サンタクロースず
2014年5月7日の掌編。
これはわたしが子供の頃のお話しです。
クリスマスの季節。
わたしには三人のサンタクロースがいたのです。
一人目は父方の祖父母。
ほしいと思う玩具などを毎年聞かれ、お願いするときちんと届いたものでした。
母に、「高額なもの」をお願いするように仕向けられていた気がします(今、考えると)。
二人目は両親です。
「わたしが一番ほしいもの」を一緒に出かけて目の前で買ってもらいました。手にするのはクリスマスまでオアズケでしたが。
一番ほしいものは値段と比例しないのがわたしだったらしいです。
三人目はやはり両親(主に母)。
プレゼントは決まって「本」でした。これはクリスマスの朝、目覚めると枕の横に置かれていました。
三人目のサンタ。
この恒例行事がいつ始まったのかは覚えていません。
終わったのは小学校卒業の年でした。
少しせこい(?)若かりし頃の母、もとい両親。
両親とわたし、時々兄含むで十二月初めに町へ出かけるのが恒例でした。
外食も買い物もドライブも、豪華ではないけれど楽しい時間でした。
子供時代は田舎暮らしで、本屋がある町へはバスか車でないと行けなかったのです。
そして、クリスマスに一番ほしいものは親がプレゼントしてくれる。というのがわたしには当たり前のことでした。
そして――
「どうしてサンタさんは本しかくれないんだろう?」
それが、低学年の頃のわたしが抱いていた疑問でもありました。
ある年、子供同士のサンタはいるいない口論で泣かされまして。
その日がわたしの幼い夢が消えた記念日です。
両親も気づいていたのだとは思いますが、その後も卒業までサンタクロースの本プレゼントは続きました。わたしの本好きはそれに影響されたのかなとも思います。
今思えば、両親は親への感謝みたいなものを、夢ではなく現実として持ってほしいと思っていたのでしょう。だけど多少は夢も与えたいと考えていたのだと思いたい。
先日、実家の蔵書を掘り起こしていたら、あらら――の品を見つけました。
知らない人が多いかもしれませんが、故やなせたかし先生の「詩とメルヘン」という季刊紙らしい一式です。母か姉が揃えたのだろうと思うのですが、絵本感覚で昔目にしていたものでした。
懐かしいなーと開いてみたら、イラストを切り取ったらしいペエジがちらほらと。
――思い出しました。
黄緑の草原に一本の濃緑色の樹木の絵が大好きで、ハサミを手にこっそり切リとっていた自分を。切り取った絵の上端に穴をあけ紐を通してペンダントのように首から下げたり、部屋の壁あちこちに、はっつけたりしたのでした。不思議なことに叱られた記憶はないという……。