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パンダのつぶやき

2014年3月10日寄稿。



「うわぁお―、いい天気!」


 このところ、週末は天候に恵まれずにいましたが、今日は朝日の眩しさで目覚めたらしい、ご主人様。

 愛車のキーを手に早速出かけようと、心躍っているご様子です。

 えっ? 先にシャワーですか? あの……せめて……朝ごはんは食べてくださいにゃ……。


 私のご主人様はいつもこうなのです。

 何か思いつくと即行動。行き当たりばったりの毎日。

 きまぐれは、わたしの専売特許と思っていましたが、予想の上を走るご主人様です。

 昨夜は同僚様というお方と、夜更けまで外にいたようで、ガラガラ声と覚束ない足取りで帰って来ました。わたしがガシガシと玄関ドアを引っ掻きお知らせして――ようやく気づいたらしく鍵をかけました。




「じゃ、パンダは留守番ね! 暗くなる前には帰って来るからね」


 ご主人様はわたしのご飯をカラカラと皿に盛り、水を取り替えた容器も隣に並べ置きました。

 で、ですから……わたしよりもご自分のお食事を……。

 そんなわたしの願いは空しく、ご主人様はキーを持ったまま素早く浴室へ消えました。


 やがて……。


 わたしの目などご主人様にとって、恥じらいの対象にもならないのは、知っておりますが、どうして着替えも持たず浴室へ行かれるのですか!

 にゃあ~ご! そんなあられもないお姿で……せめてそのバスタオル、お体に巻いてくださいにゃっ!


 それから裸でキーを探し回るご主人様。きっと洗面台に置いたままなのでしょう。すぐに髪を乾かしお着替えもしていれば、目に入っていたはずなのに。

 バタバタ、バタバタ――ご主人様はただただ、寝室とリビングを走り回っているのです。


 どうにかキーを見つけ、慌しくお化粧も済まされたご主人様。

 冷蔵庫へ走り寄ると、徐に取り出されたパッケージをよく読みもせず、シュルシュルと外袋をはがし……。


 にゃおー! それはレンジ用の容器ではにゃいですか! トースターに放り込んでは――ご主人様、ニャメ、ニャメ、ニャメにゃ!


 にゃっ! どうしてテレビに向かう……っ?

 にゃにゃにゃ、にゃあ~っ! 早く気づいてください。煙モクモクの前に~!


 それはもう――わたしは必死でしたにゃ~~。夢中でトースターが置いてある台のドアを爪で引っ掻きましたにゃ!

 リモコンを手にした直後、ご主人様はクルリとわたしを振り返り、ハッとしたお顔をされて、キッチンへダッシュ!


「あ、あぢっ! ととと――!」


 ほにゃあ……危機一髪ですにゃあ~。

 ご主人様は無事、朝ごはん(レトルトですが!)をすませ玄関へ。お天気テレビは一日中晴れを約束してくれたようで、わたしも安堵しました。

 それにしても、そのお姿でお出かけされるのですか? 

 若草色のデニムパンツに、真っ白なシフォンブラウス――裾はお尻が隠れて勿体にゃい……。まあ、わたしにとっては見慣れた休日のご主人様ですが。


 ご主人様は出がけに再びわたしを振り向くと、その腕に抱き上げ頬ずりをしてくださいました。

 今日は久々にあの方と楽しく語らっておいでなさいませ。わたしはいつものようにお留守をお預かりいたします。

 昨夜のお姿は幻だったのでしょうか?

 そう、輝く溌剌としたその笑顔、今日のお天気に負けていません。最高です!


 え? お相手ですか? 

 それが……わたしもお会いした事があるらしいのですが、全く記憶ににゃいのです。

 にゃぁ~ご~。


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