序章 「たすけて」
真っ暗な部屋に電子画面特有の青白い光が広がりメールのポップ音が鳴った。
この部屋の主人である愛沢優は16歳の男の子にしては細く華奢な腕を伸ばしスマートフォンを頭上からとると、病的なほど白い指で画面を操作する。その小指には鈍く輝く銀の指輪がはまっていた。受信ボックスには、差出人も題名も空欄になっている一通のメールが未読状態で表示されている。
普段から、業者などの広告メールしか届かない自分のアドレスに差出人、題名が空欄のメールが
届いたことでユウは不審そうに生気の宿っていない眼を細める。
しかし、メールを開いたところでその本文に書かれた内容を見るとユウの目には今まで感じられなかった感情が僅かにまみえた。
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From:
To: 愛沢優様
題名:
受信日時:20**/12/24 04:47:47
本文:
助けて
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ほんの少しの沈黙の後ユウは無意識にその一言をつぶやいていた。
「たすけて?」
そうつぶやいた瞬間、スマートホン画面から光があふれだし部屋全体を包み込んだ。
その光が収まった後には青白く光るスマートホンと静寂だけが残されていた。