第三十二話 レガリアを持つ男
どんなに苦労して手に入れても、奪われるときは一瞬。
ほんの少しのミスで全てを無くしてしまう。
――俺は全てを無くし、絶望の淵にいた。
目の前には、踵を返し、俺の前から立ち去ろうとする男がいる。
男は四十代後半。みすぼらしい格好をしており、まるで浮浪者だ。
ぼさぼさで長い髪。ボロボロのコートを着て、シャツもズボンもよれよれ。
コートの下に右手を隠し、左手には俺から奪ったものが握られている。
「待て! 神器を返せ!」
男は口角だけ上げ、その場から消えるようにいなくなった。
いきなりの裏切り行為に、俺の全身から汗が噴き出し、体中が怒りに震える。
「マスター、大丈夫ですか?」
俺はソードの声でハッとする。
そうだ、ソードだけは残ってくれたんだ。
「今のって……一体何だったんだ?」
男が手を伸ばすと、その腕が白く妖しく輝き、その光に導かれるようにローブ、ピアス、アミュレットが飛んでいった。
マスター権を俺から、その男に渡ってしまったかのように……。
「それは――その話は後にしましょう。ここにいくつかの魔力がやってきていています。まずは身を隠してください」
おそらく、魔闘師だ。ここでの魔力に反応して様子を見に来たのだろう。
俺は気分最悪な中、夜の街に逃げ込んでいく。
唯一残ってくれたソードを握りしめ。
※ ※ ※
俺は街の中を疾走していた。
街に明かりは普段通りに灯っているのに、人の気配が全くない。人払いの結界が張ってあるのだろう。完全に無人の街だ。
そのおかげで、魔闘師と思われる三つの魔力がこちらを追従してくるのがハッキリと感じ取れる。
向こうの方が早く、このままでは追いつかれてしまう。
ソードの魔力を使わなければ、振り切ることは困難だ。しかし、そんなことをすれば、魔力で居場所を教える形になってしまう。
逃げられないなら、逃げるだけ無駄だ。
いくつかの路地を抜けたところで、俺は振り返り、足を止める。
すぐ後ろに黒いローブを纏った三つの影が降り立った。
リシカルとローザはいない。見たことのない顔の奴ら。
その中で一番年上に見える男が、一歩前に出てきた。
「観念したか? 今すぐに殺されたくなかったら、持っている神器をこちらに全て渡せ」
神器を三つも取られ、玲菜と戸田には未だに会えていない。
おまけにソードだけで、魔闘師三人を相手にしなければならない。
踏んだり蹴ったりとはまさにこのことだろう。
ソードまで取られてしまったのでは、いいところナシだ。
「渡せねえよ。これだけは死んでも守らなきゃ」
俺はソードを強く握りしめ、魔闘師たちに向かって構えた。
魔闘師たちは顔を見合わせ、肩を竦める。
「無駄な抵抗をするのか。バカは死ななきゃわからんようだな」
魔闘師たちがじわりじわりと、距離を詰めてくる。
三対一は厳しいが、前向きに考えるなら、神条は五人での模擬戦と言った。
ここで三人を倒せば、あと二人になるのだ。
勝てば、模擬戦を生き残れる可能性もグッと上がる。
「かかってこい!」
俺が構えると、魔闘師たちも膝を曲げ戦闘体勢に入った。
相手がなにをしてくるかわからない以上、手加減をしている場合じゃない
いつもと違って、魔力だけは十分にあるのだ。
「ソード、最初から全力で頼む」
「はい、マスター、了解しました」
「セカンド発動だ!」
グンと音を立て、俺の筋力が急激に高まっていく。全ての物が時間を止めたかのように緩やかに見える。
俺はそのまま一番手前にいる魔闘師に突っ込み切りつける。それをそいつは後ろに大きく跳び俺との距離を開く。俺はそいつを追った。
だが、そこに残り二人から魔弾が飛んできて、俺は体勢を崩してしまう。
距離を取ったはずの魔闘師が、もう俺の目の前にいた。短刀を振り下ろしてくる。
体勢を崩していた俺は、それでも体をひねって避ける。
まずい、もう完全に体勢がやばい。
俺の双眸には、迫り来る二つの魔弾を映し出される。
ソードも何とか防ごうとするが、両方から同時に来られては防ぎようがない。
――その時、巨大な爆音と共に土煙が舞う。
煙が風に流れて視界がクリアになると、一人の人間が立っていた。
長くて美しい黒髪を払い、呆れた顔を俺に向けている。
こんな時に必ず来てくれる。本当にコイツは……
「れ、玲菜!」
「なんでアンタがこんな場所にいるのか、五時間くらい説教したいところだけど……今はそんな状況じゃなさそうね」
「どんな状況でも五時間説教は勘弁してくれ!」
俺の突っ込みに、玲菜がニコッと微笑む。
無事だった。心配だった。会いたかった。だが、笑顔の玲菜を見て、嬉しいはずなの、心がやけに痛い。うまく笑顔が出てこない。
きっと、神器を奪われてしまった後ろめたさがあるからだろう。
「なによ、その顔、何かあったの?」
「と、戸田は! 戸田は無事なのか? 助けられたのか?」
玲菜からの問いに、誤魔化すように質問をかぶせた。
一瞬、玲菜は眉間にシワを寄せ、大きなため息を溢す。
「……ええ、無事よ。今頃はもう家でしょうね」
「あ、ありがとう! 無事に助けられたんだな!」
さすが玲菜だ、仕事は完璧にこなしてくれたようだ。
しかし、玲菜が俺の言葉を遮るように手を横に振った。
「助けたっていうのは、ずいぶんと語弊があるわ。……もともと、追われてはいなかった。いえ、追われてはいたんだけど、後を付けられていただけよ」
玲菜は苛立った様子で爪を噛む仕草をし、言葉を続ける。
「つまり、戸田は監視されてただけなのよ。何の害もないわ。……完全に嵌められたわ、坂上先生にね」
坂上先生の言葉を思い出してみる。
『街で今、ある男が追われているわ』
戸田が後を付けられていたわけだから、言葉的には間違っていない。
だが、あまりにも意地悪だ。今日ずっと魔闘師に追われていた身としては、どうしても命の危険性を疑ってしまう。
でも、戸田が無事で安心した。それに玲菜も……
「とにかく無事でよかった。何かあったんじゃないかって思って……」
「連絡しようと思ったんだけどね、魔闘師に見つかって、下水路に逃げたら、圏外だったのよ。で、様子を見に出てみればアンタが――って、アンタどうやってここに来たの!? この近辺完全に外界と遮断されているわよね?」
玲菜は一人でしゃべるだけしゃべり、何かに気づいたらしく目を丸くした。
坂上先生に出してもらった扉の話をすると、玲菜は怪訝な顔を見せる。
「つくづく怪しいわね、あの女。そんなことまでしてくれるなんて、なに企んでるのかしら。……で、扉はどこにあるの?」
「……もう消えた」
俺がこの街に降り経つと、扉から発していた眩いばかりの光が急激に衰え、その姿を消したのだ。俺の返事を聞いて、玲菜が落胆した顔を見せる。
その顔を見て、コトの重要さにようやく気がついた。
ここは外界からの進入を遮断しているのと同時に、外への移動も禁止されている。つまり、出られない。
助けに来たのに出られないとか、何しに来たのかさっぱりわからなくなる。
ただ、神器を取られるためにやってきたようなものだ。
言葉が途切れた頃、不躾な声が聞こえてきた。
玲菜の登場で距離を取っていた魔闘師たちが、こちらとの距離を詰めている。
「そろそろ、無駄話はいいかね?」
俺たちの前に魔闘師が三人並んでおり、今にも襲って来そうな様子。
玲菜は三人を一瞥して、俺に視線を向ける。
「春馬、アンタ、神器は全部持ってきたわよね?」
「…………も、もちろん」
「ふふふ、だったらいいわ! 春馬、我が雪城家の神器の力を見せてあげてちょうだい! 四つの神器の力をね!」
ドンっと音が出るほど、玲菜がかっこよくポーズを決めた。
ヒーローものの必殺技前のような格好。恥ずかしくないのだろうか。
しかし、そんなことよりも玲菜は知らないのだ。
……俺が神器を奪われてしまったことを。
「……すまない」
「ちょ、は、春馬? どうしたの、さっさと神器を出しなさいよ!」
「出せないんだ……これしか」
俺はそう言ってソードを掲げた。
玲菜は安堵の混じった息を漏らす。
「なんだ、アンタ。他の三つは置いてきたの? しょうがないわね……」
心が痛む。でも、言わなきゃ。いつまでも誤魔化してられない。
俺は地面に叩きつけるような勢いで、頭を下げた。
「違う! そうじゃない…………う、奪われたんだ……ほんとうにすまない!」
実際にはそれほど無かったかもしれないが、とてつもなく、長い沈黙を抜け、玲菜がようやく反応した。
「……う、奪われ……た?」
「そ、そうだ。それも……ソード以外の全てを……」
「はあっ? 神器を三つも奪われたって、なにやってんのよ!」
玲菜は顔と肩を怒らせて、俺に詰め寄ってくる。
先週一週間かけて集めた神器をあっさりと奪われたのだ。
それも俺が約束を破ったのが原因。玲菜が怒るのも無理はない。
俺は殴られる覚悟をした。そこで、玲菜が足を止める。
「……理由あるんでしょ? 話しなさいよ」
玲菜は腕を組み、少し落ち着いた様子を見せた。
情状酌量の余地は認められたようだ。
奪われてしまった経緯をびくびくしながら、玲菜に説明した。
※ ※ ※
「――動くな」
ドスの利いた凄みのある声が後ろから響く。
背中をチクリと刺す鋭利的で堅い物体。おそらく刃物だろう。
俺はこの街に来て、早々にこんな状況に追い込まれていた。
「お、俺に何の用だ?」
「この近辺には強い結界が張られている。おぬしも無関係ではあるまい? ……知っているコトを話せ」
声の感じからして、割と年齢は上。四十歳以上の男だ。
「い、いや。俺は何も知らない。ここに来たばかりだ」
信じてくれたのか、背中に突きつけられて鋭利物が離れていく。
ホッとして俺は後ろを振り向こうとする。
その瞬間、シュッと金属の流れる音が聞こえた。
「危ないマスタ-!」
そんな声と共に激しい金属音が響く。
風を切る音と共に、後ろにいた人物が遠くに移動した。
ソードが俺を守るように浮いている。
「あの男、マスターの命を狙っています。後は私にお任せください」
俺は頷き、ソードを掴む。全身に力がみなぎっていく。
さっき魔力を補充したことで、ソードに関してはほぼ満タンの魔力になっていると言っていいだろう。
逃げた男は空中に浮かび、俺を見下ろしている。
「どういうことだ? なぜお前がそれを持っている? それは雪城家の神器ではないのか!?」
突然の怒鳴り声、さっきのような穏やかさはない。
明らかな殺気が込められている。さっきはなかった殺気……
「マスター、ふざけている場合ではないかと……」
「だ、だよな! ……俺が今の契約者なんだよ」
「ま、まさか、雪城玲菜から管理権を奪い取ったというのか!?」
男の感情の高ぶりと共に、男の魔力が一気に跳ね上がった。
魔闘師という感じでもないし、なんだコイツ。
セカンドを発動させ、一気に勝負を決めた方がいいのか。
でも、魔闘師でないなら、魔技会の人間、もしくは隠魔師。どちらであっても、手を組めるかもしれない。誤解は解くべきだろう。
「違う、そうじゃない。成り行きで俺がマスターになったんだ。あいつと俺は手を組んでいる。だから、傷つけるとかそんなことはしない」
話を聞き終わっても男は、俺に疑いの眼差しを向けたまま。
しばらく考え、ようやく答えが出たのか、男がゆっくりと口を開く。
「……だったら、今、雪城玲菜に連絡を取ってもらえないか? 仲間なのだろう?」
「――っ、俺も今、あいつを探している。連絡が取れないんだ!」
その返事で男の顔が一気に緩くなった。
信じてもらえたのだろうか。
「わかった」
ため息に似たような男の声。
「信じてくれてくれるのか?」
「いや、お前から無理矢理に神器を奪うことにした」
「え?」
「神器たちよ、我が元に集え。これからは、俺がお前たちのマスターだ」
そう言って男がコートの下に隠していた右手を前に延ばす。
だらりと垂れ下がった衣類から、男の右手には肘から先がないことを想像させた。延ばした右手が突然、真っ白に光を放つ。
その瞬間、ポケットの中に隠し持っていた俺の神器が、次から次に姿を見せ、男の元に飛んでいった。
「まさか四つも持っていたとはな」
男は目の前に姿を見せたのは、ピアス、アミュレット、ローブ。
それらの神器を手に取り、大きな声を上げて笑う。
「待て! 神器を返せ!」
情けなく響いた俺の声。
こうして、三つの神器を奪われてしまった。
※ ※ ※
「……え? それじゃあ、その男がレガリアを持っているってこと?」
途中まで玲菜は眉間にシワを寄せ、怒りを露にしていたが、話が終盤に迫った頃、表情は驚きに変わっていた。
「間違いない。三つの神器があっさりと裏切ったからな」
俺の言葉に玲菜の眼がキラキラと輝き始めた。
存在すらわからなかったレガリアがすぐ近くにあるのだ。
切望し続けた玲菜が喜ぶのは無理はない。
「よくやったわ! 春馬! 神器を失ったことよりも、遙かに価値のある情報じゃない!」
だけど、そんな玲菜の顔を見ても俺の心は痛む。
一緒に素直に喜べないのだ。
どう考えても俺のミスで、奪われてしまったのだから。
「で、でも……奪われなかった方がよかっただろ?」
「それはそうね。……レガリアを持っているからって、あっさり裏切るとか、ずいぶんふざけた話よね」
玲菜の眉間にはシワが寄っていた。
俺はいたたまれなくなり、頭を下げる。
「すまない。本当に悪かった。でも、どうしようもなかったんだ!」
そんな俺の謝罪に玲菜はキョトンとした顔を見せる。
「別にアンタに怒ってるんじゃない。裏切った神器たちによ。だって、戦って勝った人間をマスターにする。それが神器争奪戦のルールだったじゃない?」
「……あ、そういえばそうだな」
「だから、誰がレガリアを持っていようと、勝手に裏切るのは許されないはずなのよ」
「もうあいつらは神器争奪戦なんて忘れているかもな」
「でしょ、本当にふざけた話よね。だから、春馬が責任感じる必要は無いわ。どんなに頑張っても、平気で裏切るような奴らなのよ」
その言葉には玲菜の実体験が込められていたのがわかった。
俺の目の前で全ての神器を無くしたあの日。
あの時に玲菜は、こうなることも覚悟していたに違いない。
だからこそ、何よりもレガリアを欲したのだ。
「ほら、わかったら、いつまでもそんな顔してないで笑いなさい。気持ちが楽になるわよ?」
玲菜は満面の笑みを見せてくれた。俺の中にあった嫌な感情が消えていく。
それどころか、玲菜の顔がキラキラと眩く見えた。
俺は思わず玲菜を抱きしめる。
「ありがとう! 本当にお前と一緒にいられてよかったよ!」
ふわりと玲菜の黒髪が舞い、いつもの甘い匂い。
もう絶対に離したくない。抱きしめた腕に思わず力が入ってしまう。
「あ、あああ、アンタ! ……な、なな、なにを!」
玲菜の体が異常に熱をもち、硬直したように肩をすぼませている。
ただならぬ状況だ。やばい、かなり怒らせたかもしれない。
抱きしめるとか、どこのリア充だよ。
気が楽になった気がして、ネジが一本飛んでいたようだ。
「玲菜!」
俺は名前を呼び、真面目な顔で玲菜の肩を掴んで、顔を見つめる。
「ひ、ひゃい!」
変な声を上げた玲菜の顔は耳まで赤く染まり、目は泳いでいる。
なんだかわからないがチャンスだ。押し切ってしまえ。
「神器よりもレガリアの情報の方が価値は高い。お前の言う通りだ!」
口がはわわとなり、涙目になっていた玲菜が徐々に冷静さを取り戻していく。
嵐の前の静けさのような気がするが、多分、大丈夫だ。
気を紛らわせるように玲菜は大きく息を吐き、俺に視線を向けている。
「紛らわしいことするなら、殺すわよ?」
全く目が笑ってない顔で、玲菜がにこりと微笑んだ。
非常に恐かった。本当に怖かった。
なにが紛らわしいのかはわからないが、とにかく頷き、全てを誤魔化すように魔闘師に目を向ける。
やや呆れた顔でこちらを眺めていた。いきなり目の前で女を抱きしめだしたら、呆れてものが言えなくなるだろう。緊張感が台無しだ。
そんな最中に襲って来ないのは、温情だろう。
だが、いつまでも待たせてられない。
俺がソードを構えようとすると、後ろから玲菜がグイッと袖を引っ張る。
まだ話が終わっていないようだ。
「さっき私に会ったとき、微妙な顔をしたのは、神器を奪われたから、よね?」
あの時、玲菜の笑顔に素直に答えられなかった。
どうやら、玲菜を傷つけてしまったのかもしれない。
俺が頷くと、玲菜はホッとした顔を見せる。
「なんでそんなことを訊いてくるんだ?」
「嬉しかったから……私は嬉しかったのよ。心配してくれたって思ったらね」
玲菜は優しく目を細め、どこまでもにこやかに笑う。
嬉しいという気持ちがスッと入ってきて、こそばゆい。
「……まあ、わかるまでは、何しに来たのかわからなくて、殺意を覚えてしまいそうだったけど……」
「え、と、上げたいの? 下げたいの? どっち?」
思わず苦笑してしまう。
それを玲菜は一瞥して、視線を切る。
「神器を奪われたのは、死ぬほどムカつくし、だから大人しく待ってろって言ったのよ! と文句を言いたくなるのも我慢して……」
「それってほとんど我慢してないよな?」
「でも、心配してくれたのは嬉しかったの。来てくれてありがとう」
「玲菜……」
「神器を奪われたのは、死ぬほどムカつくけどね」
「これって無限ループ!?」
俺たちの話にしびれを切らしたのか、魔闘師が魔弾を放ってきた。
玲菜に向かって飛んでいく魔弾。玲菜は動こうともしない。
強い眼光を俺に向けたまま。
「だから、さっさとこんなところ切り抜けて、その男から取り返しましょう。――そうすれば、全部笑い話よ」
そう言って、玲菜は飛んできた魔弾を右手ではじき飛ばした。
その表情に迷いはない。魔闘師を相手に戦い、勝って、奪い返そうとしている。
だったら、いつまでも俺が後ろを向いていたらダメだ。
「ああ、わかった。俺も全力で手を貸す。絶対に取り返そうぜ!」
まるで十年来の親友のように、拳を突き出し、コツンとぶつける。
俺たちは顔を見つめ合い、照れながら笑いあう。
どんなときでも玲菜がいれば、大丈夫。
絶望の淵からでも這い上がれる。
現在深夜一時、結界発動まであと五時間。