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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
学校編
55/114

変化する関係 5

 


 ひそりひそりと交わされる教室内の会話も耳に入る。


「麻里ちゃんかわいそう」

「佐奈、泣きそうじゃん」

「志乃ちゃんってあんな気が強かったっけ?」

「なんでもめてんの?」

「夏目さんが悪いんだろ」

「え、そうなの?」

「というか泣きそうな子ほっとくってどうよ」

「なんか最近志乃ちゃんかわったよね」

「なんであの4人朝からもめてんの? 元気だね」

「しらない、めんどくさいね」

「教室でやんなよ」

「っていうか志乃ちゃんって……」

「え、マジ!?」



 耳に入ってくる雑多な情報を切り捨てるように息を吐き出した。


 自然に左手は右手の手首をつかんだ。

 ひとつ大きく息を吸う。


 どこかで、私は前と同じという環境に慣れていたのかもしれない。

 前との違いに違和感ばかり感じてそちらにアンテナばかりをはっていたのかもしれない。

 今の私とはきっともう仲良くはできないのだろう。そんなことを考えては少しだけ残念な気持ちになる。






『切り捨てることも時には必要だとおもう。俺はな。でもな、夏目、覚えておけよ』


 あの人の言葉を思い返しては、その先になんと言っていたのかを思い出せない。

 切り捨てることを正解だとは言っていなかったように思える。それでも私は、きっと、切り捨てる。


 それは友人だからか、それとも、もう、前のようにいれないからなのか、私自身にもわからなかった。

 でも、優菜との会話でそれはもう決めていた。





「あのさ」


 麻里と佐奈がこちらをにらむ。

 佐奈の目からは涙がこぼれる。

 優菜が少しだけ咎めるような視線を向ける。それでも止める気はもうなかった。


「もういいや。面倒だし。話したくないならそういえばいいじゃない。空気よめとかいうよりもそっちのほうが早くない?」


 顔を両手で覆う佐奈。

 それを慰めるように抱きかかえる麻里。

 教室の視線が一層強くなり、ジトリとした視線は私を責めるように感じた。





「そこでなにも言わずに泣くのは卑怯じゃない?」





 こぼれ出た言葉は余計に責める視線を増やしただけだった。

 それでも今更、取り繕うことをするつもりはなかった。






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