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守護の拳  作者: ユタカナ
2/6

プロローグ2

燃えている・・・住み慣れた街が・・・真っ赤に燃えている。


「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」


突然、それは突然だった。住み慣れた街にそれは現れた。


異形だった。


それはかつて悲劇を巻き起こした『敵』、現在は『イーター』と呼ばれているものだった。


「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」


少年にとって今日もいつもと変わらない日常になるはずだった今日。

だが、その今日は『イーター』が出現したことにより悲劇になろうとしていた。


しかし幾つかの偶然が重なり、悲劇にはならなかった。


それは公園で遊んでいた子供の中に『心器しんき』が使える少女がいたこと、未熟とはいえ少女は全力で『イーター』に向かっていった。

倒すことは出来なかったが少女以外の人間が逃げる時間は稼ぐことが出来ていた。

そう、少女以外は・・・。


やがて少女は力尽き、倒れた。このままでは少女は『イーター』に喰われてしまう。


そんな少女を見ている人間が二人いた、一人はさっきまで少女と遊んでいて逃げたはずの友達の男の子、もう一人はたまたま近くを通りかかった一人の青年。

二人は目的は違えど倒れる少女を見ていた。


少年は倒れる少女を見て駆け出した。


青年は今度は駆け出した少年を見始めた。


少年は駆ける、何も考えず、ただ少女を助けたいという想いだけをもって『イーター』の前へと駆ける。


青年は見る、何の力も持たない少年が無謀にも脅威から少女を助けるために駆けるのを。


少年は少女の元へとたどり着き、少女を庇い脅威の前へと立つ。


青年は見る、少年のあまりに無謀な勇気を、そして少年の確かな意思を。

青年は考える、助けるのは良いだが、もう少し面白そうなことは無いかと。


少年は願う、奇跡を少女を救う奇跡を。


だが『イーター』待ってはくれない。『イーター』にとって餌が増えただけの事。

『イーター』が少年に襲い掛かり、そして・・・


『イーター』は真っ二つになった。


「ハァ・・・ハァ・・・なに?」


少年は呆然とした、今まさに自分に襲い掛かろうとしていた存在があっけなく二つになったのを見て混乱していた。


「はぁ、何も起きないまま助けてしまった。おい、なんともないか?」


助けたのは見続けていた青年だった。青年は『心器しんき使い』、『ホルダー』と呼ばれる存在だったのだ。


「だ、大丈夫です」


少年は泣きながらそれでも前を向いて言った。


「よしよし、なら良かった」


青年は少女が戦う前から見ていながら手を出さなかったのに今更出てきてそんなことを言った。


少年の目には青年がまるで正義のヒーローのように見えただろう。そんな少年に青年は悪魔のように囁く。


「少年、力が欲しくないか?」


「えっ?」


「力が欲しくないかと聞いている。俺について来れば力をやろう」


少年は突然の事に驚き、迷いながらも断ろうとした。


「ごめんなさい、僕には・・・」


「本当に要らないのか?再び同じことが起きたとき、少年はまた見ているだけでいるつもりかい?」


少年は俯き、黙る。そんな少年に青年は言葉を続ける。


「少年、力がなければ悲劇から身を守ることも人を守ることもできない。君は人を助けたいとは救いたいとは思わないのかい?」


青年は少年の心に響くように言う。そして・・・


「分かりました、僕に力をください。誰かを救う力を」


「いい返事だ。まぁどんな返事をしても連れて行くつもりだったがな」


「えっ」


「よし少年、自己紹介をしよう。私の名はざんという、これからは師匠と呼びなさい」


「は、はい、僕の名前は久遠くどう 拳児けんじと言います。っそうだ舞ちゃんが・・・」


「なに、その少女は心配ない、心力を使い切って気絶しているだけだ」


「そうなんですか、良かった」


「フフッ良かったね。では行こうか」


「えっ、このまま行くんですか?舞ちゃんやお父さんやお母さんには・・・」


「無論このまま行く、その少女はもうすぐ来るホルダーの正規部隊にでも任せておきなさい。それに君はイーターによって殺されてしまったのだ。そうゆう事にしておく、いいね?」


「・・・僕は死んだことになるんですか?もう両親には会えないのでしょうか?」


「それは君次第だ。未来はどうなるかなんて分からないからな」


「わかりました。これからよろしくお願いします、師匠。」


「よく出来ました、では行こうか」


「はい、師匠」


こうして突然街を襲った事件は悲劇になる前に阻止された。

この事件は公式の発表では一人の少女の尽力によって解決されたことになっている。

しかし少女は守りたかった友達の少年の一人を失った。

そして少年の両親は悲しみを胸に街を去った。

真実を知る者は一組の師弟以外誰も知らない。

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