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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
学校編
37/114

縺れた信頼 3


 しばらくの沈黙のあと愛がおずおずと口を開いた。


「あのさ、夏目さん……」

「なに?」

「志乃ちゃんってよんでも、いいかな」


 おそらくちゃん付けが珍しく変な顔になったのだろう。

 愛はあ、迷惑だよね、ごめんと落ち込む。


「呼び捨てがいいな。ちゃん付けなれてない」


 そう告げると表情が明るくなる。愛はとても表情に出るタイプか、と悟る。


「うん、うん! 志乃ってよぶね!」


 しばらく志乃と繰り返した愛に返事をしていると、何かに気がついたように口元を抑えた。


「どうしたの?」










「あの、あのね。顔見知りと友達の境界線ってどこだろう?」


 心底困ったようにいう愛に思わず吹き出す。


「さぁ?でも……あれじゃない? わざわざ同じ時間を過ごそうと思い始めたらもうそれは友人じゃない? ほら、今日愛が追いかけてくれたみたいに」

「じゃあじゃあ、私たちって友達かな?」


 その言葉に笑みを浮かべた。


「確認しないと不安なら、友人になろうで、いいと思うよ」


 嬉しそうなその姿に言うと愛は勢いよく頷いてすぅと息を吸う。


「わたしと、友達になってくれますか?」













「うん。なろうか、友人に」

「やったぁ」




 ささやかな声で愛は喜びをあらわにする。



「そんなにうれしい?」

「うん!うれしい!」


 だってね、とニコリニコリと笑いながら彼女はつづけた。


「いろいろあって、クラスに行けなくなったけど。一番、傷ついたのはものを隠されたりとかそういうことじゃないの。いろんなこと言われたのも悲しかったけど、それよりも関係の無い人まで遠巻きにされたことだったの。これから、どうがんばっても、それこそ、クラスがかわっても、環境や周囲が変化しても、ずっと終わらないんじゃないかってずっと遠巻きにされて友人もできないんじゃないかって思ってたの。だから、すごく、うれしい」


 かみしめるようにいう様子をみて少しだけ頭の中で疑問が過ぎる。
















 なぜ、前の私の記憶にこの子がいなかったのだろう。


 クラスが違ったというのもあるだろうけど、2年3年と同じクラスにならなかったのだろうか。少しも合同でなにかやったとこはなかったのだろうか。




 なぜ、私は彼女を、知らないのか。






 思い出せない疑問がぐるぐると頭の中にこびり付いた。








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