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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
学校編
48/114

関係の終止符 2

5話目。しおりの方はご注意ください

 

「そのままのことだよ」


 柔らかな声は少し戸惑いをはらんでいた。


「そのまま?」

「しのやんっていつまでたってもわかんないよね」

「わかんない?」


 聞き返すタイミングでパフェを目の前に置かれる。


「ごゆっくりどうぞ」


 定型文のような言葉をよそに優菜はスプーンをとって数口食べる。おいしーいとその表情を一瞬綻ばせると一転してまじめな顔をした。

 スプーンがからりと音を立ててパフェの容器の中で傾いた。


「ねぇ。しのやんはさ」

「うん」


 うなづいたのを確認した優菜は複雑そうな顔をした。

 何度も聞くけど。と前置きをされる。


「藤吉さんとか桐谷くんと仲いいよね」

「うーん? そうかな?」


 まだ愛とは友人になりたてでそこまで仲良くないと思うんだけど、という言葉は優菜の視線により止められる。

 食べれば? 融けるよ?

 その言葉にそうだね、と同意をして上に載っている抹茶アイスを掬う。


「私たちはさ、知り合って長いわけじゃないけど。思い返せば、しのやんのことなんにも知らないんだなってわかったんだよ。最近」


 優菜の言葉に思わず首をかしげた。


「なんにも知らない?」


 優菜はそんな私を見て苦笑をもらす。


「だってしのやんはさ。しのやん自身のこと、何も話さないじゃない」

「そんなこと」

「あるんだよ」


 かぶせるように目を伏せていう優菜の言葉に何もいえなくなる。断言した言葉の強さは私の知らない私について責めているようだった。


「何も話してくれない」

「でも知っているじゃない」


 言い訳のように口を開く。すると優菜はおかしそうに目を細めた。


「たとえば?」

「私が好むのは抹茶とか」

「甘さ控えめのミルクティーをよく飲む、とか?」

「そう」


 うーん。なんていえばいいんだろうなと優菜の声はどこか言い聞かせるような雰囲気をもっていた。


「そういうことじゃないんだよ」


 言い聞かせるようにいう優菜の声は少しさみしそうだった。


「何を思っていて、どういう風にいつも感じているのかとか。何が嫌いなのかとか。どういう人が好きなのか、とか。そういう言わないとわからない、しのやんっていう人間のこと、だよ」


 それを言われてしまえば私ははたしてそういうことを言っていたのか、という自信はなく、思わず聞き返す。


「言ってなかった?」

「うん。聞いてないね」


 そっか、と漏らすと苦笑する声が聞こえる。


「何が好きで何が嫌いとか、そういう、なんというのかな。当たり前の会話ができていないのに、私たちって本当に友達だったのかなって思ったんだよ」

「でも、それでも私は友人だと思っていたよ」


 ほらそれ、と優菜は口を開いた。


「しのやんは気が付いているのかいないのかわからないけど。”友達”、とはいわないじゃない。いつも絶対”友人”っていう。なんだかそれが、距離を感じる」

「そんなつもりは」

「なかった? 本当に?」


 念押しのような言葉をいいつつも優菜は返事をもとめているわけではなかった。



友人と友達のちがい。辞書とかには意味は同じってなっているけれどもそのニュアンスの微妙な違いがあるとおもうのです。

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