影を追う 1
通知に気がついてすぐにヤマアキに行こうとして、すぐに出かける準備をする。
「どこか行くの?」
有生が扉越しに声をかけてくれた。眠そうな覇気のない声だ。一瞬有生に伝えようか迷う。
「あ……」
「ねぇちゃん?」
「いや、大丈夫。買い物に行くだけ」
「ふぅん。じゃ寝る」
有生におやすみ、と軽く声をかけて家を出た。
ヤマアキには赤い車が止まっていた。そろりと扉を開けると秋山の苛立った声が聞こえた。
「だーかーらー今日は定休日だっていってるじゃないっすか」
「定休日なんてない店なのに定休日だと? さっきから言ってるだろ。アイツはどこだ」
「知ーりーまーせーん」
秋山の呆れたような声がする。向かい合っている男が秋山にはやく出て行けと手をふられている。
見た覚えのある猫背がどくりと心臓をはねさせる。
思わずもの影に隠れてその姿を伺う。
あれは担任の橋田先生だ。
「また来る」
苛立ちを隠そうとはせずに橋田先生がなげやりに言う。
「もうこないでくださーい」
まるで喧嘩を売るように言う秋山にくってかかることなく橋田先生は舌打ちをするだけで荒々しく赤い車に乗ってその場を去っていく。
そろりと中をうかがうとそれを見越していたようにこちらをみていた秋山と目が合う。にたぁと笑みを浮かべた秋山は招き入れるように手を動かした。
「やぁ、ようこそ」
待ってたっすよ、ナツメさん
秋山はそう言うと私を招き入れた。私はそろりとヤマアキの店内の奥に足を動かした。
随分と更新遅くなりましたが更新再開いたします。おまたせして申し訳ありません。




