影を追う 3
秋山の話には脈絡がない。
「よっしゃレアアイテムゲット! 夏目さんはゲームしたりしないっすか?」
ぴこぴこと軽快な音が響く。
「あんまりしないですね」
「ソフトあげるんでやってみてください」
「あんまりしないんですけど」
「特性ソフトっすよ」
「特性?」
「そうっす。売り物じゃないんで」
「非売品ってやつですか?」
そう言うと少しだけ照れたように秋山が笑う。
「というより、作成したっす」
「作ったんですか?」
「まぁ趣味のようなもので」
渡されたCDを手に取りしげしげと眺めてしまう。
「じゃあ遠慮なくもらいますね。ありがとうございます」
「パソコンでできるっすよ」
「やってみますね」
「ついでに万年筆も渡しますね!」
秋山はどういうわけかいろんなものを渡したがっていた。
「使いこなせる気がしないですって」
「これも趣味で修理したりして作ったやつなんで気にしないでください」
そう言われて木製の万年筆を渡される。
「修理?」
「かけなくなったやつを引き取ってるんすよ」
「へぇ」
さて、とアキヤマが切り替えるように言った。
「こんな話をしていてなんですけど、オーナーからの伝言伝えるのが目的だったんすよねぇ」
「伝言、ですか」
「そうっす。伝言っす。オーナーからは、何もするなってだけ、伝えろって。なんのことかわかります?」
さぁ? と肩をすくめる。
「私、オーナーがそもそもわからないんですけど」
「あれ? そうなんすか?」
秋山はそんなことあるわけがないだろうと言わんばかりの表情を浮かべていた。
「さっきもそう言いましたよね?」
「てっきりごまかすためかなぁって」
「何をごまかす必要があるんですか」
「だってほら、オーナー追われてるし」
「追われてる人をオーナーにしていいんですか」
「本当はオーナーは俺にしろって言ってたんすけど。名目上俺が店長だし」
照れたように秋山は言った。
「でも恩がある人なんで、借りを返すまではっていいくるめているんすよ」
「借り、ですか」
「借りっす」
「そうなんですね」
その借りがどんな借りなのかわからないが、秋山は借りを恥じているわけではなくどこか誇らしげに話す。
「ナツメさんって言うんすよ、オーナー」
さらりとなんてことないように秋山が口にした。
偶然すね、おんなじ名字って。
「で、呼び出したって言ってたんで、きっと関係者かなって」
その内容に思わず言葉を失う。
「ナツメ、さん」
「そうっす。その人がここのオーナーっす」




