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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
学校編
57/114

猫背のたくらみ 2

 

 その言葉に息をのむ。俺たち、とはだれを指すのか。金の出所ともいっていた。そのことも気になる。そもそもヤツとは誰か。


 集中してみていたからだろう。

 肩をつかまれる。



 人の気配に鈍感になっていたことに気が付く。

 目を見開いて振り向くとそこには汗をかいたまま怖い顔をして私の先にいる2人を見ているフク先生がいた。

 見られていたのだろうか。どこから。2人を追いかけたところからだろうか。しまった。と頭の中では後悔が乱舞する。

 なんと口を開こうと思うよりも先にフク先生が口を開いた。


「夏目」


 ギリリとかみしめるように吐き出したフク先生の声にはい、とささやくような声で反応をした。


「生徒指導室にこい」


 いつもならこいなんて表現をつかわないフク先生のその言葉に頷いた。

 怒りか。

 焦りか。

 それの判断はつかない。フク先生の後をついて行きながらもう一度振り返る。

 橋田先生は電話先とまだ話していた。篠田先生はもうそこにはいなかった。


 生徒指導室は小さな部屋だ。窓が一つ、ある。

 周りには進路の相談の時につかうのであろう赤本が並んでいる。

 部屋の真ん中に置かれた茶色い机と数個のパイプいすが余計に部屋を狭く見せた。


 無言でついていった生徒指導室の扉を閉められる。

 橋田先生がなにか、しているのはわかった。

 それがなんなのかはわかない。

 先日喫茶店で見かけた猫背は橋田先生だったのかもしれない。

 篠田先生の立ち位置はまだわからない。フク先生は、どちらだ。


 窓側の方のパイプいすにフク先生が座る音がする。

 ぎぃと古い音がした。

 それに習い、私も対面のパイプいすに座る。パイプいすの背もたれの金属の錆が掌についた。


「なにを、していた」


 座ったのを確認してからフク先生が口を開いた。

 普段よりも数段に固い口調に身動きをする。ギシリと椅子が音を立てた。


「なにか、きいたのか?」

「いいえ」


 はぁとフク先生が溜息をついたのを見る。


「むしろ聞かれたらまずいことでもあったんですか?」


 しれっとした顔でそういうとフク先生は悩ましそうに顔をゆがめた。


「夏目」

「はい」

「いいか、他言無用だぞ」

「はい」

「と、言って話してもいいんだがな。お前は馬鹿じゃないし、与えられた情報の重要性もその生かし道も知っていそうだ」


 あきらめた声色が聞こえる。


「でもな、お前は高校生で未成年。おれは先生だ」


 わかりきったことを言い出したフク先生に首をかしげた。


「お前ら生徒に何もないように、と、俺らはやっているんだよ。それがうざいといわれようが、うるさいと言われようが、生徒たちの人生の岐路の高校生という3年間にかかわれる仕事をしているんだ。それをなんの憂いもなくすごさせることが一番いいことじゃないか」

「ありがとうございます?」

「橋田先生のことはこちらが請け負う。だからな、夏目」


 今日見たこと、聞いたことは忘れろ。


 その言葉を発したフク先生の顔も声も真剣であった。



「わかりました」


 一応そう口に出しておくとそうか、と少し安心した表情を浮かべられた。


 わすれるつもりはないのだと心の底で思っていることに少しチクリと罪悪感がわいた。





■ フク先生

志乃の学年の学年主任。


■ 志乃

フク先生にどなどなされた主人公。


気が付いている方がいるのかわからないですが、先生ズの名前が ○田先生 縛りになっています。気が付いて笑いそうになった。

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