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悪役令嬢と悪役令息、地獄行きのディストピア  作者: 猫塚ルイ


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第6話

「……ふふ、本当に貴方という人は。心が欠落しているというより、最初から人間として設計されていないみたいね」


私はドレスの袖を汚さないよう細心の注意を払い


指先に伝わる「数時間前まで人間だったもの」の不快な重み、そしてまだ微かに残るぬるい体温を感じながら、彼から手渡された処理物を受け取った。


普通の令嬢であれば、この光景を目にしただけで絶叫して狂い死ぬか、胃の中のものをすべてぶちまけるだろう。


けれど、実父からの歪んだ教育を受けてきた私にとって、それは単なる〝掃除〟にしか見えなかった。


死とは単なる状態の変化であり、肉体とは使い古された器に過ぎない。


彼がなんの理由があって殺すのかは深く聞く気もないけれど、彼にとっては忌々しくて楽しい夜なのかしら。



◆◇◆◇


ガガガガ、と、地響きのような重々しい振動が地下室の壁を震わせる。


ミキサーの超硬質の刃が、抵抗なく骨を砕き、繊維質な肉をすり潰していく。


名前、地位、過去、そして傲慢なプライド。


それらすべてが均一に混ぜ合わされ、かつて「人間」と呼ばれていたものは


ただの無機質な「赤い液体」へと姿を変えていく。


アルベルトは無表情のまま、その液体を排出口から下水道の奥深く、光の届かない闇へと流し込んでいった。


その流れるような動作には、一つの無駄も、一切の感傷も含まれていない。


「恐怖を感じませんか? エカテリーナ」


流れるような動作で作業を続けながら、アルベルトが不意に私を問いかけた。


その視線は手元に固定されたままで、声には好奇心さえ混じっていない。


私は、タイルの上に広がった血を洗い流すために


バケツの冷たい水を汲み上げながら、静かに微笑を返した。


「恐怖? まさか……面白いまであるわ」


「奇遇ですね。私も、貴方がその白い手で、私の『罪』という名の汚れを洗い流してくれるのを眺めていると…〝同じ人間〟だと思えて面白いですよ」


二人の間に流れるのは、甘ったるい愛でも、安っぽい情でもない。


ただ、同じ地獄の底を歩む者同士の、絶対的で純粋な共犯関係。


私たちは言葉を交わす必要すらなく、機械のように正確に


この世から特定の個体が存在したという証拠を消し去っていった。


アルベルトの動きに乱れはない。


彼は私を、守るべき「女」としてではなく、この清掃という目的を完遂するための高度な「機能」として扱っている。


その冷徹さが、今の私にはこの上なく信頼でき、救いのように感じられた。


やがて、窓の隙間から白々とした予感が差し込む。


朝日が昇る直前。

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