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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
学校編
46/114

迷走する関係 4

3話目

 

 彼女に何を言ったのかは定かには思い出せないままでふらりとするような足取りで家に帰ると一人の少女が玄関の前をうろうろとしているのが見える。

 見慣れた紺の制服だ。

 すらりと伸びる手足とその顔の幼さのギャップに少女と女性の間のようにも見えた。


「こんにちは」

「あ……」


 中学校の制服を着ている彼女は声をかけたらなにも言わずに背を向けて走り出した。

 追いかける気もなく家に入ると聞こえるアニメのエンディングが耳にやっぱり残った。






 部屋に閉じこもるとブーブーブーとなる携帯のバイブ音が少しわずらわしくて眉間にしわがよる。

 真くんと表示された名前にとる気分になれずそのままカバンのそこに戻す。

 人間関係なんてものは前も私はうまくはできていなかったのだと思う。

 何から手を付けたらいいのかが分からない。

 考えないといけないことばかりが増えていく。

 問題解決能力はもともとそんなに高くはないのだ。


 とじたままの父親のパソコンが目についた。その表面を一撫ですると当面の思考のことを考える。

 まずは鈴ちゃんの婚約者のことだ。知っている男だと思った。しかし、この年代のあの男とは面識がなかったはずだ。もしかしたら私の知っている男とは違うのかもしれない。私の知っているあの男とは雰囲気が違った。それがわざとそうしているのか、それとも時間の経過によるものなのかはわからない。にひるに笑う細い目が脳裏に浮かぶ。


 次に、父親のことだ。

 どうやら生きているのだということだけははっきりした。この間の真くんからの情報がなければそれさえわからないことだった。

 いったい何をしているのかなぜ帰ってこないのか、それがわからない。

 母はよく私と父を似ていると称していた。

 ならば、父は、何か目的があるのだと。そう思いたかった。

 そうでないのなら、家族を置き去りにする意味を理解などしたくない。


 学校関係のことだってある。佐奈たちとのどこか気まずい空気や、桐谷や愛のこと。

 桐谷が愛のことを大切にしているのはうそじゃないと思いたい。でもきっと笑っていたのも桐谷なのだろう。時間によって変化したのか。それとも、桐谷のもくろみなのか。だとしたら何のために?

 付き合いがあるからこそ、そのいびつさを自然なものとして受け入れることができる。いずれにせよ。このままのいびつなままだと誰かが傷つく。それだけははっきりとしていた。


 どれもこれも簡単にはどうにかなってくれそうにない。

 再び口から零れ落ちた溜息は換気の行き届いていない部屋に融けた。

 真くんからのメールは、婚約者と会う予定が延期になったと一文だけが書かれていた。








 聞こえてくるアニメの音は世界の不条理に嘆く勇者の声だった。




また登場人物が増えたー。

考察回ですね^^

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