夏が来た・・。
私は夏が近づくにつれ、思い出す哀しい想い出がある。
休日の夕方。
食事前、私は二階の窓に腰かけ、缶ビール片手に外の景色を観るのが好きだ。
・・夕暮れ時は淋しそう・・・
そんな言葉を口ずさみながら、缶ビールを口に運ぶ。
遥か前方に、高校時代の友人だったKの家が見える・・・・・。
一緒に新幹線で就職試験を受けに行き、私だけ不採用になり、Kは卒業後一人旅立った。
就職先で恋と夢に破れたKは、欝病にかかりそれから半年後の、真夏の昼下がりに自宅で首を吊った・・・。
私はそんなKの事を思い出し、缶ビールを飲み乾し右手の中で缶を潰す!!
「・・おとうさん、ごはんよ〜。」
小学生の娘の声で私は我に返る。
「K・・・またな・・。」 私は潰れた缶を頭の上に捧げ、窓枠から部屋に入る。
“ お前が一緒だったら、俺は死んでないかも・・・。”
「・・えっ・・?!」
私は振り向きKの家を見た。確かにKの声がしたように思えた。遥か前方のKの家は、私に何かを訴えているかのように、思える。
”なぜお前は一緒に行ってくれなかった・・!? ”
「許してくれ。K・・私は就職試験に落ちたんだ。」
「・・おかあさん、お父さんがまた独り言を言っているよ・・・。」階段を駆け下りながら、娘が心配した声で母親に言っている。
・・そんな夏が、また、やって来た・・・・・。
 
   
 
 
 
 
 




