変化する関係 1
家に帰ると昨日見かけた中学生がまた家を覗いていた。
土曜日だというのに制服を着ている彼女に違和感を感じてしまう。首をかしげながら声をかける。
「あの」
「あ……」
少し思案したように目線を動かした彼女は何度もちらりちらりと玄関を見る。なにかいうのを待ってはいたが彼女は口を開こうとはしない。
「うちになにか?」
そういうとヒッと声をもらした。
夏の生ぬるい風が通る。深呼吸をするように何度か呼吸を繰り返した彼女は勢いよく口を開いた。
「あの!!」
「なにか?」
「ユウキくんは!いますでしょうか!」
その言葉におもわずえ?と聞き返してしまった。
「有生?」
「はい。あれ?有生くんのおうちですよね?」
聞き返されたことによって不安を覚えたのだろう、少女はびくりびくりと瞳を揺らす。
自然とおずおずと上目使いのようになる少女にいや、と否定を口にする。
「そうだけど」
そうはいいながらも少しだけ彼女に厳しい目を向けてしまうのは仕方のないことだった。
有生はもうずっと、学校にもいっていないし、顔をあわせていないのだから。
「わたし、同じクラスの深津由香っていいます」
かちこちに固まったようにいう彼女はちらりちらりとこちらをうかがい見る。両手で持っている紙袋からのぞくプリントは中学生くらいのものであった。
「いるよ。会うかどうかはわからないけれども、あがっていく?」
そういうとぱぁと顔を輝かせてはい!といった。明るいふわふわとした髪がはねた。
夏目有生。
その存在はもどってくるまえも、戻ってきてからも感じていた。
1人分のごはんも、聞こえてくるアニメの音も。ただそこに存在していることはわかっていた。わかっていて、私はなにもできなかったし、何かをしようとはしなかった。
彼は、私の、弟だ。
志乃がひとりっこなんていつ言った、という気持ちで書きました。
アニメ音とか結構かいてたから気が付いてたかもなぁ。




