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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
学校編
35/114

縺れた信頼 1

本日2話目^^

 


「あのさ」


 放課後になって佐奈たちが部活に行く前に昼に言おうとしたことはなんだったのか聞こうと声をかける。


「何?」


 佐奈よりも先に麻里が反応をした。その目は細められている。なぜ、このような目を向けられているのかわからない。



「昼に言いかけたこと、なんだったかなと思って」

「もういいよ、今更」


 吐き捨てるようにいった佐奈に首をかしげる。麻里はスルリと佐奈の腕に腕を絡めた。


「うちら部活あるから、ね。佐奈行こう?」

「う、うん」

「昨日のあれ見た?」

「あれって? ドラマ、歌番組、どっち?」

「どっちも! 見た?」

「見た見た!」


 麻里の言葉とともに背を向けられる。まるで何もなかったかのように話す会話がわざとらしく聞こえてくる。優菜がごめんね、と小さく言った。首を横に振る。


「ごめんね。すぐに落ち着くと思うんだ」

「いいよ」

「志乃、だいじょうぶ?」

「大丈夫、ありがとう」


 小さな声でかわした会話はそれだけで優菜はじゃ、行かなきゃ、と言うと佐奈と麻里を追いかけた。興味深そうに見られていた視線が残ったわたしにまとわりつく。それから逃げるようにカバンをもって教室を出た。


 佐奈や麻里や優菜との付き合いは高校からだった。前のときは大学の中盤まで親しくしていた気がする。

 きっと今度も大丈夫。きっと仲良くできる。そうは思っていても、この今の擦れ違いが見当違いなものだとはどうしても思えなかったのだ。


「なんでだろうねぇ」


 帰りながらつぶやいた言葉は拾われることはなく宙にとけた。










「なつめ、さん」


 校門を出たところで後ろから追いかけてくる声に足を止めた。ツインテールの髪がゆれる。少し走ったのだろうか、声は掠れていて肩で息をしていた。


「愛、今帰り?」

「はい」


 その顔色は少し青く見える。体調があまりよくないようだ。


「なんで敬語なの?」

「え、あ……」


 そう漏らすと思わず、といったように愛は口元を抑えた。


「なんとなく?」


 口元の手を外し、あいまいに笑った顔に、ふぅんと返す。


「体調、よくなった?」


 右隣に並んで愛のほうに顔を向けると驚いたような顔をする。


「なに?」

「一緒に帰るの?」

「え? いや?」


 ぶんぶんと首をふる愛の髪が頬をかすめる。


「いいのかな。と思って」

「え? だって方向同じだよね?」

「いや、そうじゃなくて」


 歩きながらももごもごという愛の続きの言葉を待つ。

 しゃーと早いスピードで車が抜きさる。赤いきれいな車だった。窓から見えた顔は瀬崎の顔だ。





「あの」


 ハッとして愛に笑みを浮かべる。少し安堵したような表情を浮かべた愛が口を開いた。


「嫌われたかと思ったの」


 その予想外の言葉に首をかしげる。


「なんで?」


 そう聞くと困ったような顔をして愛うーん、と言葉にならない声を出す。その様子を見ながらとくにせかすことはしない。



「だってあたしが、弱いから」


 やっと出てきた言葉は細いものだった。


「ん?弱い?」

「ほら、泣かないから気になったって」


 言ったじゃない……とつづけられた言葉に、納得する。

 泣かないことイコール強いことというわけではないと思いつつ口を開く。


「それはきっかけにすぎないよ」

「え?」


 聞き返す愛はそれが納得いかないようだった。



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