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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
学校編
47/114

関係の終止符 1

 

 土曜日にジーパンといつかのセールで買ったよれよれのティーシャツを着た。


 優菜からの呼び出しだった。


 数日に及ぶ違和感の我慢の限界が来たのだとメールには書いてあった。

 だからとりあえず話したい、2人で会えないかという風に書いてあった文章に、予定が延期になってすっぱりとあいた土曜日を提案した。

 そして、わたしは2人で会うということが少しだけ恐ろしく感じていた。




 前にパフェを食べに来た店で待ち合わせた。

 私達が会うときはいつもここだった。

 先について奥のほうの席の壁側に背を預ける。

 すっと出された冷たいレモンの入った味の水でのどを潤す。

 落ち着いた内装にじっくりと目を凝らす。

 アンティーク調の内装は静かなメロディが流れていた。


 かさりと紙のこすれる音がする。

 思わずそちらに視線を動かした。


 ちょうど対角線がわにいる男が2人。

 会話をしているようではない。


 もう一人の男はよく見えないが背中を向けている男がすごく猫背なのが印象的だ。

 夏なのに薄い色のジャケットを着ていることも違和感を感じる。

 それは担任の後ろ姿に似ていた。

 影が薄いといわれている担任の橋田先生は光のともらない目をしており、そこに希望を感じることはない。


 その男はすっとすぐに立ち上がると店を出てしまう。残った優しそうな細めの男は満足そうに笑っていた。きらりと反射するシルバーのフレームのメガネを見てしまう。

 どこかで見た記憶があるな、と思いだすように考えている。

 あ。と声をあげそうになるのをこらえる。


 残った男のほうに近づこうとするとトン、と机の上に見慣れた手が置かれた。

 桜色にきれいに塗られた爪が見える。


「ごめんね、待った?」


 コロコロと笑みを浮かべつつも少し申し訳なさそうな声をだした優菜に首を振った。優菜に視線を移しながらも細いフレームの男に意識が飛んでしまう。

 その男は立ち上がってお会計に進む。


「あ」

「なに?」


 優菜の声に自身が声を出していたことに気が付く。 


「なんでもない」

「そっか。結構前からいたの?」

「ううん」

「そっか」


 癒し系な見た目の店員さんが優菜の分の水を持ってきてくれる。私の分のコップに再度水を注いでくれた。

 水滴の跡がついていた。

 注ぎ終わったのを見計らい優菜が季節のパフェと抹茶パフェを頼む。


「しのやんは抹茶だもんね」

「そうだね」

「あきないねぇ」

「もうパフェといえば抹茶みたいになっててね」

「そっか」


 途切れた会話を気にすることのないように優菜は携帯をいじった。


「優菜」

「ん?」

「我慢の限界ってなに?」


 優菜が水を飲んだのを確認しながら言うと優菜は携帯をそっとかばんの中にしまった。




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