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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
学校編
56/114

猫背のたくらみ 1

 

 泣いた彼女が悪いというのか、とひそりひそりとした声が聞こえては溜息をつく。

 泣いた人は被害者か。なんと女の涙の軽いことか。


 校内を闊歩しながら景色をぼんやりとみているときょろりとあたりを見ながら歩く人を見つける。



「橋田先生じゃん」


 わかりやすい、ひょろりとした猫背を見る。

 挙動不審なその姿に思わず目が行く。

 そしてその背を追うような篠田先生も見かける。思わず、という風に足が動いた。

 その光景を見ていたのが私一人か、の確認を忘れているほどに。









「だから! 無理だといっているだろう!」


 叫ぶような声が聞こえた。

 裏庭に近いそこは告白くらいでしか人は近づかない。見通しの悪いそこで電話先にそういう声が聞こえる。

 ぼそりぼそりというのが通常の橋田先生からすればとても珍しい。篠田先生は見つからない位置に立ってその声を聞いているようであった。

 猫背の薄いグレーのジャケットのよれた背中が見えた。


「そういうことは、ヤツに聞いてくれ」


 偉そうな声が響く。


「その件に関しては全部ヤツがやっているんだ。俺がやっているのなんて情報をヤツに流しているだけだ。・・・・・・見返り?あぁ、もちろん、あるとも。気に入らないのがヤツの餌食になったり。必要になったときにヤツが手を貸してくれたり。あぁ、あとは、金だな」


 声色だけは馬鹿にしているようにそして偉そうに言うその言葉に背筋に冷たいものを当てられた気分になった。

 気配に気が付いたのか篠田先生が振り返る。


 それに気が付いて余計に身をひそめた。


「まぁいいから、ヤツのいうことを聞いておけ、お前も恩恵にあずかりたいだろ?」


 笑みを浮かべていっているのだろうと想像にたやすい。


「金の出所がどこであろうと関係はないんだ。金は金だからな」


 なぜ、一時的な臨時の保険医である篠田先生が橋田先生を追っていたのかはわからない。


 しかし、おそらく怪しんていたのだと思う。


 あれだけ前のときにいろんなところとやりあっていたというのに、戻ってきたとたんにこんなことにも気が付かないなんて、と自分の危機能力のなさに嫌気がさす。


「あぁ。それでな、俺が今気に入らねぇのは保険医だ」


 その言葉に篠田先生の肩がゆれた。


「・・・・・あぁ。そうだ。この間話しただろ? 臨時できているその女のことだ。あの女、観察するような目を向けやがって。・・・・・・あぁたぶん生徒からなんか言われたんだろうけどな」


 最後の言葉を聞いて力を抜いたのを確認する。


 観察はしている、ということだろうか。

 しかしそれは生徒からではないということか。


「まぁいい。まだ泳がせてやるさ。・・・・・・そうだな。そのときには頼む。あぁわかっている」


 一度切った言葉が聞こえる。







「俺たちをこそこそ嗅ぎつけようとしているネズミは一匹残らず排除してやるよ」





登場人物がややこしいことになりつつあるのでおさらい。


■橋田先生

志乃の担任

■篠田先生

保険医

■志乃

多分主人公。今回はストーカーみたいな動きをしている。


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