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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
学校編
54/114

変化する関係 4

 

 週が明けてそろそろ夏休みか、とまぶしい空を見ながらクラスに入ると隠すことのないねっとりとした視線を感じる。

 その先を見ると不機嫌そうな麻里が足を組んで座っていた。視線をそらしている優菜。うつむいて視線を合わせない佐奈が目に入る。



「うっわ。来た」


 普段よりも数段高い声は作っているようで、人の神経を逆なでする声はこういう声か、とどこか冷静な頭で考える。


「なに?」


 明らかに向けられた言葉と敵意に足を止めて麻里を見る。

 優菜がそんな麻里を抑えるようになにかを口にする前に麻里は言葉をつづけた。


 べっつにぃと張る声が響く。


「空気の読めない人がきたなぁと思っただけ」


 あからさまな侮蔑の視線とその言葉を聞いてあぁ、と悟る。


「なんだ」


 静かにつぶやいた言葉は佐奈に拾われる。

 え? と聞き返すためにあげられた顔は泣きそうな顔だった。

 つまるところ、私に対しての負の感情がたまったのだということがわかる。


 優菜の戸惑う様子が目に入る。

 私の中ではもう、優菜と話しておわったつもりにはなっていたけれどもそれは違うのだと、言われているようだった。

 そもそも、そういう風にすぐに終わったつもりになるところが、他人に興味がないといわれる所以なのかもしれない。


 麻里は見下ろすような表情を向ける。


「空気が読めないって、私にいってんの?」

「はぁ? 別に夏目さんのことだなんていってないけど」


 志乃、ではなく、夏目さんという言い方の変化に仕方のない気持ちになりながらも少しだけへこむ。

 一瞬ひるむものの、こんなことでどうにかなる精神力ではないと自負している。

 これはわかっていたことだ。むしろこうなることは想像に容易かった。

 少なくとも、こんなことで立ち止まれるわけはない。

ここで受け流すのは簡単なことなのかもしれない。でもそれをしてしまうと恐らくずっと続くのだということは安易に予測がついた。些細なことだけれども、受け流すほどにわたしは大人に慣れているわけでも、この時間をどうでもいいとおもっているわけでもない。


「自分に言われているなんて思うなんて自意識過剰なんじゃなぁい?」


 くすくすと笑う麻里の表情は歪んでいる。


「じゃあ誰のこと?」


 麻里の目をそらさないように目を合わせながらいうと麻里はすぐに視線をずらした。

 くちごもるようにもごもごという姿をみて、再度、ねぇ? だれ? と聞く。


「べっつに! 誰でもいいでしょ!」


 不機嫌さを隠すことなく言い切る麻里と泣きそうな佐奈。

 困惑した様子の優菜。

 この光景は前、なかったことなのに、違和感よりも先に納得が来てしまった。


「そう?」

「そうよ」

「ならそんなあからさまに態度に出すのはやめたら?」

「はぁ??」


 麻里の姿にそう口に出すと何言ってんの、と荒ぶる声が聞こえた。




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