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変化する関係 3
『それは恐れです』
少女の声が聞こえた。
『それは恐怖です』
『しかしそれを厭う必要はないのです』
演説のような音が割り込む。
『だってそれは、自然な感情ですから!』
答えはない。しかし、有生が選んでその音を流してくれたのが分かった。
「ありがとう」
そう告げて今度こそ背を向けた。
『未来というのは未だ来ないものだ。誰にもそれを束縛する権利はない』
低い歴戦の戦士のような声が私を追いかける。
「ありがとう」
再度つぶやきながらそうか、と頷いた。
「未だ来ないもの、か」
年だけを重ねて、それで戻って。
大人なような気がしていなかったとは言えないけれども。
私はまた、間違うところだったのかもしれない。
これがどう影響をするのかわからない。
わからないけれども、今ここにいるのだから、なにかできることをしたいと思った。それがたとえ、自己満足といわれようが、なにか、したいと思った。
薄情だといわれても、優菜たちとの関係の終りは、少しだけ私を身軽にさせた。
前の話で区切るところをみすったな、という気持ちでいっぱいです。




