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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
学校編
69/114

あねとおとうと 7

 ちゃぽりと音を立てて急須を傾けるのをやめた。母は嬉しそうににこりにこりとわらっている。



「さすが姉弟ね」


 その言葉に盛大に顔をゆがめているのが有生だ。


「一緒にしないでほしいな」


 少しかすれた声を気にしてはのど元に手を当てていた。数年の間声を出さなかったツケだ、というと、少しは歌を歌ったりしていたと反抗的に返される。


「あら、どうして?」

「だってすっげぇ短絡的なんだ」


 馬鹿って言葉はねぇちゃんのためにあるよな。と付け足される。


「さっきだってさぁ」

「あぁ。志乃は扉を蹴っちゃったやつね」

「お母さんならどうする?」

「そうねぇ……殴るわね」


 かわんねぇとつぶやいた言葉が聞こえる。



「だれもかれも有生みたいに頭の回転が速いと思うなよ」


 反射的にいうと母がくすくすと笑う声が聞こえた。


「志乃よりは確かに有生の方が頭はいいわよねぇ」

「ほらね」

「知ってるわ!」

「なんというか志乃は要領があんまり」

「よくないよね! ねぇちゃんってなんか短絡的というか単純というか。難しいことを考えるのに向いてないんだと思う」


 水を得た魚のように嬉しそうに言う。私は目の前で繰り広げられる会話を聞かざるをえない。



「そうよねぇ。1人で悩んでも仕方のないことを延々と悩んでそうよねぇ」

「そう、それ! 父ちゃんがいなくなったときだって」


 そこまで言ってあ、と顔をゆがめた。母の表情がひきつる。

 助けを求めるようにこちらを向いてくる有生に、あほ、と口パクで言ってから口を開いた。


「そんな人のことをどうのこうの言わなくていいじゃん?」

「ふふふ、ごめんね。志乃」

「いいよ。もう」

「ごめん、ねぇちゃん」

「有生は後でデコピンする」


 昔は何か怒ったらデコピンをしていたと思い出して口にする。

 どう接すればいいのか、どういう会話をすればいいのかと不安だった、有生との会話はそんな不安なんてなかったように自然と会話がなりたっていた。


「えー」

「えーじゃない」


 にこにこと笑う母に首をかしげる。


「えぇ。うれしい」


 正直にいう母に少し面をくらう。照れたように有生と顔を見合わせる。


「あなたたちには話していなかったんだけどね。あなたたちの名前はね。おかあさんの親友からもらったの」

「そうなの?」


 有生が興味津々な表情で母に首をかしげた。

 私も初めて聞く話に首をかしげた。


「志生って親友でね。きれいで優しい子だったの。お母さんの昔からの同級生でね。しっかりしていて、人にやさしくて。本当に素敵な子だった」


 思い返すようにいう母の顔は楽しそうだった。


「ちょっと不幸なことがあって早くに亡くなったけど。おかあさんはその子が大好きでね。すごく素敵な子だったから漢字を一文字ずつもらったのよ」


 だからね、と告げた。


「そんなあなたたちの仲がわるくなるわけない、ってわかっていても。やっぱりこうして話しているのをみるとうれしいものね」


 名前の由来を初めて聞いて有生に顔を向ける。有生も首を振っておりどうやら初耳らしい。


「じゃあ、その志生さんの分も僕たちは楽しんで生きなきゃ。そうだろ?」


 どこかしんみりした空気を壊すように有生がそう声をあげた。そうだね、と言ってまたお茶を飲む。



「ねぇ有生は何を考えてすごしていたの?」


 母の言葉に有生はぱちりと目を開く。

 少しだけひきつったように笑うと、長くなるよと口を開く。長く笑っていなかったんだといいながら口角あたりをマッサージする姿を見てはゆっくり話してよという。


 久しぶりの家族の団欒の時間はまだ少し盛り上がりそうである。




昨日は更新できなかったです、すみません。

いつもより文字の分量大目です。


■有生

声も笑顔もしばらくぶり

■志乃と有生ママ

なかよくなってうれしい

■志生

お母さんの友人

■志乃

おちゃがおいしいなぁ


次回は志乃の学校のターン。少し平和パートが続きますよー。

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