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再会、いや、災会




いつの時代、どこの国だかは分かりません。




様々な植物で彩られた庭園のある、白くて立派なお城の




一番見晴らしのいい部屋、天蓋付きのベッドの中に、




ゴリラがいました。



***



 ある晴れた日、少年とその従者が、先日決まった婚約の挨拶のため、馬車で、あるお城に向かっておりました。


「最後に会ったのが、九つの時だから、もう七年も会ってないのか。早く会いたいなあ」


 どうやらその少年は、幼いころよく遊んだ姫にもうすぐ会えることに浮かれきっているようでした。

 街の中を通る馬車の中で、少年がそんなことを考えていると、やがて、一行の目の前にお城の入り口が見えてきました。


「おお、ようやく着いたか」


 少年は馬車から降り、「私は、この度姫と正式に婚約した某である」と、兵士たちに伝えました。

 そして、意気揚々とお城の中に入ろうとしましたが、兵士に慌てて止められてしまいました。


「婚約者様、城内へお招きしたいのは山々ですが、まだお出迎えの準備が整っておりませんゆえ、しばしここでお待ちください」

「大丈夫だ、私はかまわない。それより、今すぐにでも姫の顔を見たいのだ」


 いやいや、お入れするわけには。いやいや、入る。と問答を繰り返しておりましたところに、城の奥から王さまとお妃さまが慌ててやってきました。


「ああ、これはこれは。お義父さまお義母さま、ご無沙汰しております。この度は、娘さんとの結婚を認めて下さりありがとうございました」


 少年は二人に丁寧にあいさつをしました。


「よいよい、君の話はいつも父君から聞いていたからね。立派に育ったじゃないか。それに、結婚の話には娘も喜んでおった。しかし、のう……」

「ええ、そうですね」

「姫に何かあったのですか!?」

「う、うむ、まあな。少し体調を崩しておってな。だが心配せずとも良い、じきに体調も良くなるだろうから、また来てはくれないだろうか」

「それは、姫は、ご病気ということでしょうか。ならば、婚約者として見舞いの一つもせず帰るわけには参りません」


 少年は、今すぐにでもお姫様に会いたい気持ちでいっぱいです。


「じゃが、のう……」


 王さまはお妃さまにアイコンタクトで助けを求めました。


「その……。そう!病のせいで少し見た目が変わっちゃって、あの子、そのせいで嫌われたくないから、治るまで会いたくないって」

「私は、姫がどんな姿でも構わない!!!」


 少年は、空気の読めない少年でした。


「私は姫との愛を誓いにここに来ているのです。今さら姫のお姿が多少変わろうとも、私の愛は変りません!!!」


 王さまたちは皆、内心思いました。「多少どころかまるっきり変わっていたらどうするのだろう」、と。

 王さまは尋ねてみることにしました。


「今、『姫の姿が変わろうと愛は変わらぬ』と申したが、姫がどのような姿になっていてもか?」

「たとえ、病のせいで、できものができていようとも、太っていようとも、しわしわになっていようともです」

「本当に、どのような姿であってもだな?」

「どのような姿であってもです」


 あまりの迫力に、さすがの王さまも折れてしまいました。


「よかろう。では、君が会いたがっていると伝えてくる。ここでまたしばらく待っていてくれ」


 そう言って、王さまたちはお城の中にまた入って行きました。

 この時、まだ少年は「なあに、年頃の女の子だから少しのことを気にしすぎているのだろう。かわいいじゃないか」くらいにしか思っていませんでした。



 しばらく待っていると、三十歳くらいのメイドさんが出てきて、部屋の前まで案内してくれました。


「ここが、姫様のお部屋です」


 そう言って、メイドさんは立ち止まりました。


「婚約者様。失礼ながら今一度お尋ねすることをお許しください。本当に、姫がいかなる姿であろうと愛することができるのですね?」

「もちろんだ」

「わかりました。姫様は本当に良いお方です。どうぞ、姫様を傷つけることの無いよう、大切にしてあげてください」

「姫のことを大切に思ってくれているのだな。その言葉、胸に刻もう」


 少年は、さすがにここまで言われたので、「そんなに酷いのか?」と、内心だいぶ不安になってきていました。


「では、覚悟はよろしいですね」


 そう言って、メイドさんはお姫様の部屋のドアを開けました。






 ドアを開けると、天蓋付きのベッドに、ゴリラがいました ――――。






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