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木菟のないた夜  作者: 慧波 芽実
追及編
113/114

戦友と相棒 1

 

 桐谷が家に来たことに喜んだのは有生だった。

 母は表面上にこやかにしていながらもどこか不思議そうにこそりと口を開く。


「いつからなの?」

「なにが?」

「桐谷くんと付き合ってるんでしょ?」

「付き合ってないけど」


 否定をしても信じてはもらえていないだろう顔を向けられる。


「有生、悪いな。今日は志乃と話があるんだ」

「えー前もだったじゃん」

「悪いな、また今度」


 穏やかに会話をした桐谷に、ジェスチャーで部屋行く? と伝える。桐谷が頷いたのを見て部屋の方へ体をむけた。


「桐谷と話があるから部屋行くね」

「はいはーい」


 意味有りげな笑顔で楽しんで、という母とすこし拗ねている有生にひらりと手を振った。


「お母さんと有生は買い物行くからね!」

「いってらっしゃい」

「聞いてないよ」

「有生の服も買いたいし」


 えー、と言っている有生は口でこそ嫌そうだがその顔は笑顔だった。


「ね、有生はいつからか知ってる?」

「何が?」

「志乃と桐谷くんよぉ。あの子もすみに置けないわね」


 有生と母の声を聞きながら部屋に向かう。




 扉の前には先に行っていた桐谷が壁にもたれかかってた。


「付き合ってるらしいよ」

「なにが?」

「私と桐谷」

「ありえねぇー」


 カラカラと笑う桐谷に部屋入ればと扉をあけつつ招き入れた。

 適度なところに座った桐谷を横目にみては遠慮のない姿に懐かしささえ覚えた。


「で?」

「なにが?」

「うちに来たいって言ったの桐谷でしょ」

「まぁ」

「何?」

「夏目、お前には友人をもてなそうとかそんな気持ちはないのか」

「ないわけじゃないけど、桐谷相手にそれをしても、ねぇ?」


 今更感があって、とつけたすと、それもそうだなと桐谷が笑った。


「愛のこと?」

「まぁ、それもあるけど」

「なに」

「ちゃんと、いつか話そうと思ってたんだ」

「なにを」

「俺たちが、死ぬことになってしまったことを」


 やけに真剣に言う桐谷にごくりと唾液を飲み込んだ。その話をするにはあまりに私に覚悟がなく、乾いた声で急にどうしたのと口にした。おもっていたよりも早口のその言葉に桐谷は、ははっと笑う。


「なに? 焦ってるの?」

「そうかも」


 指摘をされてしまえば簡単なことで思っていたよりも余裕がなかったのかもしれない。


「時間が戻ったって知って。夏目はなにを思った?」

「何をって」

「俺は」


 遮るように声をかぶせた‘桐谷は藤吉を思ったよと口にした。


「未来を変えることや、起こってしまう犯罪や、止めようのないことよりも。藤吉の事を思った」


 多分、それが心残りだったんだ。

 そう言った桐谷が落ち着いた声で夏目は? と聞く。


「わ、私は」


 思い浮かぶのは桐谷のように一つのことじゃない。


「有生のこと? それとも母親? 父親か?」


 桐谷はそう問うと私の答えをまった。


「私は」


 思い返してみると後悔だらけの毎日だった。私は自分のことだけで必死で。家族を顧みなかった。

 大事な人がいた。

 認めて欲しい人がいた。

 幸せになって欲しい人がいた。


「そもそも。なんで死んだかな、私も、桐谷も」

「あの人も、だろ」


 口に出さなかったその言葉を桐谷が代弁するように言語化していく。


「認めちまえよ。お前はあの人が大切だったんだよ」

「それを認めたら何か変わるの? あの人に、和泉さんにとっての私はずっとただの後輩でしかない」

「認めたら、手伝ってやるよ」


 何を、と口にするよりも先に桐谷は笑みを浮かべた。


「あの人が、お前が、俺が、死なないといけなかった原因を潰すのを」

「でも、そんな。あんな何から手をつけたらいいのかわからないような」

「志乃」


 桐谷が名前を呼ぶ。


「どうして時間が、戻ったのかなんてわからない。けど。いいじゃないか。幸せになるふうに変えたって。生きる未来をゆめみたって」


 今日はこれを話にきたんだ。

 桐谷はそういうとすっきりしたように笑った。


「なんで」

「俺は、藤吉が大事だよ。でも、夏目、お前はずっと戦友だと思っている」


 桐谷はそういうとフゥと息をはいた。





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