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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
学校編
66/114

あねとおとうと 4

 一面に広がる、アニメ、ということはなく。

 そこに広がるパソコンは数台に及び、プログラミングの本が積まれている。

 大きめのスクリーンの上にはよくわからないものが徐々に上に流れていく。



 一台のパソコンからは無音で登場人物だけが動いているアニメが見えた。ちょうどお金を拾って喜んでいる少年の姿がうつしだされた。おそらくこれがスイキンという番組なのだろう。


 半分の本棚にはアニメのDVDが詰め込まれている。「スイキン!」とかかれたDVDが置いてある。

 母と同じ、赤みのかかった髪がゆれる。前髪が左目を隠していた。右目が吊り上っているのがわかる。




「久しぶり、有生」


 や、と片手をあげると有生は怒っていた表情を少し、揺らした。


 あわてたようにカタカタとパソコンをいじって声を出そうとする姿を見ては複雑な気持ちになる。

 視線のあわない姿だ。首が前傾している。骨格がゆがんでいるのが素人目でもわかった。



「すごい部屋だね」


 ぐるりと見渡して一冊の本を手に取る。分厚いプログラミングの本で開いてはみてもよくわからなかった。

 これをきっと有生は理解ができているのだと思う。

 わかっていたことではあるが私よりもはるかに高い理解力に嫉妬を感じる気持ちにふたをした。


「これ。わかってるんだ……」


 動揺しているのか、なんと返せばいいのかなやんでいるのだろう。有生はノートパソコンを持ったまま視線を動かしていた。昔から有生は難しいことのよくわかる子だった。


「有生?」

『なんだ』


 パソコン越しに聞こえる声は有生の声ではない。

 いままでほっといておいてなんだけれども、この子は、声を捨てたのだろうか。優しい声だったのに。


「パソコン、ないと会話しないの?」


 ぽつりとつぶやくと有生の顔色が赤くなるのが見える。


「言葉もなくしたの?」


 怒りのままにキーボードが音を立てる。


『何をしたのかわかっているのか!』


 低い、怒声が響く。おそらく最大にされたのであろう音に耳を抑える。キーンと音の割れるノイズが聞こえた。


「ごめんって」

『ごめんですむほど単純な話だと思っているのならおめでたい頭ね』


 高飛車な声が聞こえる。即座に帰ってきたセリフにあぁ、謝るのは想定内だったのかと思う。

 有生を見ると少しだけ得意げな顔をしていた。その表情は昔よくみていたものと重なった。



■有生

姉と久しぶりの対面

■志乃

弟とはなそうっ



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