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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
学校編
39/114

羨んでねたむ 1

本日2話目

 

 朝起きてから学校に向かうまでに思考するのは昨晩のパソコンのことだ。

 スマートフォンのメモ帳機能にもメモをした「T@HC」の4文字。昨日の夜から考えてはいるが何の意味があるのかはわからない。

 そもそもあれが真実、何かのてかがりなのかどうかもわからない。

 ただその文字を多く打ったのかもしれない。


 それでも、いくらかわざとらしさの感じるその文字を無視することはできなかった。あのパソコンを開ける必要があると何故か強く思った。そして、そのパソコンを開ける手段を私は持っていない。せめて、あの人がいたら、とそばにいない人を求めては虚しくなって首を振る。






「@かぁ」


 そもそもこの@がおかしいのだ。

 なぜいきなりこれが出てきたのか。





 思わずつぶやいた言葉は後ろからの声の主に拾われていた。


「あとまーくか?」

「は?」


 振り返ると嫌味にならない程度のさわやかさをまとった男、桐谷がそこにいた。

 軽そうに持つ学生鞄は実際に軽いのだろう。


「よ。はよ」

「おはよ、桐谷」

「珍しいじゃん。お前が考え込んでるの」


 にやりと笑うその顔にはからかいのネタができたと喜んでいるように見える。


「なんでもないよ」

「ふぅん。つまんねぇの」


 自然と隣を歩く桐谷と校門を潜る。

 ちらちらと集める視線に不快感を感じながら口を開く。



「最近、よく話に来るね。なんかあった?」

「腐れ縁だからなのかわかんねぇけど、夏目って案外楽だなぁとわかったというか」


 もごもごと言葉を濁すようにいう桐谷ははっきりとは言わない。それが逃げだという人もいるだろうが、弱っているところを見せたがらない桐谷らしいとさえ思った。


「なに、誰かに告白されたんだ?」


 この言い回しは覚えがあり、桐谷がなぜ最近よくくるのかがわかる。

 告白されることの多い桐谷ではあるが何回かに1度、罪悪感がひどくなるときか、その相手が友人の想い人で気まずくなるときがあるらしい。

 その度にこうして楽だなぁといいつつはなしかけにくるのだ。そこにはきっと私たちはそうならないという一種の信頼がある。


「ん、まぁな」


 否定しない桐谷は結構弱っていた。そんな桐谷がらしくなくて調子が狂うとはこのことか、と息をつきながら背中を軽く押す。


「なにすんだよ!」

「仕方ないことじゃない。桐谷が落ち込むことじゃない」

「それはわかってるけど」

「でしょう?」


 そうは言ってもなぁと少し困ったように笑う桐谷に頭をかく。


「調子狂うなぁもう」

「なんでだよ」


 桐谷のどこかすねたような声を聞きながらもくだらない話を続けながら学校に歩いた。






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