少女のあやまち 1
本日の2話目
放課後に3色ボールペンを買いに学校帰りに文房具屋「ヤマアキ」というお店による。
書きなれた3色ボールペンを手に取ってみる。
クリップ付のそのボールペンを試すように持ってはくるりと回す。どうせなら自分の使い勝手のいいものがいい。ペンを選ぶときは好みの問題だと思う。わたしは細いペン先が好きだ。少しだけ重さがあるのも好きだ。軸の太さは太めがいい。色は茶色とか紺色とかがいい。
小さな店内には思いのほかぎっしりと文具が詰め込まれている。棚がいくつか陳列している。
店員は1人。らっしゃいませーと気の抜けそうなほどのゆるい口調でいう何も見ていないような金髪のセンター別けの小柄なその男はただレジのところで座っていた。
携帯型のゲーム機を手元にもっていじる様子が目につく。
ほかの人が店内にいる気配は少ない。
いくつかあった3色ボールペンの中からやっぱりずっと使用していたメーカーをとる。そのメーカーの3色ボールペンは最後の一本で、限定色なのか軸の色は茶色で落ち着きのある雰囲気だ。レジのほうにそれをもって歩いて行こうと反転する。
視界に入ったのは中学校の制服をきた少女だった。
明るいふわふわした髪に目を細める。
彼女は一瞬店内に視線を巡らせてそして手にかわいい模様のマスキングテープを手にとる。
思案するように1個手に取り、ぎゅっと強く握るとカバンの中にそれを入れた。
入れた右手を震わせてその手を左手で押さえる。
その顔に浮かんでいたのは歓喜かおびえか。ゆるゆるとその口角はあがりそして泣きそうな顔をしていた。
『人は、どこかしらいいところがあって、何か悪いことに手を染めた人も止めてほしいとどこかで思っていると、思いたい』
そういっていたあの人の声も、もう思い出せなくなっている気がした。
人は声から忘れていくんだといつか聞いた忘却の順序が浮かんでくる。
こんなものよりも、あの人の声を残しておいてほしいのに。忘れていっていることに泣きそうになりながらも彼女の腕をつかんだ。
「え」
その声が聞こえてこの声じゃないと叫びたくなった。それを我慢して彼女の顔を正面から見る。
「深津、由香、さん」
「あ……」
誰か思い出して名前を呼ぶと彼女の顔は青く、そして白く、色を変えた。
有生の同級生だ。プリントをもってきてくれたときとは顔つきが違う気がしてそれに思わず顔をしかめる。
「今、見てたんだけど」
何を、私が言えるのだろうとおもいながらも口を開く。
「なにを……」
「ね?今さ、マスキングテープ、カバンにいれなかった?」
「い、れてない」
震えた声が聞こえる。強張ったままカバンの取っ手を両手でギュッと握っているのが見える。
「本当に?」
念を押すようにいうと彼女は視線を逸らした。少しの沈黙が流れたのちに彼女はゆっくりと口を開いた。
「ユウキくんに、いいますか?」
「有生に?」
こくり、と頷いて不安げな顔を向ける。
「今、出したら、言わないでくれますか」
細い、声だった。カバンからそのテープを出した。
「ちょっと付き合える?」
「え。はい」
深津由香を連れてレジまでいく。金髪の小柄な男はゲームをしながらお会計っすかー?と口を開く。
「はい、お願いします」
出した商品は3色ボールペンとマスキングテープ。
「489円っすー」
500円玉を出して11円のお釣りをもらう。それを財布に入れて商品を受け取ると店員が口を開く。
「おねえさん」
「え?」
「今回は隣の御嬢さんのこと見逃がしてあげますよー」
分かっているというような言葉に深津由香は泣きそうな顔で、すみませんでした、と告げた。
■ 深津由香
有生の同級生。万引きをしようとした。
■ 店員
ゲームをしている。金髪センターわけ小柄なやる気なさそうな店員。
■ 志乃
3色ボールペンほしいな・・・




