第三十九話 一番大事な気持ち
誰かを想う気持ちは、非常に複雑で多く場合は思い込みだ。
ちょっとしたすれ違いで、大好き人を大嫌いになることもある。
そんな独断と偏見に満ちた感情に、どうしても人は振り回されてしまう。
地下室を目指して走っている玲菜の寂しげな後ろ姿。手を伸ばせばすぐに捕まえられるのに、今の俺にはその距離が途方もなく遠く感じた。
そして、地下室に到着する。
地下室は異常なほど魔力に満ちており、部屋が真っ赤に染まって見えた。
部屋の中心にある濃く光る魔方陣のようなものから、魔力が止めどなく吹きだしている。あれが結界の根幹部分なのだろう。
玲菜は指を一度噛み、魔方陣に触れた。
魔力が玲菜の全身を伝っていく。
「どうやら、坂上先生、霊脈の楔を解放したみたいね。今さらだけど……」
玲菜は眉間にシワを寄せて、怒ったような声を出した。
無事に魔闘師たちを追い返せたから良かったが、もしも、玲菜が金髪玲菜になってなかったら、俺たちはやられていた。玲菜が不満がるのも無理はない。
玲菜はぶつぶつ言いながら、溢れ出る魔力を丁寧に閉じ込めていく。
しばらくすると、結界の魔力が正常に戻った。
「ふぅ――これで元通りね」
玲菜が安堵の息を漏らす。その横顔を見て、俺を助けてくれた玲菜の母親の顔を思い出し、罪悪感からつい眼をそらしてしまう。
地下室の中に気まずい沈黙が流れる。
そんな中、玲菜は何か思いついたような表情を見せた。
「これだけ魔力があれば……具現化させられるかもしれないわね」
そんなことを呟くと、玲菜が地面に広がっている魔方陣に手を当てる。
玲菜から白い光が零れてきて、部屋の中を照らす。
じわじわと光が魔方陣に吸い込まれると、人影が浮かび上がった。
「……? 玲菜様?」
その姿は水蒸気にメルが、反射しているような朧気なもの。
だが、メルがそこにいるのがハッキリとわかった。動いているのだ。
その姿を確認した玲菜は魔方陣から手を離す。
「よかった、メル! やっぱりこの状況なら、姿を作り出せるのね!」
「玲菜様……すみません、力になることが出来ずに……」
「ううん、それは私が悪いの。だから、メルが謝らないで!」
「……玲菜様」
二人が互いを思いやるような発言。
なんだか温かい気持ちになるが、俺は興味と戸惑いが湧いてしかたない。
「ちょっと待て! どうしてメルが!?」
メルににこやかな顔を見せていた玲菜が面倒くさそうにため息を吐き、状況を簡潔に話してくれた。
メルの体は魔力を常に必要とし、それが切れて一度完全に崩壊している。
今の状態は、結界の中心にある魔方陣を用いて、体を擬似的に具現化させた状態らしい。
「多少魔法なんかは使えるけど、本領発揮にはほど遠いわよ。おまけにここからも動けないし……」
さっき髪の色が変わったのは、結界に魔力が十分になかったため、玲菜の体を媒体として憑依した。
メルに憑依されると、髪の色が変わり、魔力も別人のようになるようだ。
「もしかして、俺に憑依させたりもできるのか?」
「いえ、私が憑依して力を貸せるのは玲菜様だけです。そして、その範囲もこの上の広間まで程度とお考えください」
俺の体にも憑依できれば、便利だと思ったのだが。
二人の絆は、姿が薄くなっても、変わらないようだ。
「メルの体を元には――」
「ないわね。メルの巨大な魔力を受け入れられる器がないの。私じゃ、作り出せないし……」
俺の質問をバッサリと切り捨て、玲菜が口を挟む。
体を一から作るなんて、すごい魔法使いにしかできないのだろう。
俺に説明を終えると、玲菜はまたメルと話を始めた。
「どう? 私の召喚術も悪くないでしょ?」
「確かに驚きました。……ですが、少し魔方陣に違和感があります」
「なな、そんなことないわよ! きちんとやったはずよ!」
「そうですか……?」
「疑わないでよ!」
こんな状況でも、玲菜は落ち込むどころか、満面の笑みでメルと話している。メルと話ができるということが、とても大事な時間なのだろう。
ふと話が途切れたとき、メルの口調が変わる。
「私はこちらに長くいることはできません……実体がないのですから……」
急なメルの告白に、玲菜は慌てた顔を見せる。
「――っ、い、いつまでなら、いてくれるの?」
「私を具現化するだけで、結界の魔力を膨大に消耗します。せいぜい……数日かと」
言いにくそうにメルは一言ずつ言葉を紡いだ。
玲菜がどんな気持ちになるのかを慮っているのだろう。
辛そうな顔で、玲菜は唇を強く噛み締めた。
「だ、だったら! この戦い、魔闘師たちを追い返すまで! それならいい?」
「…………はい。では、なるべく魔力を使わないように姿を消して温存しておきます。ですが、本当に困ったときは――」
「わかってる。その時は頼りにしてるわ」
玲菜の言葉にメルは、にこやかに目を細める。
そんな顔を見て、玲菜は哀しげに拳を握りしめた。
先日までは、いつでも触れ合える距離にいたのに、今では触ることもできない。
二人を見ていたら、俺は胸が苦しくなり、何も言えなくなった。
みんなが黙り込み、空気が悪くなったと感じたのか、玲菜が慌てて声を出す。
「坂上先生にちょっと文句を言ってくるわ!」
「こんな時間からか?」
突拍子もない玲菜の意見に、思わず口を挟んでしまう。
玲菜はふむと考えた素振りを見せる。
「……何か気になるのよね。だって、最初から返すつもりなら、時間を空けて返す意味がわからないもの」
時刻はすでに深夜の時間。日付だって変わっている。
この時間から学校へ行くなんて、色々と危険だ。
「危ないと思うぞ……?」
「……心配ならついてくる?」
試すような玲菜の言い回し、ついてきて欲しそうだ。
俺との間にあるわだかまりを敏感に感じていて、それを解消するきっかけを探しているのだろう。だけど、一緒にいたら、追求されてしまうかもしれない。
「お、俺は……ついて行きたいけど、ほら、詩子が……」
自分でも卑怯だと思いながら、詩子を理由にした。
玲菜は少し考えて、メルの方を見る。
「応接室にいる白峰さんを、ここからでも守れる?」
「はい、ここの結界が使えますから、この屋敷全体は安全です」
玲菜は満足げにメルの返事に頷き、不安げな顔を俺に向ける。
「だって。……それでも、行かない?」
伺うような玲菜の表情に心が痛む。今までなら、俺がここで断るはずがない。断れば絶対に変だと思われるだろう。
俺のせいでわだかまりが大きくなるのは、避けたいところだ。
しかたなく、俺はついていくと返事をした。
その瞬間、しおれかけだった玲菜の表情が、パッと明るくなる。
「よ、よかった! じゃあ、早く行きましょう!」
玲菜はいそいそと上に上がろうとした。
後ろから不意に聞こえるメルの声。
「くれぐれもお気をつけて……玲菜様」
玲菜は頷き、にっこりと微笑む。
数日前はよく見た光景だが、今では凄く懐かしい。
こんな光景もあと何日かしたら、二度と見れなくなる。
もしかしたら、隠し事なんて贅沢な悩みなのかもしれない。
二人を見ていたら、そんなことが頭をよぎった。
※ ※ ※
思うところがあるからか、ぎくしゃくしながら、俺たちは学校の屋上までやってきた。そこにあったものを見て、言葉をなくす。
ぼろぞうきんのように、全身が激しく痛んだ坂上先生がいたのだ。
だらりと垂れる首と手足。吐き気をこみ上げてくる。
玲菜が急いで駆け寄り、必死に治癒するが、一向に回復する兆しはない。
俺は見ていられずに、玲菜にそっと声をかける。
「……どうしようもないんだろ?」
玲菜は力なく頷き、坂上先生の頬を撫でて呟く。
「文句を言ってやろうと思ったのに……これじゃ出来ないじゃない……」
カタカタと玲菜の唇が震えているのがわかる。
治癒の魔法が効果あるのは、対象が生きている場合。
もう、坂上先生は死んでいた。その現実に思わず目を伏せる。
「誰だ……誰がやったんだ?」
「わからない……魔力の痕跡も消えている。時間が経ちすぎてるわ……」
魔力の痕跡も消えた後では、誰が殺したかなんてわかるはずもない。
もっと早く来ていれば、と玲菜は悔しそうに唇を噛みしめる。
坂上先生は約束を守らなかったんじゃなかった。
守れない出来事に巻きこまれて、殺されてしまったんだ。
叫びだして、暴れ狂いたいほどの怒りが襲ってくるが、俺よりも関係があったはずの玲菜が騒がずにいる。
そんな様子を見せられては、俺だけが怒りを表現するなんてできない。
だから、静かに拳を握る。手から血が出るほど強く。
あまり接点のない人だったが、もう二度と会えない思うと、心に大きな穴が開いたような喪失感が襲ってきた。
※ ※ ※
坂上先生の死体を見てから、なぜか胸がひどく痛い。
玲菜の顔を見ていたときの胸の痛みとよく似ていた。今となったら、恋をしているトキメキなどとは全く違う痛みだとわかる。
でも、それが単純な感情でもないような気がした。
玲菜の母親のことがあるから、玲菜の顔を見て、罪悪感に駆られるのはしかたない。だけど、それだけなのだろうか。
俺は玲菜の顔を見つめた。
「な、なによ……」
急に視線を合わせたので、玲菜は目を丸くして顔を逸らす。
頬を染めて俯いている姿はどことなく色っぽい。同時に襲ってくる胸を締め付けるような痛み。俺は胸をギュッと抑えた。
辛い、切ない、哀しい、どれもこれも近くて遠い感覚。
なんだろう、この気持ちをなんて表現すればいいんだろう。
俺はもやもやとしたまま、玲菜の屋敷に戻ってきていた。
すぐに地下へ行き、玲菜がメルに報告する。
「そんなわけで、坂上先生は死んでいたわ」
報告だけ受けると、メルは軽く別れを告げ、すぐに姿を消した。
先ほどのような心温まるやりとりはなく、少し寂しく思える。
だけど、魔力を膨大に消費すると言っていたから、余計な魔力の消費は抑えたいのだろう。メルが消えた後の煙を、玲菜がもの惜しげに眺めていた。
あと何回、メルに会えるのだろうか。玲菜の悲しむ顔を、少しでも先延ばしにできればいいと心から願う。
吹っ切ったように玲菜がこちらを見る。
「白峰さんが心配ね。上に戻りましょう……」
俺たちは地下室へ抜け、詩子が寝ている応接室へ向かう。
命には別状がないと言われているから、どこか安心していた。
だけど、坂上先生の死を身近に見た後では、そうも言ってられない。
一歩間違えれば、詩子は死んでいたかもしれないのだ。
「生きているだけで十分じゃないのか……?」
俺のつぶやきに気がつき、応接室の扉を開けようとしていた玲菜が振り返る。
「ど、どうしたの? 春馬?」
不安げに揺れる玲菜の瞳。
今すぐにでも抱きしめたと思うほど愛おしいのに、それが罪悪感から来るものに思えてしかたない。
独断と偏見が頭の中を駆け巡り、自分が何を望んでいるのかわからなくなる。
でも、たった一つだけ指針があった。
二度と会えなくなるとしたら、このままでいいのか。そんな簡単な質問だ。
俺は玲菜が死んだ後に、罪悪感から逃れられたって喜ぶのだろうか。
そんなのわかりきっている。頭の中のもやもやなんて一瞬で吹き飛んだ。
「あのな、玲菜……」
「な、なに……?」
気まずそうに、玲菜は髪をしきりにいじっていた。
玲菜を亡くしてしまったら、俺は心に深い傷が残ると思う。
泣いて泣いて、どうしようもなくなる。
そして、もっと近くにいたかったと、一生後悔するはずだ。
この感情が罪悪感からでも愛情からでも、何でもいい。
くらないことで悩んで、玲菜に悲しい思いをさせている方が問題だ。
そもそも、好きかどうかなんて、恋愛経験などろくにない俺に、わかるはずもない。今、自分がどうしたいのかだけがわかれば十分だ。
「玲菜、俺……お前のコトが好きだ」
俺の言葉を聞いて、玲菜はキョトンとした顔を見せた。
何の話だろう、そんな様子だ。不思議そうに手を顎の下に持っていき、考え込むと、次第に顔が赤く染まっていく。そして、ついに爆発する。
「は、はあ!? な、ななな、何を言ってんのよ! はあ!?」
素直な気持ちを言ったつもりだったが、玲菜がめちゃくちゃ動揺している。
そんな態度を取られると、緊張してしまう。
「なにって、素直な気持ちだよ。恥ずかしいから、聞き返さないでくれ!」
玲菜は身振り素振りで慌ててしていたが、大きく深呼吸をして腰に手を当てると、その表情は冷静なものになっていた。
「もう聞き返さないから、正直に話して……急にどうしたの?」
玲菜の顔はまだ赤みを帯びていながらも、俺を覗き込んでくる。
さっきまで様子がおかしかった俺がいきなり言い出したのだ。その理由を尋ねられても当然だろう。
正直に話をして、玲菜がどう思うのか。いや、それよりも自分の両親が俺と詩子を護るために死んだとわかったら、玲菜はどうするだろうか。
恐い。嫌われてしまうことよりも、玲菜が哀しい顔をするのが辛い。
言わないですむなら、その方がいいかもしれない。
――でも、玲菜に何かあったら、もう二度と言えなくなるのだ。
言うしかないだろう。
「実は俺と詩子、五年前にお前の両親に助けられたんだ。多分、それが原因でお前の両親が死んだんだと思う……」
「え? 本当!? それは五年前の――」
驚いた顔の玲菜が、色々と確認してくる。
その結果、俺の考えが間違いじゃなかったことがハッキリとした。
なにを言われるか恐くて、俺は玲菜の顔を盗み見る。
しかし、意外な事に玲菜の顔色の方が悪かった。
まるで懺悔するかのように玲菜が呟く。
「……そう、だったの。まさか春馬たちに迷惑をかけていたなんてね……本当にごめんなさい」
玲菜は申し訳なさそうに頭を下げた。
予想もしなかった展開に、俺は慌てて身を乗り出す。
「ちょっと待て、なんでお前が謝るんだ? 俺たちを庇ってお前の両親が死んだんだ。俺がお前の両親を殺したようなものだぞ?」
「バカね、逆よ。アンタと白峰さんが、お父さんたちの敵に巻きこまれて怪我をした。だから謝るのは私……間違ってないわ」
巻きこまれたと言われれば、そうかもしれない。
俺たちを襲ってきたのは普通の人間じゃなかった。異形の姿をした化け物だ。まるで相澤やメルのような……
「そ、それは……その可能性もあるけど――」
「可能性じゃないわ。そうなのよ。だから、アンタが気にする必要はない」
俺が悪いわけじゃないと、玲菜はバサリと切り捨てる。
だけど、素直に受け入れられなくて、考え込む俺を玲菜が一笑する。
「そんなどうでもいいことで悩まないで。反省するのは私だけで十分だもの……」
「……? どういう意味だ?」
「な、なんでもない! とにかく、私の両親に対して罪悪感なんて持たなくていい。わかった?」
なにかを誤魔化すように、玲菜は大きな声を出した。
思うところがあるのだろう。俺は苦笑を浮かべる。
「わ、わかった。検討する……」
「検討じゃダメ! そうしなさいって言ってるのよ!」
玲菜はいつものように、強気な顔で身を乗り出してきた。
さっきもそうだが、こうなった玲菜は絶対に考えを曲げない。
「わかったよ。そうする。もう二度と、お前の親のことを思い出して悩まない」
「それでよろしい!」
玲菜はホッとしたような顔を見せた。
なんだか今まで悩んでいたのがバカらしくなる。
最初から玲菜にきちんと話していれば良かったんだ。
なんだかホッとして、玲菜に笑みを見せると、急に玲菜の顔に赤みが差す。
玲菜はわざとらしく眼をそらし、モジモジと手を合わせて、それから、チラリと俺を見た。どこか期待したような顔をしている。
「そ、それより……さっきのす、好きってヤツ? あ、あれって……ラ――ブブっ!? ――っ。ら、ライク的な意味かしら?」
玲菜を好きだと思う気持ちはライク的かと問われたら、もちろんそうだ。
でも、ラブ的な意味がないとも言えない。
この感情がなんなのかは、自分でもわからないのだ。
だけど、玲菜のコトを好きだと思う感情は、何よりも強い。
「わからない。だけど、お前のコトが好きだ。大事にしたい思う、これってどっちなんだろうな?」
「な、なによそれ……わ、私に聞かないでよ……」
喜んでいいのか、悲しんでいいのか、わからない微妙な表情を見せる玲菜。
自分でもすごいことを口にしたのはわかっている。
でも、今の気持ちを素直に表現するなら、好きという言葉しかない。
「とにかく好きだ! 玲菜!」
ボッと音が鳴るほど、玲菜の顔が急激に赤くなる。
恥ずかしそうに身をよじり、思い立ったような顔を俺に向けた。
その目はひどく潤んでいて、非常にかわいい。
「は、はる――っ、春馬! わ、私も――」
そこまで言いかけて、玲菜はぴたっと言葉を止めた。
手にかけていた応接室の扉が開いたのだ。
ホラー映画のように、嫌な音を立ててドアが開いていく。
俺たちは応接室に目が釘付けになった。
ドアの隙間からゆっくりと、眠っていたはずの詩子が顔を見せる。
「二人とも……何をやってるんですか――?」
突っ込まれると恥ずかしいが、別におかしな話はしていない。
だが、詩子の目から光彩が消えている。独断と偏見でかなり変な話を想像されているのだろう。これはまずい展開になりそうだ。
詩子の体がゆらっと動き、手を前に伸ばし魔法の詠唱を開始する。
まさか、こんな場所で魔法を使う気なのか。玲菜は慌てて後ろに飛び退いた。
だけど、おかしなコトにその手には、魔力が一切籠もっていない。
両手を前に出したまま、詩子が不思議な顔を見せる。
「あ、あれ……なんで……」
俺と玲菜は一度顔を見合わせ、詩子に視線を戻す。
詩子は今にも泣きそうな声を出し、俺たちを見た。
「ま、魔力が完全に消えている……ど、どうして……?」
確かに詩子から魔力が感じられない。どういうことだ。
もしかして、織辺がさきほど詩子から抜き取った何かが、魔力だったということだろうか。何のためにそんなことを……
それに織辺は最後に俺に向けて言った。『あと一つ』それが魔力だったら、アイツは俺からも魔力を奪おうとしている。
しかし、単純に魔力が狙いだと思えない。たくさんの魔力が欲しいなら、玲菜や魔闘師たちを狙うはずだ。
なのに俺……一体なぜ?
得も言えぬ恐怖が全身を包み込んでいく。