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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
学校編
28/114

心くばる人達 4

本日2話目



「ねぇ。志乃って桐谷くんと仲良かったの?」


 カタンと椅子をひく音と優菜のハリのない声がかぶる。


「え?」

「仲、良かったの?」


仲がいいかと聞かれるとそれをそうだよと言えるほど素直な関係性じゃなく言葉に詰まる。仲が良い悪いだけで判断をするなら良いの部類に入るかもしれないが、かといってわざわざ特別に桐谷と何かをしたいというわけでもない。仲が良いというよりも昔からの知り合いというそれにつきるかと思う。


「昔馴染み、みたいなかんじかな」

「ふぅん。昔馴染み、ね」


 麻里の含みのある言葉に首をかしげる。優菜があわてたように麻里! と声を上げると麻里は肩をすくめた。

 なんとなく、いやな感じをうける。


「そう、中学の同級生だよ」

「それにしては親しげだね」

「そうかな。たぶんずっと同じクラスだったからじゃないかな?」


 そういうと麻里が何かを言う前に遮って優菜が口を開いた。


「ずっと!? すごいね」

「だから昔馴染みなんだって」



 あ、そろそろ先生来るねと優菜が言うのを聞いて麻里たちか席に戻る。佐奈が今朝私が来てから何も言わなかったのが気になってしまった。




 なんにもなかったように学校での時間を4人で過ごした1日ではあったけれども、どこかピリピリとした空気を感じた。

 会話に間があったり、お互いに気を使っている状態で張り付けたようなへたくそな笑顔をたぶん向け合っていたのだと思う。

 何かが掛け違えているような気がした。




「金曜日、か」


 放課後、いつものように部活にいく3人を見送ってから靴を履く。

 下駄箱の中にローファーと「ありがとう アイ」とだけかかれた桃色の付箋を見つける。その文字は少し跳ねるようなそれでいて丁寧な字だった。



 気を使ってくれたのだろうか。

 付箋だけをはがして運動靴を履く。どちらかといえばこちらのほうがいいのだ。

 たまに4人で放課後に遊びに行く時のために入れているようなローファーの活躍機会はとんと少ない。

 同じ格好をすることに前はこだわっていたなと今では笑えてしまう。女子高生ならっていう形にひどくこだわっていたと思う。わざわざ買ってもらって置いているローファーはまさにそれをしめしていた。







1人で家まで帰る途中で声をかけられる。



「お嬢さん」


 この間も聞いた声だな、と思って振り向くと満面の笑みを受けべた瀬崎がいた。こほんと咳払いをしてその笑みを消すといつもの穏やかな笑みを浮かべる。わざとらしいなぁとつぶやくとその声に反応してなおのこと張り付けた笑みで、なんですか? と聞かれる。なんですか? はこちらの発言じゃないかと思いながらも口を開いた。



「お寺の方ですよね」

「そうですね。覚えていてくださってありがとうございます」

「お嬢さんなんて言う人ほかにいないので」

「そうですか」



 にこにこ笑いながら隣を歩きだす瀬崎の両手には野菜の入った紙袋がある。

 自然に右側に並ぶ瀬崎を見る。その高い背が車道との間に入る。まぶしい太陽の光をも少しばかりさえぎってもくれた。



「それで。なんですか?」 

「何、といいますと?」

「わざわざ声をかけた理由です」


 きょとんとした顔をしていた瀬崎にきくとやっぱりそのきょとんとした顔を浮かべたままだった。




「わざわざ見かけたから声をかけるなんてことないでしょう」



 そういうと納得したようにあぁ、と声をあげた。



「愛さんからよくしてもらったと聞いて話してみたくなったんですよ」

「またそれか」




 思わず左手で顔を覆う。なぜ今日はこんなにも愛のことを言われるのだろうか。本人とは本日の会話はしていないというのに。






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