5歳になってから。
「ヘルツ、お父さんの仕事を手伝ってあげて」
「分かった」
5歳になってからは、父の仕事の手伝いをすることが増えた。
毎朝日の出と共に起き、家族と食事をし、加工した木の枝で歯を磨き、父と共に畑に出る。
畑ではよく分からない作物を育てている。野菜に関しては無知に等しいが、少なくとも生前に見かけたことはない。
この作物は水分を多く含み、食事の主食となっている。
話が、少しずれた。
私は畑に水をやるため、天秤棒に桶をぶら下げ、川に行く。
川は村の外にある。森を突っ切り、山をひとつ越えた先のなだらかな平野に流れている。
簡単に言ったが、この距離はなかなか遠い。一度目は父と共に行ったが、結局帰りはおぶられて帰ることになった。
まぁ、今まで家から出ていなかったし、体力の不足もあったし、ずっと走りっぱなしだったから、当たり前の話ではあると思う。
「次からは、お前一人で行ってもらうからな?」
この父、思ったよりスパルタであった。
だが、走って行かなければ、それなりに疲れはするものの往復できない距離ではなかった。
流石に子どもの身体には生命力が満ち溢れているのか、2~3日で気を纏いながら走って往復できるようになった。
体力をつけつつ、気力の底上げにも使えるというこの仕事、なかなか良いものである。足腰も鍛えられるし、健康的だし、割と退屈しない。
午前中に収穫まで終えると、午後は狩猟の時間となる。
5歳児に狩猟をさせるほどスパルタではないので、狩猟は村の男たちだけで行く。そのうち、私も行くかもしれないが、今はまだその時ではない。
では午後に何をするのかと言うと、教会に行って他の子どもたちと勉強会だ。
読み書きと世界の歴史、国や宗教について学ぶ。
宗教は幾つもあるわけではなく、この世界ではほぼ一つの宗教によって取りまとめられているそうだ。
ゆえに、世界の歴史などにも大きく影響を与えているのは明白だろう。
生前、宗教には注意してきたが、この世界でも宗教に注意する必要があるらしい。逆らってはいけない、という意味で。
魔力のある子どもは、簡単な魔法も教えてもらえる。
明かりの魔法や種火の魔法、水を出す魔法などだ。日常生活に役立てる魔法を教えてもらえるということらしい。
この間、当然のことながら、魔力のない私は暇である。
いじめられるといったことはないが、話しかけられるといったこともない。
瞑想して体内の気を探り、より多く、より繊細に、気を扱えるように集中している私の姿は、言い知れない迫力があって近づけないのだ、とは隣の家のポルク君の言葉だ。
教会での勉強会が終わると、もう夕方だ。
各々自分たちの家に戻り、狩猟で得た獲物の肉と畑の野菜で食事を取り、歯を磨いて就寝する。
ここ最近は、こうした日常を過ごしている。