プロローグ
簡単とは言い難いミッションだった。
そんなことは初めから分かっていたし、簡単なミッションが存在していること
なんてあるわけが無いということは、短い人生の中で目を逸らしていても分かっ
ていたことだ。
私は第二十七惑星航行間探査船団所属の乗員だった。
遺伝子操作され、体の中にナノマシンという極小とも言えない小ささの機械郡が
漂っている惑星間知的生命体型の人類である。
遺伝子操作もナノマシン投与も過去には色々あったみたいだが、今や外宇宙を
目指す人類にとっては無くてはならないものであり、実際に検体になっている
我々からしてみても、その利便性や生命維持、更には体調維持においても無くて
はならないものである。
人類が母性での重力化の惑星型知的生命体、自然のままの姿で外宇宙へ挑もう
としたら、おそらく10世紀単位で遅れていただろう。
それほどに画期的なシステムだと感じらるし理解はできるが、産まれて自我の
無い時期に施されたものなので、どうしようもないということもある。
一言ものを申すなら、
『すばらしい体にしてくれてThank you Damm』
と伝えたい。
そもそも生命に手を加えられるようになった原因として挙げられるのが高齢化
社会の構成を打開することにあった。
右を向いても左を向いても自分と同じような高齢の人間が目立つようになって
から、種の保存に対して人類は貪欲になった。
もともと労働者問題等に関しては、早い段階で人工知能artificial
intelligence、AI搭載のロボットが代わりを務めていたので問題は起きにく
かった。
しかし、種の保存に関してはクローンに対する問題もあり解決しにくかったのだ。
そうして産まれたのが、人の人による人口の管理制度である。
オリジナルなら問題は無いと産まれたのが人工子宮から誕生した子供、
せっかく産まれた子供が健やかに病気にかかることなく生きられるように
手を加えられるようになった遺伝子操作、また成長段階で病気に罹ったとしても
治療でき、リンクすることにより全ての人間に同じように抗体を準備できるように
するためのナノマシンを投与された。
それからもナノマシンのアップデートは続けられており、アップグレードも何度
もされてきたようだ。
世界単位でブームのようになったこの流れは、人の優劣を得るという生物の根源
を揺らし、各国で競争が始まり、それに伴って国々で個性を帯びてくる。
個性的な人間が悪いわけではないが、国単位で個性をむき出し始めれば、国同士
の協調性は損なわれる。
結果、星という家にシェアしながら住んでいた人類は家から出ることにしたよう
だ。
そうして外宇宙に目を向け始めたのが今から2世紀前になり、人類は他惑星の
侵略をしている。
あの日も何度も繰り返してきた惑星への調査に向けて、ミッションの概要を担当
AIから聞いた後に、いつものようにチームを組んでいる仲間達と揚陸船へ乗り込んだ。
それが冒険の序曲になるとも知らずに……
そうなんだよね、俺たちは調査惑星に落ちちゃったんだ。