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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
学校編
16/114

甘美なる日常 3


「ありがとう」

「それに! 久しぶりに4人で出かけられるね」

「楽しみだね」


 そんな話をしていると近くに座っていたほかのクラスメイトが先生がそろそろ来るからその話題やめたほうがいいよーと声をかけてくれる。


 買い食いが発覚すると指導になるのだ。

 ありがとうといいつつそのクラスメイトも含めて話をしていると数学担当の福田先生が教室に入ってくる。

 少しだけふくよかな体系にものすごい福耳であることからフク先生の愛称の学年主任だ。


 あぶっなー、フク先生だったね。と口パクで話しかける佐奈にあぶなかったねとこちらも口パクで返す。



「じゃ、眠い時間だと思うけど、今日最後の時間なんで集中して聞くように。今日やるところは結構重要だからなー」


 チャイムとともにそういうと、日直の礼のあいさつを待たずに教科書を開くように指示をする。

 例題について板書をしながら話始めるフク先生の声を聴きながら開いた教科書をぼんやりと眺める。

コツコツと黒板を叩くような音が耳に響く。一応ノートは開いているが手はなかなか動かない。私とは切り離された別の世界にいるみたいだ。



 どっふりとつかるような平和におかしくなりそうだった。



「ちゃんと聞けよー夏目」

「はぁい」



 名指しで言われながらも考えるのは別のことであった。過去に戻ったのが夢じゃないかと何度も考えたけれども寝ても起きても覚めない夢ならば、それは現実でしかないのだとうと思う。ぱらりぱらりとめくっては途中まで書いてあるぱらぱら漫画や落書きにこういうことを確かにしていたなと脱力してしまった。





  


 授業後フク先生はあぁ、と声を上げた。


「夏目、みんなに配布するプリントがあるからとりに来い」

「えー……はい」

「志乃どんまい」


 けらけら笑う佐奈に肩をすくめる。フク先生はその日一番集中できていなかった生徒に雑用をいうことが多々ある。今日はわたしだったのだろう。



「橋田先生にはいっとくねー」


 担任の橋田先生が帰りの連絡いいにくるだろうし、と言いひらひらと手をふる佐奈によろしくと言って教室を出る。

 廊下に出たところでフク先生が歩みを緩めたので隣に並ぶように歩く。しばらくしてからフク先生が声をかけてきた。


「夏目」

「はい」

「お前、今日集中できてなかったな」

「ははは」


 さすが、よく見ていると感心しながらすみません、と告げる。



「相談があればどの先生も聞けるからな」



 眉を少し寄せていうフク先生にいい先生なんだよなぁと前では感じ得なかった感情をもつ。

 前、何も考えずに高校生をしていたころはこういう風に気をつかって一人一人の生徒に心を砕いている先生を見るとうるさい先生だなと思っていたのを思い出す。



「ありがとうございます」


 足をとめてしっかりとお礼を言うとフク先生は珍しいものをみたように目を見開いた。


「本当に何かあったか?」


 そういうフク先生に何もないですよと言いながら職員室までへの道のりをあるいた。



    

 


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