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転生に特典なんか、あるわけないだろ。

気晴らしに書いていくスタイル。

 そういえば、何か転生特典はないのか?


 と、転生してからしばらく経って(何歳頃かは忘れたが)思ったことがある。

 転生ものでよくある話としては、魔力ブーストだとか魔力操作がずば抜けてるとか、なんかそんな設定があったはずだ、とね。

 結果から言うならば、魔力ブーストや破壊の点が見えるとか死の線が見えるとかの特典はなかった。残念ながら、当然のことだと言える。


 でも、この世界に魔法はあった。

 私が転んで怪我をした時に、母がヒール的な回復魔法を私に使ってくれたことがあったのだ。

 その時の感動は、とても言葉にできない。


 魔法がこの世界にあると知ってからは、私も一人の男として、ロマンを追い求めずにはいられなかった。


 眠たくなる体に鞭打ち、毎日体内に意識を向けた。

 そして、3歳を少し過ぎたばかりの頃、ようやく体内に宿っている魔力の源泉を見つけた。

 その源泉から溢れる魔力を、全身に流れる血液のように意識することから始めた。

 毎日意識し続けているうちに、魔力が少しずつ血液のように全身に巡っていく感覚を掴むことができた。


 そして感覚を掴んで有頂天になっていた4歳の頃、母に連れられて家を出た。

 どこに行くのか聞いても、母は微笑むばかりで何も言わなかった。

 まぁ、悪いところじゃあるまいと思って気にしなかったが、それが後々の人生に大きく関わるとは思ってもみなかった。


 4歳にして、初めて家の外に出たわけだが、外の光景はかなりショッキングなものだった。

 小さな家が十数戸、後は自然と畑ばかりの小さな村が私の生まれ故郷だった。

 澄み渡る青い空を背景に、遠近感が麻痺するような白い大きな山がそびえ立っているのが、実に印象的だったことを覚えている。

 雄大な自然と小さな村の光景に心を打たれながら歩き、やがて郊外の小さな建物に着いた。


 建物は村の家々のように木材ではなく、レンガだかブロックだかの建材を使っていた。

 恐らく、村に常駐する監視的な役割をする建物だろうと思われた。

 物語的なセオリーに従うなら、教会あたりだろうと目星をつける。


「入りますよ」


 母の手を離し、扉が開かれるところを見る。

 中は椅子が二つほど置いてあるだけの実に狭い空間だったが、神聖な雰囲気が漂っていた。

 正面の壁には女神像の肖像が掛けられていて、古くはあるものの色褪せた様子は少しも見られない。

 しっかりとした色使いが……ってのは置いといて、にこにこと微笑んでいるお婆ちゃんシスターとお爺ちゃん神父の方に視線を向けよう。


「いらっしゃい、その子ですかな?」


「ええ、お願いします」


 母と神父が会話を終えると、シスターは袖の下から小さな水晶球を取り出した。

 水晶球は野球ボールくらいの大きさで、濁りもなく透き通っていた。

 神父はシスターに目配せをすると、私に目線を合わせて柔らかく微笑んだ。


「今から君の魔力を測るから、お婆さんのところへ行って、あの球に触れてみてくれるかい?」


 お願いされるまでもない。

 私は神父の目を見て頷き、走るようにして水晶球に触れようとした――が、シスターに止められてしまった。


「あらあら、走ったら危ないわよ。水晶球は逃げないからゆっくり触ってね」


 確かに、私の身体能力はまだまだ低い。

 ここで慌てて水晶球に飛び掛り、落として割ってしまったら困ったことになる。

 年甲斐もなくはしゃいでしまったが、精神は肉体に引っ張られるから仕方のないことだとも言える。

 これからはもう少し落ち着いて行動できるようにしなければならないだろう。


「落ち着いたようね。では、触ってごらん」


 私は魔力を全身に纏えるが、この年齢でこれだけの魔力を纏えるのは異常だということは分かっている。

 表に出している魔力だけで測るのかもしれないが、潜在魔力を測る可能性もある。

 ここはあえて、魔力を纏わず、体内に抑え込むように……けれども抑え込み過ぎないように調整して、触る。


「あら? 何も起きないわね」


 どうやら、抑え過ぎてしまったらしい。

 水晶球から手を離し、少しばかり魔力を活性化させ、もう一度触れる。

 しかし、水晶球に変化はない。


 シスターはそれを見て、悲しそうな顔をした。


「奥さん、誠に残念ですが……」


 えっ? いや、おいおいおいおい、ちょっと待てよ……。


 この展開って、まさか、嘘だろ……?


 しかし神父は、母に言った。




「この子には魔力がありません」

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