからもらった写真の人物だった。
そして、先日、優菜とパフェを食べに行った先で見かけたはずの細いフレームの眼鏡をかけていた人物であった。
名前は高橋。
前のときに少しだけかかわったから覚えている。
大きな病院に勤めている、あまりいい噂を聞かなかった医者だ。
前の時とは違う容姿に何かしらの変化があったのかと思考してしまう。
高橋が悠然とお店を出たころに金髪の小柄な店員は口をひらいた。
「で? お客さーん」
レジから離れた彼の手にはやっぱりゲームをつかんだままであった。笑顔を浮かべて首をかしげる。
「何か気になりました?」
その瞳は笑っているようにはみえなかった。
「えっと、付箋を」
「ふぅん。そうっすか」
“あきやま”と雑にマジックで書かれたネームが揺れる。
この間はくれよんのようであった手作りを感じさせるぺらりとした紙は緑色のエプロンについていた。
「お客さんこないだもきてくれてましたよねー」
レジまでいって付箋を渡すと店員は思い出したように口を開いた。親しげさえ感じてしまう軽さの言葉に困惑をする。
「そう、ですね」
「あ。緊張してますー? そんなんしなくていいのに」
軽くいうと店員はにやりと笑った。
「さっき、高橋さんみてたでしょ?」
「え」
「お客さん、あーゆー人が好きなんすか?
女の敵っすよ、あの人。やめたがいいっすよー」
けらけらと笑いながら言う声が聞こえる。
私は確かに高橋を見ていた。
それはどういった理由からか。
しかし店員は高橋を見ていた理由を恋愛ごととつなげようとしているのがわかった。
くっと笑いそうになるのを耐える。そしてできる限りの困惑した顔を向ける。
『嘘をつくときには事実を少し含ませるといい。それだけでぐっと嘘は本当に近づく』
その言葉を頭によぎらせながら店員に視線を向ける。上目使いで困惑したように向けた目に店員はとまどいながらどうしたんすか?という。こんなことなら目薬を常備しておくべきだったかと内心で溜息をつく。
「実は」
にやりと笑いそうになるのを抑えながら口を開いた。口元に抑えた手は動揺したように見えているかもしれない。
「見ていました、その人のこと。前すれ違った気がして。ここならと思って」
素直そうに口を開いた。店員は興味深そうにこちらの話をきく。その手のゲーム機がスリープにされたのを確認をした。
■あきやま
文具やまあきの店員。いつもゲームを持っている。
■高橋
鈴の婚約者。医者をやっている。
■鈴
志乃のいとこ
■志乃
目薬を忘れた
ってなわけで鈴ちゃんの婚約者さんへ近づきました^^
今回のターンはあきやま、が正しかったのかな?
引き続き次回も鈴ちゃんの婚約者関連のターン。




