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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
学校編
23/114

無知なる景色 5

昨日は寝てしまって更新できなかったです、すみません。

 



「別に信用しろとか仲良くしろとか言っているわけじゃないし。今の関係はただの同学年の顔見知り。それでも不服?」

「でも……そんなの」


 愛が何かを言いたげでわたしは言葉を止めた。


「そんなのやっぱり、変じゃない。見た目だけで優しそうとかいい子そうとか言ってさ。近寄って来て」

「他にどういう理由があるの。今だけだよ。クラスが一緒とか委員会が一緒とかいう理由がつくの。きっかけや理由なんてそんなの大した問題じゃないのにそれに固執するの?」


 愛はなにも言わない。


「まぁ。どういえば納得するのかはわからないけど。いいんじゃない?人の行動すべてに理由を求めなくても」

「でも、やっぱり」



 かすれた声が聞こえる。つかんでいた腕はふり払われる。足を止めた愛に習い私も足が止まる。



「理由を求めないとやっていけないときもあるのよ」


 その声は勢いをなくしていた。迷子のように揺れる目が印象的だった。


「そ」

「でも……ごめんなさい。夏目さん」



 何度か口後もちながら出てきた謝罪に首をかしげる。なぜ、私は謝罪を言われているのだろう。それがわかったのか愛は言葉を付け足す。





「助けてくれたのに、それに納得しなくて」

「別にいいよ」

「全部、人の好意に裏があるような気がしてしまって」



 そういう愛の顔は晴れない。









「まぁ、裏はあるかな」

「え」



 おびえた表情を見ながら口を開いた。


「私、いい人でありたいの」

「いい人?」

「そう。すくなくとも自分はそう思っていたいの」



 それが公安としての性なのかはわからない。それでもあの人が私に言っていた言葉が何度もよみがえっている。

 『守るべき日本国民』

 そしてそれは私の指針にすらなっている。ならば、愛にしてもクラスの誰かにしてもそれは守るべき日本国民の一人だ。それに納得しなさそうな愛に切り替えるように声のトーンを変える。



「別に善意の押し付けとかじゃないよ。ただ、それでも納得いかないなら、そうだなぁ。なんとなく、声掛けなかったら後悔するような気がして」



 そういうと愛は大きく目を見開いてそしてゆるゆると破顔した。



「ナンパみたい」


 くすくす笑いながらいう言葉に、あぁ、確かに、と納得してしまって左手で顔を抑える。



「別にナンパしたいわけじゃない……」


 絞り出したようにいうと愛は今度は声を上げて笑った。


「わかってるよ。同学年の顔見知りのナツメサン」


 心底楽しそうにその言葉を出した愛は笑っていた。






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