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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
学校編
68/114

あねとおとうと 6

『きょうだい、だろ。そんなの』

「うん」

『あんたみたいなのがねぇちゃんだってことはとっくに知っている。要領悪いし頭悪いし単純だし大丈夫かよって思うねぇちゃんでも。それでも。あんたのことを嫌いになったことはない』

「わたしもだよ」

『なんでだろうな』


 すべての音が一定のトーンで聞こえる。ゆっくりと聞こえるキーボードをたたく音が心地よい。


「たぶん、それはね。私たちがあねとおとうとだからだよ」

『そうかな』

「そうだよ」


 へへっと笑うと有生も少しだけ口角を上げた。


『でも、変わったな』

「そうかな」

『この間のプリントの時といい、あんた、そんなに面倒見よかったか?』

「そんなつもりは、ないけど」

『面倒見じゃないな。そんなに周りを気にしてたか?』

「気にして、なかったかもね」


 言葉にすればするほどわたしは、最低な人間だと思った。友人にも家族にも興味を向けていなかったのかもしれない。


『何かあったのだろう。変化をしなくてはいけないなにかが』

「何か、ねぇ」

『その何かを知りたいわけではない。ただ目的が見えない』

「目的?」

『ここまでして部屋に入り込んだ理由』

「きょうだいだから?」

『そうじゃない。それだけなら蹴破らないだろ?』


 それを言われてなるほど、と思う。

 確かに、それだけじゃないのは確かだ。

 父だ。

 前も今も、父はいなかった。帰ってこなかった。

 どこで何をしているのか。真くんから聞いた、近場での目撃情報が気になってしまった。それを知りたいと思ってしまった。多分知らないといけない気がした。


「ねぇ、有生。私、知りたいの。あの人、私たちの父親のこと。何を調べていて何をしているか」


 有生が真顔になったタイミングで口を開く。有生は何も答えないまま、真意を問うかのようにじっと私の目をみていた。その目をそらさない。もう、何もわからないままに時間だけが過ぎるのはごめんだ。


「有生が言った通り、わたしはもともとあんまり考えるのは向いてないし、難しいことは苦手だよ。でも目的もある。逃げてちゃだめだ。そのためには、有生の知っていることを教えてほしい」




「馬鹿か」


 かすれた声が反響した。


「そんなの言われなくても教えるよ」


 ただ、とかすれた声は少し揺らぐ。








「あんたは、ねぇちゃんはいつも、全部、おせぇんだよ」


 泣きそうにゆがんだ声が響く。


「ねぇちゃんのくせに」


 幼さの感じる言葉にそうだ、有生はまだ中学生だと思い出す。



「ごめんね。有生」


 そう言いながら、有生が泣くのをみて私も泣けてきてしまった。涙にゆがんでいる父に似ているその青い瞳に映る自分が嫌に小さく見えた。






■有生

ひさしぶりに声をだした。

■志乃

有生とはなせた!


短いなぁと思いつつ。あねとおとうとはここまで!

次回は「家族のだんらん」

わかってのとおり家族のターン。

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